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酸いも甘いも噛み分けた現役大学院生からの一言 萩原 康輔 D3 2021年6月

  大学院について、世間で色々言われている節はありますが(主に、大学院を卒業した先生方は「大学院は行った方が良い」と仰いますし、大学院を出ていない先生方は「大学院なんて行っても仕方ない」と仰る傾向があります)、私個人の現時点(博士課程3年目)の感想としては、大学院に進学して良かったと考えています。

  まず、大学院での研究を通じて、精神医学の奥深さに触れることができました。

  精神医学という分野は未解明な点が数多く残されています。「統合失調症がなぜ発症するのか」「抗うつ薬がなぜ効くのか」「精神療法は脳にどう作用しているのか」......など、臨床上で遭遇する多くの疑問に答えるべく、日々、世界中の研究者が奮闘しています。

  もちろん、臨床経験を積めば薬物療法や精神療法については上達するでしょうが、それは例えるなら「車をどう上手に運転するか」という技術的な話であって、その先へ進もうと思ったら「そもそも車がなぜ走るのか」という仕組みの部分の理解は避けて通れません。

  例えば、私が今研究させて頂いているリスク回避傾向の変化をはじめとした意思決定の障害も、うつ病や不安症といった病態を解明する新たな切り口として注目されています。大学院で実際に研究を進めることで、精神医学の深み、その一端に触れることができているように感じます。

  また、大学院生活を通じて、インプットについても大いに磨かれました。

  大学院入学前も臨床論文は必要に応じて読んでいたのですが、実際に自分自身が手を動かして研究を進めたり、論文を書いたりする中で、論文を読む際にも「著者が提示しているストーリーは何なのか」「そのような手順でそのストーリーを証明しようとしているのか」といった視点を意識できるようになりました。更に、私の所属する神経科学チームでは毎週ジャーナルクラブ(研究に関連した最新の論文を紹介する)があり、その際にはチーム内での徹底的な議論を通じて、抄読の作法や着目すべき点について丁寧に指導して頂いています。その結果、研究論文はもちろん、臨床論文を読む際にも、今までより深く・立体的に読み解けるようになり、臨床の幅も広がりました。

  さて、当科では、一般的な臨床系教室と同様、臨床や教育に従事しながら研究を行うことになります。

  この方式のデメリットは、よく言われるように「研究に費やす時間が限られる」ことです。しかし、(臨床が立て込んだ際などやや厳しい時があるのも事実ですが、)実際には大学院生ということで色々と御配慮を頂き、科全体として研究を進めやすい雰囲気を作って頂いています。また、研究内容にもよりますが、実験についてはある程度まとまった時間が必要になるものの、データ解析は自分のペースで進めることができますので、上手く時間をやりくりしながら取り組むことができています。

   逆に、研究と臨床を並行するメリットとして、精神疾患の経過を現場で体感できるのは、研究を行う上でも大きな強みになると感じています。また、生き残るためには成果を出し続けなければならない厳しい研究の世界を知るにつれ、「立場と経済面をある程度保証されながら研究に携わることができる環境は、ある意味で幸せなのかもしれない」......と最近では考えるようになりました。

  ......という訳で、大学院で是非一緒に研究しましょう。お待ちしています!

自己開発コースを終えて

医学科3年 2021年12月

  今回、約半年間の自己開発コースを経て、座学では学べない多くのことを学べたと思います。私は人の心や精神的領域に興味があったので高次脳機能病態学講座を選び研究することになりましたが、当講座での研究を通して研究の基礎的な考え方や、進め方、統計解析のやり方、論文の書き方など研究を行う上で大切なことを学ぶことができ、とても勉強になりました。研究の中では今まで思っていたよりも細かいことに気を配る必要があることや、結果の解釈をどのようにすればよいかなど、実体験してみなければ学べない多くのことがありました。また、担当の先生による講義を受ける機会もあり、それを通して心理学の研究や知識、考え方などを学ぶことができ、一層この分野に興味を持つことができたとともに、有意義な時間を過ごせたと思います。学生の間にこのような貴重な経験ができ、とても喜ばしく思います。本研究を行うにあたって、丁寧にご指導してくださった陳先生、萩原先生をはじめとした高次脳機能病態学講座の皆様に深く感謝申し上げます。

医学科3年 2021年12月

  今回の自己開発コースでは高次脳機能病態学講座に所属させていただきました。初めて本格的な研究を行うにあたり、無知な点が多く戸惑うことも多くありました。しかし、指導教員である陳先生、萩原先生をはじめとした高次脳機能病態学講座の方々にご指導いただき、実りある半年間になったと思います。論文を読んでエビデンスを確認することの重要性といった実験に入る以前の研究者としての考え方や、実験の実施、データの解析、その解釈といった本格的なことまで丁寧なご指導とともに自身の手で行ったおかげで学ぶことが多く、様々なことが身に付きました。また、本研究では行動経済学の分野のことまで学ばなければならず、医学以外のことも広く学ぶ必要があると痛感しました。医学以外の分野も広く興味を持って、得た知識を医学に応用していくことでより良い医療を実現できるのだという学ぶことが出来ました。

  元々、臨床としての精神科に興味はありましたが、研究としての精神科の側面を見て、経験することができ、大変有意義な半年間となりました。この自己開発コースで得た経験を糧に、今後の学生生活、医師としての人生に活かしていきたいと思います。最後に、陳先生、萩原先生をはじめとした高次脳機能病態学講座の先生方、本研究にご協力いただいた被験者の方々に深く感謝申し上げます。ありがとうございました。

医学科3年 2021年12月

  今回、機械学習を行うことで、うつ病やうつ症状について学ぶと同時に、機械学習も学ぶことができました。今回の自己開発コースで機械学習を行ってみる以前は、機械学習というと自動で機械が行ってくれるもの、というイメージがありましたが、実際におこなってみて、前処理の困難さなど、手動で行わなければいけないところも大変である、ということがよくわかりました。また、データの正確性をどのように担保するか、など、ウェブ調査ならではの難しさも学ぶことができました。今回の機械学習ではpythonを用いましたが、わからないところはインターネットを用いるなどして試行錯誤して行うことで、pythonの扱い方が、より一層身についたと思います。最後に、お忙しい中、初歩的な質問にも真摯に答えてくださり、丁寧にご指導くださった陳先生、浅井先生に感謝を申し上げます。

医学科3年 2020年12月

  自己開発コースでは自分で一連の研究を考え行う初めての機会だった。初めて本格的な研究に携わって、実験設定を緻密に考えたり、研究内容をどのようにまとめるか悩んだり、難しい課題に何度も直面した。そのたびに指導教員の方にご指導を受け、研究方法の基礎を学ばせていただいた。研究を進めていくうえで特に私に備わっていない能力だと感じたのは、論理的に物事を考えることであった。例えば根拠のないことを感覚的に述べてしまったり、結果から飛躍した結論を導いてしまったりして、おおよそ僕一人では研究と呼べる研究となりえなかっただろうと思う。指導教員の方々には感謝してやまない。また、将来研究の道に進むにしても、臨床の場で働くにしても論理的に物事を考える力は重要だと考える。研究の場に置いては今回経験したように重要であるし、臨床の場においてもエビデンスが重要と言われている今日であり患者さんの治療にどのように当たっていくかについて感覚的なもので考えていたら治るかどうかもわからない治療を施してしまうことになる。よってこれからの学生生活において、私に足りていない論理的思考力を養うための努力をしていかなければならないように思う。普段から何事においても考察を深めることはもちろんのこと、同級生や先輩後輩、教員などで論理的思考力が備わっている人を見つけ、話を伺うなどして参考にしていきたいと思う。また、緊張してしまいやすく発表の苦手な私にとって今回の自己開発コースは苦手克服の練習としていい機会となった。緊張を克服するには多くの経験が必要だと聞いたことがあるが、私にはまだまだ経験が足りていないと思うので今回の自己開発コースでの機会を大事にして次回に生かしていきたい。

  自己開発コースは今までの大学生活で一番長いカリキュラムだったが、私に足りてない能力について見つめなおし、多くの課題を見つける良い機会となった。今回見つけた課題を今後の学生生活で改善していきたいと思う。

  最後に、6カ月の間終始適切な助言と丁寧な指導をしてくださった陳先生、萩原先生に厚く感謝をし、また私を今回の自己開発コースにおいて受け入れてくださった高次脳機能病態学講座の皆様、実験にご協力いただいた方々にも感謝し、謝辞とさせていただきます。本当にありがとうございました。

医学科3年 2020年12月

  うつ病、うつ症状やストレスについては以前から興味があり、今回それらへのレジリエンスを取り上げて研究することができ、非常に充実した時間を過ごすことができた。レジリエンスと一口に言ってもその候補は多岐にわたるが、収集したデータを用いて解析することで、具体的にどの候補がうつ症状へのレジリエンスとなるのかを調べることができ、統計の知識や手法の重要性を学ぶことができた。結果として、表出抑制がBonferroni補正を行っても有意であるというデータが得られ、自分の手で一つ有意義で大きな発見をするという喜びを体験できた。今回、研究をするにあたってはいくつもの難関をクリアする必要があることを学んだ。論文を検索して先行研究を参照するのにはかなりの時間と労力、経験が必要であり、適切なデータ収集のために実験を行うのも、プロトコルの作成から実験者としての訓練など、様々な細かい点について注意しなければならないことを、現場で学ぶことができた。また、勉強会やレクチャーを通じて、心理学の歴史や実生活での例、記憶や学習についての研究結果、研究方法および調査方法の具体例や注意事項、といった様々な知識を得ることができ、その知識は医療現場、研究領域のみならず実生活でも有用であるため、非常に有意義であった。今後もこの研究生活で得た知識、経験を糧にして、より良い精神科医となるため研鑽を積んでいきたいと強く思った。

医学科3年 2020年12月

  一学期の間は実験の準備をし、11月下旬まで実験、最後の1か月でデータ解析と発表準備をした。戸惑うことが多かったが、積極的に研究に参加できた。自己開発期間が短くなった分かなり駆け足だったため、全体としてはハードだった。データ解析にMATLABを用いたので、それを扱う基本的な技術を身につけることが出来た。内容こそ私が開始前にイメージしていた細胞や薬品を使った一般的な研究とは違ったが、臨床では体験できないような研究に関われて楽しかった。最初からではないが、研究とは何か、1つの研究を成し遂げることの達成感、そして難しさを身にしみて感じた。一番苦労したのが文献検索で、先生の力もよく借りた。先生は研究者気質が強く、発表準備や文献検索では厳しく指導されたが頼もしかった。この経験を進路決定やこれからの生活に生かしていきたい。