5/29(水) 17:00- 


縮小事前分布の最近の展開

入江薫氏 東京大学大学院経済学研究科)


説明変数の多い回帰分析においては、回帰係数の最小二乗推定量が一意に定義できないなどの問題が生じることがある。対策として、説明変数のほとんどが分析に寄与しないであろうという、スパース性と呼ばれる仮定を置くことが多い。ベイズ統計学においては、この仮定を回帰係数の事前分布として特定化し、自然な形で統計的分析に組み込むことが可能であり、縮小推定、縮小事前分布と呼ばれている。本講演では回帰分析における縮小事前分布の研究について概観する。まず、変数選択に対応するSpike-and-slab事前分布について簡単に触れたあと、対照的に縮小事前分布を導入する。特に、馬蹄事前分布を中心に解説を行い、統計的意思決定論や無情報事前分布との関係についても述べる。さらに、馬蹄事前分布以降の研究の進展、特に種々の拡張や、諸分野における応用について紹介する。縮小事前分布を用いたベイズ分析はギブス・サンプラーなどの初等的なMCMC法によって実行可能であるが、その収束に関する計算統計学上の問題についても触れる。