学院長挨拶

閉塞した社会へ、今こそ伝道を 

院長 福間 義朝

(ふくま ぎちょう)

御門徒の娘さんがブラジル人と結婚してブラジルに行き、サンパウロで日本料理店を開きました。彼女はフェイスブックでその店の写真など知らせてくれました。ところでブラジルは犯罪が多くてとても危険な場所でもあるそうです。ある時その店に銃を持った者が押し入り、お金を要求されたそうです。なんとか命だけは無事だったそうですが、私は危ないから日本に帰ってくるようにメールしました。すると彼女はこのように答えました。「日本の方がよほど危ない。確かにブラジルではよく銃撃の音がするけれど、亡くなる者は総計数十人か多くて数百人。しかし日本は毎年三万人の人が自死している。行方不明を入れると何万とも言われる。一見平和に見えるけど、勝ち組、負け組の評価の中で、いじめやストレスによって死に追いやられている人がいっぱいいる。そう思えばブラジルの方がよほどましだ」と。

 今、社会は世間体だけの価値観で閉塞しています。いまこそ僧侶が伝えなくてはいけません。もう一つの世界観があることを。たとえ貧しくとも病であっても独りぼっちであっても大丈夫の世界があることを。閉塞の狭い世界が広く輝く世界に転じられる教えがあることを。

 そんな教えを伝えてゆく僧侶を育てる所。それが中央仏教学院です。

 本学院本科は、2020年から「得度講習会及び得度考査免除教育機関」として、また、2021年度から「教師養成施設」として改変充実し、新制度に対応しています。

 研究科は、仏教・真宗の学びを深めるとともに、あらゆる人々に真実信心と念仏者の生き方を正しく・わかりやすく・ありがたく伝えることのできる教師の育成を目的とする「教学・伝道課程」、宗派僧侶の勤式作法の修得向上のための指導を行う勤式指導所の流れを汲み、寺院などでの法要や仏事において正しい勤式作法を行い、その指導にも携わることのできる僧侶の養成を目的とする「勤式課程」の二課程を用意し、より専門性の高い教師を目指します。