僕は子供の頃は生粋の釣りキチだった。高校生のときに自転車で遠征し、初めて野生のアマゴを釣った時のことは、その川の淵の形状までも鮮明に覚えている。このようなフィールドにおける実体験はかけがえのないものであり、そこから生態学の道へ進んだ人が多いのではないだろうか。近年、研究手法の技術革新によって、研究対象とする生物に直に触れずに研究する機会が多くなったように思う。しかし、生物に直に触れる、その生物が置かれている環境の中に自らの身を投じることの大切さは、再認識する必要があると思う。生態現象は理屈では理解していても、実際にフィールドで体験したときに得られる感覚は特別なものであり、それが研究のアイディアの源となってきた。自然は理解するだけではなく感じるものであり、古典的な手法のフィールド研究はそういった感覚を磨くという点では実は優れている。
生態現象の“生”を記録することはスリリングだ。