僕は子供の頃は生粋の釣りキチだった。高校生のときに自転車で遠征し、初めて野生のアマゴを釣った時のことは、その川の淵の形状までも鮮明に覚えている。このようなフィールドにおける実体験はかけがえのないものであり、そこから生態学の道へ進んだ人が多いのではないだろうか。近年、研究手法の技術革新によって、研究対象とする生物に直に触れずに研究する機会が多くなったように思う。しかし、生物に直に触れる、その生物が置かれている環境の中に自らの身を投じることの大切さは、再認識する必要があると思う。生態現象は理屈では理解していても、実際にフィールドで体験したときに得られる感覚は特別なものであり、それが研究のアイディアの源となってきた。自然は理解するだけではなく感じるものであり、古典的な手法のフィールド研究はそういった感覚を磨くという点では実は優れている。

生態現象の“生”を記録することはスリリングだ。

略歴

1993年3月 奈良学園高等学校卒業(サケ科の魚に惚れて北へ)

1997年3月 北海道大学水産学部卒業

2000年1月 日本学術振興会特別研究員DC2

2002年3月 北海道大学大学院水産科学研究科博士課程修了

2002年4月 日本学術振興会特別研究員PD(東京大学海洋研究所)

2003年10月 独立行政法人水産総合研究センター北海道区水産研究所(現国立研究開発法人水産研究・教育機構水産資源研究所)

2020年11月 北海道大学北方生物圏フィールド科学センター雨龍研究林 准教授

2022年4月 東京大学大気海洋研究所 教授

受賞歴

2008年3月 第12回 日本生態学会宮地賞

2017年3月 Canadian Journal of Fisheries and Aquatic Sciences, Outstanding Reviewer 2016

2017年8月 第19回 生態学琵琶湖賞

2018年10月 Canadian Journal of Fisheries and Aquatic Sciences, Editors’ Choice Paper

2020年3月 第13回 日本生態学会大島賞

2020年3月 令和元年度 日本水産学会水産学進歩賞

主な著書

森田健太郎 (分担執筆, Theme 1-9 サケを食べながら守り続けるー魚の放流は自然保護でしょうか?)

森田健太郎, 黒木真理 (分担執筆, 第3章 凋落する大衆回遊魚―サケとウナギ)

森田健太郎 (分担執筆, Chapter 15: Trout and Char of Japan) 

森田健太郎 (分担執筆, Chapter 6: Ocean Ecology of Masu (Cherry) Salmon)

津田敦, 森田健太郎 (共編著)

森田健太郎, 池田浩明 (共編著)

森田健太郎, 山本祥一郎 (分担執筆, 第7章 ダム構築による河川分断化がもたらすもの)