IoTの仕組みとして根幹を支えているのはデータ収集です。対象物には無線、センサー、あるいはカメラといった機能が含められており、モノの周りで何が起きているか、何が求められているかといった点をデータとして集積します。
そして入手した情報を、インターネットへの接続を通じて伝送し、人間の生活環境を向上させることを実現させています。人感センサーでスイッチが切り替わる照明機器なども、モノ同士を繋ぐIoTの一種です。
話し掛けるだけで家電を操作してくれるスピーカーや、Wi-Fiを使って操縦ができるお掃除ロボット、そして撮影したデータを通信させてパソコンやスマートフォンに送信できる無人カメラなども、IoTを代表する存在と言えます。
現段階ですでに我々はIoTを通して多くの恩恵を受けることができますが、入手した情報の伝送の速度や容量が向上すれば、今まで以上に可能なことが増えるでしょう。昨今では「5G」の台頭により、IoTの技術が更に飛躍すると言われています。
開発事例
生活面においては、パナソニックの「スマート家電」シリーズが我々の日常に溶け込んだ活躍を見せています。スマート家電が実現させるのは利便性の向上だけではなく、安全性の向上や、エコの実現という範囲にまで及びます。
例えばエアコンの「どこでもリモコン」は、スマートフォンを利用して外出先からスイッチの切替や設定温度の変更が行える機能。テレビ等をインターネットに接続させることにより、デジカメで撮影した写真をリアルタイムで送信することも可能です。
冷蔵庫の場合は、スマートフォンと連動させることによって、扉の開閉数などが表示され、無駄が起きていないかどうかを一目で把握できます。Wi-Fiを経由して電気代の確認を行い、改善点を見つけられることもメリットになります。
また、家電の使い方がわからないとき、故障したときなども、どこでトラブルが起きているのかをサポートスタッフが即座に確認でき、IoTはアフターサポートというジャンルでも優れた機能を発揮しています。
「スマートハウス」という言葉も各所で聞くようになりました。これもIoTの一つであり、家の中にある多くの設備や家電製品がインターネットに接続されている状態を指す言葉です。このように、IoTのテクノロジーは我々の生活を豊かにしてくれます。
例えばエアコンを切り忘れたまま外出した場合、これまでは制御するためには一度帰宅するほかありませんでしたが、IoTなら遠隔操作での対応が可能なので、手間をかけることなく気軽に修正できるようになります。
開発事例
医療用のベッドを開発していることで知られるパラマウントベッドでは、IoT技術を取り入れた「スマートベッドシステム」を開発しています。これは、ベッドを利用している人物の様々な情報を集約・統合し、最適なケアを実現させるサービスです。
ベッド内には多くのセンサーが搭載され、睡眠状態や呼吸数、心拍数といった医療において重要な指数を集約し、表示させられます。このデータは病院側でもモニタリングできるため、急変などの不測の事態にも速やかに対応できます。
さらに、電子カルテシステムなどの医療情報とリンクさせることも可能にしており、スタッフ間で患者のデータを、ミスを起こさずに共有することができるため、取り違えなどの重大なミスを未然に防ぐことも可能です。
パラマウントベッドでは、サーバーやベッドサイド端末、体動センサーといった多くの機能をオプションとしても提供しており、予算や規模に見合う商品を提供することを通じて、優れた医療を日本全国に届けています。
医療のシチュエーションにおいては、主にウェアラブルデバイスを通してIoTが貢献しています。これは、血圧や脈拍などのデータを医療機関に送信し、何らかの異常が認められた場合、ただちに処置を受けられるというシステムです。
特に地方では医師不足の状態が続いており、来院する患者の生体データを完璧に取り扱うことが困難になりつつありますから、IoTの普及により、在宅医療の精度を高められ、医療崩壊の危機を防ぐことも期待されています。
開発事例
経済面では、羽田空港に拠点を持つ「羽田鮮魚センター」を運営する羽田市場の事例をご紹介します。水産物に関する流通においては、流通経路が複雑かつ混在し、消費者の手元に届くまで時間を要することから、鮮度の高さを維持することが課題とされてきました。
同時に、輸送中の冷蔵・冷凍コストが必須となることから輸送費が高騰し、漁師への金銭配分が減少するなどの問題も発生しており、消費者のみならず生産者の苦しみが際立つ業界でもあったのです。
そこで羽田市場では、卸売市場を介することなく、生産者と消費者を結び付けるシステムを提供し、双方の問題を解消させています。集荷から決済までの一連の作業を一括で担い、コストを削減するために、IoTのテクノロジーが役立てられています。
現場では産地や漁師の名前、魚の種類などの情報をシステムに入力することでデータを管理し、Webを通じた小売店や個人からの注文には最短当日に対応して、速やかな商品の提供とルートの最短化を実現させました。
生産・物流という分野においては、AIの導入による無人運転技術、ドローンの活用、倉庫業務の効率化といった動きが出ており、経済の発展を実現させています。
農業においてもIoTがもたらす成果は非常に大きく、センサーを活用することにより日射量等を測定し、水や肥料を供給するタイミングと量を調整しています。また、室内温度等の沿革操作により、雨などの突発的な事態にも最適な対応を行えます。
開発事例
交通面のIoT活用では、日立グループによる「交通データ利活用サービス」が注目されています。これはIoTとビッグデータを活用した新しい付加価値サービスで、円滑な移動と安全で安心な交通社会の実現に役立てられている事例です。
まず、分析精度を向上させるための位置補正技術を開発し、現状把握のレベルを一気に押し上げることに成功しました。これにより施策検討や効果測定にもデータを生かしやすくなり、経営効率化や収益向上という面でも貢献しています。
これらの情報収集能力は、交通需要のデータ分析・見える化の推進も果たしています。例えば高速道路においては、車両の混雑や区間の所有時間を可視化し、交通需要予測に役立てているほか、一般道でも同等のデータ提供を通じて、バス運行計画等の見直しにも役立てられています。
このようなサービスを通じて、渋滞への対策や運航計画の最適化を各事業者に促し、その結果として消費者の利便性向上、そして交通事情の傾向分析から事故リスクの回避力向上など、様々な部分に好影響が及ぶことを期待されています。
混んでいる道路の状況や、電車の運行状態が、IoTによりさらに正確に把握できるようになり、利用者にとっての利便性が向上しています。効率の良いルートを選ぶことにより、物流業界に与える好影響も少なくありません。
また、運行業者によっては、リアルタイムの状況を即座にモニタリングする事によって事故を未然に防ぎやすくするなど、安全性を向上させる上でもIoTのテクノロジーは役立っています。