Mirage

1974年作


前作で見せた,ラテン・フレイバーなジャズ・ロック色はそこそこに,Camel流のプログレッシブ・ロック・バンドとしての基本スタイルを確立した初期の重要作。

ハードかつトリッキーなFreefallで幕を開けるが,その後の曲では目まぐるしく静と動の展開が入れ替わるこのため,NimrodelやLady Fantasyといった長尺な曲も,まったく飽きさせない。どの曲も耳に,記憶に残る。

基本はインスト・バンドが,前作より,ずっと分かりやすくなった。そのことを評価するのか,しないのかで,このバンドに対する好き嫌いは分かれるように思う

しかし,リズムセクションはタイト,ギターもキーボードも演奏の切れ味は鋭い。ハードロック・ファンにも推薦できる。ボーカルは,あいかわらずだが,インストを邪魔しないので,これはこれでいいのかも。

■ Side1

01. Freefall

02. Supertwister

03. Nimrodel

    The Procession

         The White Rider


■ Side2

01. Earthrise

02. Lady Fantasy

   〜Encounter  〜Smile For You  〜Lady Fantasy

Andy Ward (drums, cans, bottles & Body Mist) 

Doug Ferguson (bass)

Peter Bardens (organ, Piano, celeste, mini Moog, mellotron & vocals)

Andy Latimer (guitar, flute & vocals)


Producer:David Hitchcock

SIDE1-1

Freefall / フリーフォール  (5:49)

(Peter Bardens)


1曲目は,カッコ良いハード・ロックだが,1stアルバムと比べるとずいぶんとキャッチー

しかし,展開はトリッキーで飽きさせない。

何より,リズム・セクションとギターの息がぴったりで爽快だ。

それにしても,ギターの音色が良い。エフェクターに頼らない弦の音の力感,のびやかさが素敵だ。

Side1-2 

Supertwister / スーパーツイスター (3:16)

(Peter Bardens)


一転して叙情的なフルートの調べで始まるインスト曲。

しかしリズムセクションはあいかわらずタイトで小気味良い。

終盤はスピード・アップし,なぜか最後にビールを注ぐ泡のSEで終わる。

Side1-3

Nimrodel / The Procession / The White Rider

ニムロデル / プロセッション / ホワイト・ライダー (9:15)

(Andrew Latimer)


トールキンの指夜物語をモチーフとした曲。

いかにも70年代プログレといった感じの大曲だが,難解さは微塵もない。親しみやすいメロディーと美しいギターのトーンが心に残る。

中盤からはスピードアップし,盛大なロック・インスト・バトルを展開する。

訥々とした例のボーカルがかえって神話世界の物語性を高めている。

ちなみに,White Rider(白の乗り手)とは,物語中の主要人物ガンダルフが復活した際の呼称。指輪物語は,Andrew Latimerの愛読書のひとつとのこと。

Side2 -1

Earthrise / アースライズ (6:39)

(Peter Bardens,Andrew Latimer)


スピード感あふれる軽快なインスト曲。

ギターとキーボードが対峙し,手数の多いドラムが絡み付く。短いが極めてロック的,Camelらしい良い曲だ。

Side2-2

Lady Fantasy

〜Encounter  〜Smile For You  〜Lady Fantasy

レディー・ファンタジー

〜出合い 〜微笑 〜レディー・ファンタジー (12:44)

(Peter Bardens,Andrew Latimer,Andy Ward,Doug Ferguson)


ボーカル部から始まるが,基本は印象的なリフを繰り返すロック・インスト曲だ。

クリアなギターにエグいオルガンのバトルに,けたたましいドラムが音の隙間をうめつくそうとする典型的なCamelサウンド。

何度かかわる曲調は,違う曲をむりやりつなげただけのような気がしないでもないが,ドラマチックな展開で,その意味でプログレ的か。12分があっというまに過ぎていく。

クサイと評する向きがあろうが気にする必要などない。これがCamel。

ライブの定番,彼等の代表曲だ。