研究内容
研究内容
(1) tRNA 修飾
RNAは、転写後に様々な化学修飾が付加され、機能を獲得します。これまでに、さまざまなRNAから170種類を超える修飾ヌクレオシドが同定されています。tRNAは、タンパク質合成時にmRNAのコドンを読み取り、リボソームにアミノ酸を供給する、いわば、遺伝情報とタンパク質の世界をつなぐ、アダプター分子です。tRNAは、最も多くの化学修飾を受けるRNAの一つであり、1分子あたり平均して約13か所の修飾を含んでいます。これらの化学修飾は、転写や翻訳の制御、tRNA構造の安定化、細胞ストレスへの応答など、多様な役割を担っています。そのため、これらの修飾がどのような仕組みでtRNAに導入されるのか、そしてtRNAの機能にどのように寄与するのかを理解することは、生命現象を理解する上で重要です。私たちはこれらの問いを明らかにするため、生化学、酵素学、ハイスループット解析、RNA質量分析、バイオインフォマティクスを組み合わせた学際的なアプローチで研究を進めています。
研究テーマ:
新規RNA修飾とRNA修飾酵素の探索
次世代シーケンサーを利用したRNA修飾の網羅的検出法の開発
RNA修飾酵素の基質特異性の解明
代表論文:
Matsuda et al, BioRxiv, 2026
Hedetaka et al, J. Mol. Biol., 2025
Matsuda et al, Nucleic Acids Res., 2025
Yamagami et al, RNA, 2025
Fujita et al, J. Biol. Chem., 2024
Multiple manuscripts in preparation
(2) tRNAのクオリティーコントロール
細胞内RNAの「質」は、時々刻々と変化する環境に適応するために厳密に制御されています。例えば、細胞分化の過程では、RNAの発現パターンが大きく変化します。一方で、tRNAレパートリーやtRNA修飾の種類や量が、どのように制御されているのかについては、いまだ十分に明らかになっていません。この問題を解決するために、私たちは代謝標識・次世代シーケンシング・RNA質量分析を組み合わせることで、新たに合成されるtRNAやtRNA修飾を検出する新しい手法を開発しています。これらの技術を用いて、tRNAのクオリティーがどのように制御されているのか、さらに、新たに合成されるtRNAに修飾がどのように導入され、対応するアミノ酸がどのように付加(アミノアシル化)されるのかを明らかにすることを目指しています。
研究テーマ:
新たに合成されるRNAの解析法の開発
新たに導入されるRNA修飾の解析法の開発
代表論文:
Sugio et al, RNA, 2023
Multiple manuscripts in preparation
(3) RNAの構造と機能
RNAは構造的に柔軟な分子であり、複数の異なる立体構造をとることができます。このようなRNA構造の動的な変化は、スプライシングをはじめとするRNA成熟過程の制御に重要な役割を果たしています。RNA構造を化学修飾試薬によって標識し、生体内および試験管内のRNA構造を調べることができます。これらの化学修飾試薬と反応するRNA上の位置を次世代シーケンシングによって網羅的に検出することで、修飾試薬の反応性などの情報に基づいて網羅的にRNAの構造を予測することが可能です。私たちは、生体内におけるtRNAの二次構造を予測する新しい解析手法を開発しました。その結果、一般に強固に折りたたまれ、安定した構造を持つと考えられてきたtRNAであっても、熱ストレスなどの特定の条件下では構造が動的に変化することを見いだしました。現在は、生体内におけるtRNA構造がどのように制御されているのか、さらに、その構造変化がタンパク質合成にどのような影響を与えるのかを明らかにする研究を進めています。
研究テーマ:
RNAの網羅的構造予測法の開発
代表的な論文:
Yanagihara et al, RNA, 2026
Yamagami et al, PNAS, 2022
Multiple manuscripts in preparation