好熱菌について
(文責:藤田)
(文責:藤田)
お、このページに来るとは殊勝なやっちゃな!
自分、学者連中からは「Thermococcus kodakarensis」呼ばれとりますわ!
男前すぎてビビらせてしまったかな…
kodaka「rae」nsis (コダカラ エンシス)じゃなくてkodaka「re」nsis (コダカレンシス)なんや
訳ははなすと長くなる…各自しらべてくれや
サーモコッカスにもいろいろあるんやけども、今この場では自分「kodakarensis」が主役いうわけよ
自慢じゃないけど自分「遺伝子」とか「酵素」とか提供しとるんですわ。PCRとか聞いたことあるやろ?あれ自分の「酵素」ないとまともに使えんのよ!すごかろう!?
まあ研究に引っ張りだこな「人気者」ちゅー訳なんやね
なんで人気なんかしりたいやろ!?
そこまで言うんならしゃーないな!おしえたるわ~
人気の秘訣は…ずばり「耐熱性」にある!
めっちゃ熱いとこにすんどる分、自分遺伝子や酵素もタフなんよな!
そこらの大腸菌なんかとは比べもんにならんで!
私たち大腸菌の生命力にも目を見張るものがありますけどね
大体、酵素の精製やプラスミド形成には定番でしょ!ってくらい「大腸菌」は「大人気」なんですけど
なんと言われようと、今もっとも「熱い」生物はサーモコッカスだろ!鍛え抜かれたこのパワーでしか成し得ないことがたくさんある!
さっきも言うたけどな、PCRとか自分のおかげで使いものになっとんで
かいつまんで言うとな、PCRの原理は3つのステップでなるもので
1.鋳型となるDNAを加熱してほどく
2.プライマーっちゅう短いDNAをくっつける
3.さっきのプライマーを目印に「DNAポリメラーゼ」ちゅう酵素で相補なDNAを作る
この一連の操作を数十回と繰り返し目的の遺伝子を増幅させるものなんで
回数を重ねれば加速度的に増えていくぞ!
勘のいい人らはもうぴんときたかもしれんな…
そうや!「加熱」処理が必要ということは…熱に強い「サーモコッカス」のような
「好熱菌」の「酵素」がなくてはならない!
「普通」の、つまり君ら「人間の生きていける環境」における酵素は熱で使いもんにならなくなるよな?酵素はタンパク質だからな…
PCRも数回やっただけじゃ話にならんからな
もし「好熱菌のDNAポリメラーゼ」を使わずPCRするっていうんやったら
加熱してDNAをほどくステップでDNAポリメラーゼが使いもんにならなくなるからその都度入れ直し、
入れ直し…無限地獄とはこのこと也…
面白いのは実用的なツールとしてだけじゃないぞ
自分らは「古細菌」ちゅー括りの生物な訳やけど、それこそ君ら人間とか犬猫とも大腸菌なんかとも違う
恐ろしく過酷な環境に生きているわけや!恐ろしく過酷…ほら脳裏に浮かぶやろ?
そう!「はるか昔の地球」とかな~!
海底火山とか強酸性の海とか…昔の地球で当たり前だった環境で住んでいる「古細菌」には君らの遠い先祖に通じている部分がきっとあるはず…そうおもうよな?
自分をはじめとした「古細菌」をもっとしればいろいろ見えてくるもんがあるとおもわんか?
古細菌のこともっともっと知りたくなったやろ!?
ええ心がけや!
応用生物化学研究室だけやない…
こういった生物を研究してるとこはたくさんあるからな!
興味を持ってくれたのなら早速「古細菌」とくに「サーモコッカス属」について学びを深めていってぜひ研究の道をこころざしてほしい!
そして生物研のみんなは、毎日子宝島の方角へ向かって「サーモコッカス君ありがとう!」と唱えるように…
以上!
サーモコッカス・コダカレンシス君
学名はThermococcus kodakarensisです。60~100℃で生育でき、至適生育温度が85℃のタフガイです。絶対嫌気性で酸素はちょっと苦手です。鹿児島県小宝島の硫気孔からやってきました。彼は遺伝子工学において重宝されているホットな生物なのです。
「心頭滅却すれば間欠泉もまた涼し」
※当サーモコッカス・コダカレンシスを培養して直接使っているのではなく、サーモコッカス・コダカレンシス由来の遺伝子、酵素を用いた実験を行っております。ご了承くださいませ。