有吉北貝塚 前期の土器
2020.12.30
縄文社会消長分析学習 65
有吉北貝塚の学習をスタートしています。有吉北貝塚学習のメインはあくまでも中期です。現在はその前後の早期、前期、後期の学習をウォーミングアップを兼ねて行っています。この記事では前期土器について学習します。
1 有吉北貝塚の前期土器
有吉北貝塚 前期 土器埋設 土坑 土器分布(3D Qgis2threejs画面)
前期の土器破片総点数は7601点です。胎土に繊維を含まないものが多いことから大半が前期後半期に属すると考えられ、大半が調査区北半に集中しています。出土土器は文様や製作の特徴が多様性をもつことから17分類されて記述されています。
土器から遺跡消長をみると、前期後半諸磯a式期に遺跡形成が再開され、諸磯c式期まで続きます。土器の出土量から単純に見ると、諸磯b式期に最も活動が活発化すると考えられます。土器形式構造は単純ではなく、関東地方に広く分布する諸磯式系の土器群と霞ヶ浦周辺から利根川下流域に特徴的に分布する浮島式系の土器群が共存し、融合する形でみられることから、二つの地域性の折衷域に本遺跡が立地することを示すと考えられます。この状況は東京湾岸域、特に千葉市周辺に特徴的な傾向です。(発掘調査報告書による)
有吉北貝塚出土前期土器の例 1
有吉北貝塚発掘調査報告書から引用
有吉北貝塚出土前期土器の例 2
有吉北貝塚発掘調査報告書から引用
このような文様の土器片は諸磯式系、このような文様は浮島式系という土器文様感覚を自分はまだ持ち合わせていないので残念なことです。発掘調査報告書の17分類に諸磯式系と浮島式系とその融合系などの区分は掲載されていません。
2 参考 大膳野南貝塚における前期後葉竪穴住居址
大膳野南貝塚では前期後葉竪穴住居址を遺物から観察すると、出土土器が諸磯式系主体住居、浮島式系主体住居、2つの土器が共伴する住居に分類できます。また石器種類の割合も狩猟系石器が浮島式系主体住居で多く、諸磯式系住居で少ないなどの違いも見られます。生業の様子が異なる2つの集団(浮島式系集団と諸磯式系集団)が一つの集落に内部的なゾーニングをしつつ協同生活をしていたようです。前期後葉の千葉は諸磯式土器を使う集団と浮島式土器を使う集団がそれぞれ独自生活を維持しつつ一緒の集落で協同生活をしているというとても興味深い事象が存在しています。
大膳野南貝塚 前期後葉 竪穴住居址 主体土器形式別分布
大膳野南貝塚 前期集落 優勢土器形式別竪穴住居軒数
3 参考
諸磯式土器出土遺跡分布図
浮島式土器出土遺跡分布図
諸磯式土器と浮島式土器が出土する遺跡数(千葉県)