294土器破片の分布・高度・出土層準作業図の作成

2021.09.25

同一土器破片分布図作成のための資料を作成しましたので、試しに294土器について分布図を作成し、出土高度を把握し、断面図にプロットして出土層準を確認する作業を行ってみました。

2021.09.23記事「同一土器破片分布図作成のための資料作成」参照

1 294土器

294土器 加曽利貝塚博物館で展示されたときの様子

294土器は加曽利EⅡ式キャリパー形土器で、有吉北貝塚出土最大級土器です。294土器が含まれる第11群土器の発掘調査報告書における説明を次に掲載します。

「第11群(273~338) 加曽利EⅡ式の最終段階にあたる。連弧文系土器が減少してキャリパー形土器が主体となるが、第10群段階にみられた整った渦巻文が崩れだし、円文化の傾向が現れる。文様の施文方法も粗雑化し、器形的にも緩やかなカーブを描く整ったキャリパー形から次第に直線的なものが多くなる。加曽利EⅢ式の特徴である磨消懸垂文の幅広化や口縁部文様帯との癒着傾向が早くも現出し始める段階でもある。第10群段階では皆無に等しかった、波状口縁を呈するものや突起、把手が付される例も存在している。有吉北貝塚の北斜面貝層への投廃棄は本段階が最も盛んであるといえる。」

2 294土器破片の分布・高度・出土層準作業図

294土器破片分布と断面図投影との関係

294土器破片は20個が分布図に掲載されています。それらの破片を直近の断面図に投影して出土層準を略推定します。

作業図上流部

作業図下流部

作業図を作成することにより、294土器破片の分布・高度・断面図出土層準の略推定ができました。出土層準のコメントは説明的な図面を作成してから行います。この記事では分布と高度について感想をメモします。

3 294土器破片分布・高度に関する感想

ア 分布の全体像が納得できない。

294土器がある場所で破壊されて多くの破片になり、それがガリー水流の営力で下流にながされて堆積したと仮定してみます。その仮定で20個破片の平面分布をみるとあまり納得できません。2から13番までは水流の力で運ばれて分布が広がったと考えて問題は生まれません。しかし、1が一つだけ最上流部に孤立して分布します。不自然です。また14~20が2~13とかけ離れて分布します。これも不自然です。

イ 下流部の高度分布が異状

上流部の高度分布

上流部の高度分布は河床勾配に従っているようにみえます。

下流部の高度分布

下流部14~20破片の高度分布は14→17、18→19で逆勾配となります。破片が水流で下流に運ばれたと考えると矛盾であり、異常です。

ウ 294土器破片がばら撒かれた可能性

アとイから、294土器破片分布は単純な水流による拡散ではなく、人為的にばら撒かれた可能性が浮かび上がります。

今後出土層準情報による分析を含めて詳しく検討することにします。

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4 関連情報 294土器に関する2019.03.08記事での分析

2019.03.08記事「加曽利EⅡ式円文楕円形区画文土器の観察」で破片13が被熱していることを分析しています。

被熱は土器破壊後であることが明白ですから、294土器は破壊された後北斜面貝層で、おそらく破片13出土場所で被熱したことになります。破片13に関連して何らかの祭祀が行われたことが想像できます。

被熱し損傷しているピースの存在

つづく