【速報】宝石強盗 被害総額1億円。現場には“ご馳走様”と書かれた一枚のカード。愉快犯か、犯人の目的は一体——。
「大変そう」
「大変だよ。誰かサンのせいでな」
「……楽にしてあげようか?」
「言い方がこえーよ! そういう時は手伝おうかって言うんだよ?」
アンダースターン? と大袈裟に手を広げてベッドに腰掛ける彼女を睨む。彼女の足元に散らばるのは総額1億円の宝石の破片とそれを一欠片も残さんと拾う健気な俺。
「こんなもんか、ほらよ」
ティッシュに乗せた宝石の破片を渡すとなぜか怪訝な顔をされる。なんだ、と眉を寄せれば、彼女は破片を目の高さまで持っていって、細い目をさらに皿のように細めた。
「これ、埃とか混ざってない?」
「今さら何言ってんだよ。埃食ったところで死にゃあしねーよ」
「ふむ、確かに」
納得したのか、ぱちんとわざとらしく右手を鳴らすと、ティッシュの端と端を掴んで破片を中央に寄せ、ポテトチップスの残りカスを食べるようにザラザラと口に放り込んだ。
金平糖でも食べるようにガリガリと噛み砕き、ついでにベッドサイドに置かれていたアレキサンドライトを手にとって林檎でも食べるように大口を開けてかぶりついた。彼女の口元から破片がキラキラ舞い散っていく。
ああ、またこぼしやがって。
「おいしい?」
そう聞くと、少し間が空いて「うん」と返ってくる。
彼女の主食は宝石だ。普通の食事もできるが栄養を摂取できるのは宝石だけ。特別なヒスイ輝石があれば、宝石を食わずとも生きられるようになるらしい。だが、未だ見つけられていない。そもそも都市伝説のようなものだから、本当に効力があるのかも不明だ。それでも希望がある限り、やってみる価値はある。実際、彼女が“こんなこと”になっているのだから、もう理屈じゃない。
「警察もびっくりだよなー。まさか犯行動機が、恋人の生命維持活動だなんて」
ケケケと悪戯っぽく笑ってみるが、彼女から笑い声が追いかけてくることはなかった。
「……ねえ」
「なあに?」
伏し目がちな彼女に気づかないフリをして極めて明るい声を装う。彼女の右手にある食べかけのアレキサンドライトは、室内でも太陽の光でも浴びているかのように光り輝いている。なのに、彼女の瞳はまるで宝石に輝きを奪われてしまったように陰ができてくすんでいる。彼女の瞳は本当はもっと、雨上がりの空と違わぬ澄んだ色をしていたのに。
「無茶、しないでね……」
雨の降りを始めを思わせる小さく静かなつぶやきに、ははっと笑い声をあげた。
なんて顔してんだよ、らしくねーぞ。
「バーカ、俺に任せとけ。絶対におまえを普通に生活できるようにしてやるからな」