それは禁忌だった。
月を背に立つ二つの影。背中には、風にふわふわ揺れる白い羽。一方は、風をものともしないギザギザとした黒い羽。
「悪魔のあなたと天使のわたし。まるでロミオとジュリエットね」
「だけど、俺らは違うだろ?」
悪魔が牙を覗かせればすぐに天使も笑い返した。悪戯を仕掛ける前みたいに白い歯をギラリと光らせる天使に似合わない悪い顔だ。
「恋愛は曖昧なほうが楽しいもの。好きなのかもって、悩みながら遊ぶ夜が最高なのよ」
「なんだよ、好きかもって」
「悪魔に恋する天使なんて聞いたことないもの。スリルを恋と勘違いしてるだけかもしれないじゃない?」
「はあ? 俺は好きだから来てんだけど」
「さすが悪魔、恋にも好戦的ね。でもね、わたしが認めたらこの愛瀬も終わり。互いが好意を認めた時点で終わりなのよ。誰のおかげで会えていると思っているのかしら」
「ああん? 俺が一途に追いかけてやってるから会えてんだろうが」
空気がピリッと揺れる。
天使の手から、ぽうと金色の光が灯る。刹那、光は鋭い弓矢に変わり悪魔の心臓に狙い
を定めた。それと同時に悪魔の手からは、ぼうと黒色の炎が灯る。炎はおどろおどろしく揺らめき黒煙を空に靡かせると剣へと姿を変えていった。臆する様子もなく、瞬く間に剣先は天使の首元を捉えた。
二人は笑う。神に許されない恋だとしたら許されなくていい。恋の形なんて作ってしまえばいいのだから。
「今宵も遊んであげるわね」
「言ってろ。俺の愛で殺してやるよ」