稲成小学校
いじめ防止基本方針
1 はじめに
いじめは、児童の心身の成長や人格の形成に重大な影響を与えるとともに、将来にわたって、いじめを受けた児童を苦しめるばかりか、生命又は身体に重大な危険を生じさせるおそれのある絶対に許されない行為であることを全教職員が認識し、徹底した取り組みを行わなければならない。
そのためには、常に、保護者や地域住民、関係機関等との連携を図りつつ、学校全体で組織的にいじめの防止及び早期発見に努めるとともに、いじめの発生や疑いを認知した場合は、迅速かつ適切に対処し、「再発は絶対に許されない」という強い信念のもとに、徹底した取組を行う必要がある。
そこで、いじめ防止対策推進法(以下「法」という。)第12条の規定および国、和歌山県、田辺市の基本方針に基づき、いじめ防止等の対策を総合的かつ効果的に推進するため「稲成小学校いじめ防止基本方針」(以下「稲成小基本方針」という。)を策定する。
2 いじめの定義
【法第2条】
児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。
個々の行為が「いじめ」に当たるか否かの判断は、法に定められた定義に基づき行うものとする。その際、いじめられた児童の立場に立つことを基本とし、表面的、形式的に判断するのではなく、いじめには様々な態様があることを踏まえ、児童の言動をきめ細かく観察し次の(1)~(6)の項目に留意する。
(1)「一定の人的関係」とは、学校の内外を問わず、同じ学校・学級の児童や、塾・スポーツクラブ等当該児童が関わっている仲間や集団(グループ)など、当該児童と何らかの人的関係を指す。
(2)「物理的な影響」とは、身体的な影響をはじめ、金品をたかられたり、隠されたり、嫌なことをさせられたりすることや、インターネット上での誹謗中傷なども意味する。
(3)外見的に、けんかのように見えることでも、事実の全容をしっかりと見極め、児童が感じる被害性に着目し、いじめかどうかを判断する。
(4)陰口を言われたり、インターネット上で悪口を書かれた児童が、そのことを知らず、心身の苦痛を感じていない場合についても、加害行為を行った児童が判明した場合は、いじめと判断して適切な対応をとる。
(5)いじめの発生場所は、学校の内外を問わない。
(6)いじめの発生時間は、学校管理時間内外を問わない。
3 いじめの理解
いじめはどの子どもにも、どの学校でも起こり得る問題である。いじめに気づくためには、「いじめは、見ようとしないと見えない」との認識に立ち、いじめに見られる集団構造やいじめの態様についてしっかりと理解する。
(1)いじめに見られる集団構造
いじめは、加害・被害という二者関係だけの問題ではない。周りではやし立てたり面白がったりする「観衆」や、見て見ぬ振りをし、暗黙の了解を与えている「傍観者」も、いじめを助長する存在である。
また、一見、仲が良い集団においても、集団内に上下関係があり、上位の者が下位の者に他者へのいじめを強要しているケースもあるなど、周囲の者からは見えにくい構造もある。
さらに、直接の接点がないと思われる集団においても、いじめが発生する可能性があり、インターネット上のソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下、SNSという。)でのやりとりの中でつくられている関係についても留意する。
(2)いじめの態様
いじめは、冷やかしやからかい、悪口等、見た目にはいじめと認知しにくいものがあるほか、暴力を伴わない脅しや強要等がある。たとえ、冷やかしやからかい等、一見、仲間同士の悪ふざけに見えるような行為であっても、何度も繰り返されたり、多くの者から集中的に行われたりすることで、深刻な苦痛を伴うものになり得る。特に、遊びのふりをして軽く叩く、蹴るなどは、周囲の者がいじめと認知しにくい場合もあることから、いじめを受けた児童の心情を踏まえて適切に認知する。
本校では、いじめを認知する際の具体的な態様として、次のような例を参考にしながら判断するものとする。
①暴力を伴うもの
ア 軽くぶつかられたり、遊ぶふりをして叩かれたり、蹴られたりする。
イ けんかに見せかけてひどく叩かれたり、蹴られたりする。
ウ 理由なく無理にけんかをさせられる。
②暴力を伴わないもの
ア 冷やかしやからかい、悪口や脅し文句を言われる。
イ 個人または集団でにらまれる。
ウ 見えるところや聞こえるところで、わざと陰口を言われる。
エ 仲間はずれや集団による無視をされる。
オ 金品を要求されたり万引きを強要されたりする。
カ 金品・持ち物を隠されたり、盗まれたり、壊されたり、捨てられたりする。
キ 嫌なことやはずかしいこと、危険なことをされたり、させられたりする。
ク パソコンや携帯電話等で、誹謗中傷やいじめを助長する書き込みをされる。 等
4 いじめの防止等の学校の取組
(1)いじめの防止等の対策のための組織
① 学校長が任命した構成員からなる、「いじめ問題対策委員会」を設置する。
② 「いじめ問題対策委員会」の構成員は次の通りとする。
校長、教頭、生徒指導主任、人を大切にする教育担当者、養護教諭、当該学級担任
③ 「いじめ問題対策委員会」は次のような役割を担う。
ア いじめの疑いに関する情報や児童の問題行動等に係る情報の収集と記録、共有を行う役割
イ いじめの疑いに係る情報があったとき、緊急に会議を開いて、いじめの情報の迅速な共有、指導や支援の体制・対応方針の決定と保護者との連携といった対応を組織的に実施するための中核としての役割等
(2)未然防止
① 計画的な発生を防止
年間教育計画に「いじめ未然防止の取組」を位置づける。
② 特別の教科道徳授業の充実
教育活動全体を通じて、児童に、かけがえのない自他の生命や人権を尊重する心と態度を醸成するため、道徳教育の充実を図る。
③ 体験活動等の充実
ボランティア活動、異年齢集団での活動等、他者と深く関わる体験を重ね、児童の豊かな情操と道徳心を培い、よりよい人間関係を構築する能力の素地を養う。
④ 学級活動と児童会活動等の活性化
学級会活動や児童会活動で、自分の意見や考えを交流し、児童のコミュニケーション能力や自己有用感等を高めることで、仲間意識を高める。
⑤ 児童の人権意識の向上
児童に人権や人権擁護に関する基本的な知識を確実に身に付けさせ、他者の人権を守ることの大切さを理解させ実践する能力を育成する。
⑥ 魅力ある授業づくり
授業においては、児童に授業規律を徹底させるとともに、常に児童を主体とした授業改善を図り、できる喜びや充実感を与えられるよう、指導方法の工夫・改善に努める。
⑦ 開かれた学校づくりと学社融合の推進
稲成小学校学社融合推進協議会他の協力の下、学校・家庭・地域が相互に連携して子どもたちを見守り信頼関係を築きながら、いじめの未然防止につながる体制づくりを進める。
⑧ インターネット上のいじめの防止
児童にSNS等を含むインターネット上の不適切な書き込み等が重大な人権侵害行為であることをしっかりと指導するとともに、授業だけではなく、外部の専門家等を招き、児童にインターネットの利用のマナーやモラルについて学習させる。
また、保護者に対して、フィルタリングの設定やインターネットの利用に関する家庭でのルールづくり等を周知徹底する。
⑨ 教育相談体制の充実
養護教諭との連携を密にし、連絡ノートの活用や教師からの声かけを通じて相談しやすい環境を整え、日頃から児童や保護者と人間関係を構築しておく。
(3)早期発見・早期対応
① 早期発見
いじめの発見の遅れは、早期解決を困難にさせ、問題の複雑化、深刻化につながることがあるため、日頃から児童の見守りや信頼関係の構築等に努め、児童が示す変化や危険信号を見逃さないよう意識を高く保つとともに、教育相談体制を整え、次のア~キの対応を行う。
ア いじめアンケートを6月、10月、2月に定期的に実施する。
イ いじめの訴えがあったときに実施する。
ウ アンケートは記名式とする。
エ 児童の発達段階に応じ、例を挙げて説明を加え、一問一問一緒に回答する。
オ アンケートは2つ折にして学級担任に直接提出させる。
カ 担任は、いじめアンケートの結果について気になることがあれば、直ちに管理職に報告して指示を受け、正確な事実関係を調査する。
キ 実施したアンケートは、調査記録と共に三年間保存する。
② 早期対応
いじめの疑いや訴えがあった場合、次のア~カに留意して、迅速かつ適切に対応する。
ア 情報共有
・いじめの疑いや訴えがあった場合、直ちに全職員に周知し緊急対応を行う。
イ 事実確認
・いじめの疑いや訴えがあった場合、直ちに全ての関係児童の聞き取り調査を行い事実を明らかにし、
必要に応じて学級全体のアンケートを実施する。
(場合によっては全校アンケートを実施する。)
ウ 個別指導と再発防止
・いじめの発生が確認された場合は、事実確認を行い、調査と指導の経過を双方の保護者に報告する。その後、再発を防止するため、関係児童への定期的な追跡調査を行い、職員は、「再発は絶対に許されない」ということを念頭に置き、全職員での観察体制を維持する。
エ 学級指導から全校指導へ
・個別指導の成果が見られた時点で学級指導を行い、その後全校指導を行う。
オ 関係機関との連携
・深刻ないじめや、明らかな犯罪行為と認められる場合は、直ちに関係機関(教育委員会、児童相談所、青少年センター等)に相談し、適切な支援を求める。
カ インターネット上のいじめへの対応
・インターネット上に不適切な書き込み等を行っているとの連絡を受けた場合、そのサイト等を確認し、デジタルカメラ等で記録したうえで、当該児童及びその保護者に了解をとり、不適切な書き込み等のあるプロバイダに連絡し、削除を要請する。なお、不適切な書き込み等が犯罪行為と認められる場合は、削除要請を依頼する前に警察に通報・相談する。
(4)教職員の資質能力の向上
全ての教職員が「いじめは絶対に許されない」という信念を持ち、「いじめ防止基本方針」をもとに組織的に取り組める資質能力を身につけられるよう年度当初に校内研修を行う。
(5)家庭・地域との連携
共育コミュニティを推進し、地域全体で子どもたちの成長と安全を見守ることができる体制を構築する。そのために、保護者や地域住民の学校行事への参加を促したり、地域行事に児童や教職員が積極的に参加する。
(6)長期的な指導・支援
いじめを受けた児童については、継続的な心のケアに努めるとともに、自己有用感等が回復できるよう支援する。
また、いじめを行った児童については、いじめの背景にある原因やストレス等を取り除くよう支援するとともに、相手を思いやる感情や規範意識が向上できるよう粘り強く指導する。
(7)取組内容の点検・評価
年度ごとに学校基本方針を点検し、必要に応じて見直しを行う。
5 深刻ないじめ及び犯罪行為への対処
(1)深刻ないじめとは、次のように定義する。
①いじめにより児童が相当の期間欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。
②「相当の期間」とは、児童がいじめにより三日間連続して欠席した場合とする。
(2)いじめを原因とする犯罪行為とは
①いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いが
あると認めるとき。
②「生命、心身又は財産に重大な被害」とは、次のア~エの場合とする。
ア 児童が自殺を企図した場合
イ 身体に重大な傷害を負った場合
ウ 金品等に重大な被害を負った場合
エ 精神性の疾患を発症した場合