(1)択伐の遺伝的ガイドライン
東南アジア熱帯林は種多様性が高く生物種の宝庫だと言われていますが、この多様な森林も人間活動の影響から逃れることができず減少の一途をたどっています。熱帯林を持続的に利用するためにどのような保全策があるかをDNAを用いて研究しています。東南アジア熱帯林は天然林からの択伐(抜き切り)によって林業が行われています。各国ともに持続的な林業を行うために、択伐の基準があります。しかし、この基準だけでは持続的な林業ができないのではないかと言われています。そこで択伐後も健全な種子生産や更新を行うためにはどれくらいの母樹密度が必要であるかの研究をマレーシアとインドネシアで行っています。
(参考文献)
http://www.jstor.org/stable/10.1086/324549
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1365-2745.2011.01929.x/full
(2)熱帯林の形成と遺伝的分化
東南アジアは大陸と多くの島から形成されています。それぞれの地域に分布する動植物も遺伝的にかなり分化したものや、類似したものなど様々です。これら動植物の遺伝的な違いは東南アジア地域の地形やその形成の歴史と密接に関連しています。例えば、氷期にはマレー半島、ボルネオ島とスマトラ島は海水面の低下で陸続きとなり、一つの大きな大陸(スンダランド)となっていました。そのため大陸側からボルネオ島やスマトラ島への動植物の移動が可能でした。過去30万年の間には3度の氷期がありました。そのため現在の熱帯林がどのようにして形成されたかを遺伝学的な手法で研究しています。
(参考文献)
(3)樹種識別のDNAデータベース
我が国はこれまでに多くの熱帯産の材やその製品を輸入して活用してきました。将来も持続的に利用ができるようにするためには熱帯林を保全するだけでなく、輸入された材がどんな樹種であるかを適切に検出できるシステムの構築も必要となります。そのためDNAを用いて輸入された材から樹種識別が出来る手法を開発しています。東南アジアで最も重要な樹木であるフタバガキ科について樹種識別のDNAデータベースの構築を行っています。
(参考文献)
http://link.springer.com/article/10.1007/s10265-010-0348-z#page-1
マレーシア森林研究所のDryobalanops aromaticaの林冠
ボルネオの熱帯林
熱帯材の集積所