(1)繁殖様式
樹木は繁殖のために様々な戦略を取っています。環境が厳しいところでは種子繁殖を行わずに栄養繁殖で個体の維持をはかり生き延びたりします。これらもDNAをマーカーとして調査することができます。環境の違いによってどの程度の栄養繁殖(クローン繁殖)をしているかを多形性の高いマイクロサテライトマーカーで見ることで明らかにできます。このような研究は種の繁殖戦略を理解する上で重要です。
(参考文献)
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0378112713002752
http://www.nrcresearchpress.com/doi/abs/10.1139/x00-177
(2)交配様式、遺伝子流動
樹木は一般的に他殖性ですが、時に自殖や近親交配を行います。また花粉親も動物.媒と風媒でその散布範囲も大きく異なります。これらも上述のマイクロサテライトマーカーを用いることで、どの程度の自殖をしているかとか、花粉親がどの個体であるかの特定を行うことができ、有効な花粉散布範囲を明らかにすることができます。これは集団が将来もある程度の遺伝的な多様性を保持して持続的に維持できるかどうかの指標ともなります。
(参考文献)
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0082039#pone-0082039-g004
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0378112708003757
http://link.springer.com/article/10.1007/s10265-007-0078-z/fulltext.html
http://link.springer.com/article/10.1007/s11295-005-0023-z/fulltext.html
(3)近交弱勢
樹木は近親交配を行うと種子が発達しなかったり、発芽しなかったり、生育が悪くなることが知られています。これは近交弱勢といって、遺伝的に近縁な個体と交配した際に現れる現象です。これもマイクロサテライトマーカーの遺伝子型データと形質、発芽率、成長などのデータを比較することによりどの程度の近交弱勢が生じているかを明らかにすることができます。
(参考文献)
http://link.springer.com/article/10.1007/s10265-005-0245-z/fulltext.html
スギの天然林(伏状更新が行われている森林)
ブナが優占する天然林
マレー半島の低地フタバガキ科林