大型自動二輪免許を取りたいと思った。
そもそも、中学、高校あたりまで他の男子並みにバイクに対する興味というものはあった。
漫画はほとんど読まないが「バリバリ伝説」くらいは知っている。ただし、公道で限界にアタックするような無茶はしたくない。
16歳の誕生日に原付の免許、18になって普通車の免許を取って普通に自動車に乗って生活している。
さて、44歳になった今年、欲しい車を購入した。エンジンはトルク感に溢れ、燃費がいい。外観もいけている。詳しい人たちによればシャシー性能も素晴らしいという。実際に乗っていて楽しい。これは15年乗り続けようと思う。
満足である。車に関しては。
周りを見渡すと路上にはたくさんのバイクが存在している。マナーはともかく、ひらひらと気持ちよさそうだ。大きなスクーターもたくさんあって、かつての「原チャリ」はほとんど見られなくなった。
「あれに乗ろうと思ったら、免許が必要なんだよな」
乗りたい時に、資格の点であきらめないといけないのは悔しい。どうせ取るなら制限のない免許だとうれしい。
思い立ってから約2ヶ月、二輪経験の殆ど無い、日頃運動不足の人間が、県警察運転免許センターで大型自動二輪免許技能試験(いわゆる一発試験)に合格するまでの過程を記す。
注意
本稿は一発試験に挑戦しようと考えて情報収集をしている中で、様々なサイトにある体験談、攻略法をひと通り読んできた人を対象としている。試験の目的、対象、内容などは詳しく書かない。地域、時期によって求められる法規走行の解釈が少しずつ違っているようなので、技能試験に合格した際に選択した方法をまとめておく。
無駄に長いため、沖縄県警察運転免許センターで技能試験を受ける人以外には読むメリットはない。読みやすさ、情報の見つけやすさなども考慮していない。巻紙式にダラダラと書いてあり、トイレットペーパーを引っ張りだすようにズルズルとスクロールしないといけない。
また、文体、時制、用語などばらばら。乱雑な頭の中身を晒しているようで恥ずかしいが、鮮度を優先して校正は後回しだ。
自らの経験をもとにしているが、随所に創作を入れてある。特に、嫁に関する記述はフィクションと理解してもらえると助かる。
2013/8/20(火曜日)
なんとなく、PCで「一発試験」について検索してみた。
誰も書かなかった大型自動二輪免許一発試験必勝法(リンク先消失のためInternet archiveに変更 '19/12/16)
神の書発見。
すごい。読んでいるとなんだか簡単な気がしてきた。これだったら、小遣いの少ない俺でも新たな資格を手に入れて、二輪に対して臆することなく堂々と接することができる人間になれるではないか。
だけど、普通自動二輪の免許に関しては教習所でとっているし、かなり活動的な生活をしている方が書いた文章だ。
若い頃は人並みの運動神経をしていたと自負しているけれど、ここ20年ほど運動というほどの事はせず、せいぜいシュノーケリング位だ。毎晩美味しい食事とビールを求め、嫁と二人で様々な店で外食している俺が、新たな運動性能を手に入れ、人並みに二輪車を操り合格を勝ち取る姿は想像もできない。休みは木曜日だけ。日曜日と祝日は18:00頃に仕事を終えられるが、他の日は19:30頃まで職場にいる。いつ練習すればいいんだろう。
無謀だな。
大型自動二輪は教習所で取れるというけど、どういう流れなんだろう。
二輪免許がなければ、基礎から始めて32時間の講習か。曲芸のようなレベルまで行く人もいれば、やっとこさっていう感じの人もいるな。まあ、どこも教習の流れとしては似たようなものだ。結構詳しく練習方法を書いてくれている人もいるし、キモは低速走行でのバランス感覚ってとこだな。スムーズに予約が取れて週一回1日2時間乗れたら4ヶ月くらいか。18万円、結構かかるなぁ。
なんだこれは。なんでこんなアブノーマルな免許のとり方をしてるんだ。他の免許取得方法も普通じゃない。いや普通を避けてるのか。これは刺激的だ。法規走行のやり方は限定解除時代の古いものだけどすごく参考になる。
よっし。アブノーマルで行ってみるか。
2013/08/21〜2013/09/04
一発試験に必要な情報を集めてみた。
沖縄県警察運転免許センター(通称公安)のサイトではあまり情報は手に入らない。それでも、自動二輪免許の技能試験は一ヶ月に2回木曜日(第2、第4)、大型自動二輪の受験に必要な事前審査は一ヶ月に1回木曜日(第2)に実施していること、二輪のための試験場開放はしていないことがわかった。自動車の練習はできるらしい。
なんと、俺の休日はこの試験を受けるためにあるのか。職場の休みは移せないし、代わりのいないポジションのためまず休めない。他の平日だったら受験すらできないのだ。
バイク免許、一発必勝![大型二輪一発合格の近道]/試験場コース図
コース図があった。これがあれば攻略可能だ。可能か?やってみよう。
あとは、練習に使えるバイクと場所だ。
心当たりはある。姉ちゃんに相談してみた。姉ちゃんはだいぶ前に大型自動二輪免許を取って、アクティブに二輪に乗り続けている。何度か「二輪免許とらないの?」と誘われている。その息子も2年前に大型自動二輪免許を手にしている。
大型のバイクも2台持っていて練習に使わせてくれるという。Kawasaki ゼファー750とSUZUKI GSF1200だ。
2013/09/05(木曜日)
一度試験場に行って確認してみることにした。豊崎の新しい試験場には初めて入る。ゴールド免許だからね。免許更新の間隔が長いのだ。更新さえなければ用のない場所だと思ってた。これからしばらく世話になるぜ。
ウェブサイトで見つけたコース図も掲示されている。間違いない。
2階のテラスに出るとコース全体が見渡せる。広いし、きれいだ。ここからなら試験中の同志たちの様子も丸見えだ。今日は試験ないけど。
1階の受付辺りに、必要な書類やら情報がないか眺めてみる。何もない。試験日やら時間表、手続きの流れなどを確認する手がかりが何もない。このへんのソファーに座っている怖いお兄ちゃんや、大きなおばさんたちはどういった情報をもとに、ひたすら待つことを心に決めたんだろう。
受付の若い女性が近寄ってきて「なにかお探しですか」と訊いてきた。そうか、質問しないと答えは出てこないんだな。
「いえっ、何でもないです」本当に試験を受けるのか。アドリブに弱く、まだ心の決まらない俺はとりあえず逃げた。
夕方、ゼファーに乗せてもらった。兄の家の庭だ。コンクリートが貼られた貸駐車場になっていて、10台くらい停められるスペースがある。ほとんどの車が出て行っていたためUターンをしながら走ることができる。
発進、停止。低速でのUターンを何度か繰り返す。ドキドキするがそれなりに動かせる。30分ほど乗せてもらってこの場所での練習は諦めた。周囲に住宅があるため迷惑になるだろう。
姉ちゃんには上手だと褒められた。同じゼファーに乗っている友人はものすごく大回りをしないとUターンできないと言う。彼女、ここでは免許は取れなかったであろう。
どこか、少なくとも2速まで加速できる場所が欲しい。練習する場所がなければいつまで経っても試験には受からない。
2013/09/06(金曜日)
確実に取れるという方法への誘惑は断ち切りがたく、教習所の料金を調べたりして。姉ちゃんの友人が教習所の教官をしているので入学金が割引になるという。思い悩んで、嫁に相談してみる。どっちでもいいとのこと。あまり好意的ではないのだ。
こんな事で怯んではいかん。ウェブサイト経由で翌日の入校に間に合うように申し込みをした。翌土曜日はどうにか都合をつけて午後の3時間入校式に出られるようにしよう。サイトの説明をよく読んでみると前日までに来校して手続きをとるように書かれている。今日は職場を離れられない。
キャンセルした。
よーし、一発試験で受かってやる。
…。
何回か受けてダメそうなら方針を変えよう。
2013/09/12(木曜日)
昨日従兄弟にヘルメットを借りた。色々とイタミの見える、かつては白かったであろうジェットヘルだ。午前中にライコランドに行って、ヘルメットの試着をしてきた。Lサイズだな。ネット経由で注文した。HJCの一番安いフルフェイス、送料込みで¥9450。安いのが出てるんだね。
3日前に注文したブーツも今日届く。持っているチャッカブーツは革底で滑りそうだし、シフトチェンジすると傷がつくからね。
よし、事前審査に行くぞ。月に1回しかないからこれを逃したらずっと待つことになるし、試験は無料だ。おっさんで、二輪免許がないってことで断られるかもしれないけど、その時は抵抗するか。
長袖シャツ、ジーパン、届いたばかりのガムブーツ、キズだらけのヘルメット。グローブはダイビング用だ。ちなみに俺は身長168cm、体重59kg、手足は短く元筋肉質、糖尿病予備軍と告げられた経験あり、高尿酸血症、髭ヅラだが清潔感はあるつもりだ。
13:00前に免許センターにつき、受付が開くのを待って事前審査を受けたい旨伝える。受けられるらしい。まあ、外観だけで拒否はしないよね。審査は本日の二輪免許技能試験が全て終わってからなので何時になるかわからないという。試験の様子を観ておこうと思っていたので問題ない。
2階に上がり技能試験の待合所に行くとライダーっぽい格好の人たちがうじゃうじゃいた。20人くらいか。みんな上級者に見える。これが受験者かぁ。腕を磨いて受験しに来たんだろうな。ありあわせの格好で来た俺なんか、受験の資格はあるんだろうか。
今日は技能試験を受けるわけじゃないので、試験の説明を受ける待合所には入らず、仕切りとして置いてあるついたての外で椅子に陣取り説明を聞いておこう。情報収集は大事だ。試験官が来て説明を始めたがほとんど声が聞こえなかった。
試験が始まるのだろう、受験者がぞろぞろ出ていく。テラスから様子を見ておくぞ。今日は第2コースだ。
「あれっ、スクーターだ」そうか、みんなが大型の受験者じゃないよね。走っているコースも違うし。大型の試験までコースを覚えておこう。お、やっと大きいバイクが出てきたぞ。バイクの種類も知らない俺は400ccの普通二輪も区別がつかない。違うコースを走り始めて大型じゃないことに気づいた。それにしても、ほとんど完走者はいない。免許をとりに来てるんだからね、上級者であるわけはないか。恋人らしき女性がハラハラした様子でテラスから見守っている青年は完走した。2階に上がってきた彼を迎える彼女は嬉しそうだ。合格だね。うん、その微笑ましい姿は合格点だ。
色の違うより大きなバイクが出てきた。あれが大型の試験車両だ。コースも合っているし。車種はわからない。CB750っていうのが全国的に使われているらしいから、それだな。
大型の試験が終わった時、16:00近くになっていた。「事前審査の受験者」試験官の声に気づくと、テラスに大勢いたギャラリーはほとんど消えていた。集まったのは3人。シャイな10代の若者、すごく親しみやすい笑顔を持った30歳近い青年、俺。うん、おっさんだな、俺。コースの端っこにある白線で8の字が描かれた場所へ移動した。移動中、試験官が二輪免許を持ってない人はいますかと尋ねてきたので、堂々と手を上げて「はーい」と答えた。
CB750と書かれたバイクが置かれていて、事前審査でいじめられるのを待っている。3人が順番に倒しては引き起こし、8の字に引きずり回す。シャイな若者は立てるのも、押して歩くのも苦労していた。よく中型とれたな。俺はというと心配していたほどのこともなく、すんなり扱うことができた。青年はプロ並みだ。事前審査にプロって無いけど。
二輪免許を持っていない俺は当然のこと、なぜか若者も400ccのバイクで外周を一周してくるように言われた。若者は俺の目から見るとスムーズに乗れているように見えたが、後で「よく免許とれたな」と言われていたので、コース上で変なことをしたに違いない。俺は、中型をまともな距離走らせるのは初めてなので、エンジンをかけて1速に入れる時にクラッチ握ってないわ、カーブでふらふらするわ、審査で落とされても文句は言えない。
なぜか、審査は全員合格とのこと。試験官が免許証をしばらく眺めて、「年取るとバランス感覚厳しいよ。1〜2回受けて教習所に通うことになるか、普通二輪に変えることになるよ」と声をかけてきた。了解。織り込み済みです。
ここで衝撃の事実が発覚。試験車両はXJR1300だという。試験を見ていたのに気づかないって、どんだけ車種を知らないんだよ。大きいじゃないか。
青年は試験官とも仲良くしゃべって(いじめられて)いるので何者かと思ったら、自動車教習所の指導員をしているらしい。学校の敷地に忍び込ませてもらおうとする俺の下心は気づいてもらえなかった。
次の試験は2週間後にあるが、いっぱいとのことで1ヶ月後にしか予約が取れない。10回受験すると10ヶ月かかるぞ。1ヶ月後の互いの健闘を約束しながら別れたが、受付の女性が洩らした「キャンセル待ち」という言葉を俺は聞き逃していない。抜け駆けしちゃうもんね。
ちなみに、若者の姿はその後見ていない。
2013/09/15(日曜日)
友人が会社の駐車場を練習に使っていいと言う。持つべきものはいい飲み友達だ。
しかし、姉ちゃんに港までGSF1200で来てもらったので、今日は埠頭で練習する。姉ちゃんの息子がやんちゃをするときのために買ってあったすね当てと肘当ても借りる。転倒するのを承知で愛車を貸してくれるなんて、ありがたいことだ。通販で買ったヘルメットも到着した。この後の練習では、プロテクター、ヘルメット、先に買ったガムブーツ、ダイビング用のグローブを使い続けた。おかげで大した怪我はなかった。
その後は、主に駐車場で夜間1時間ずつ練習した。ネット上で得た情報を基に自己流の練習方法だがメインテーマは低速走行だ。白線を一本橋に見立ててゆっくり走行。縦横に引かれた白線の上を、クランク通過を意識してハンドル操作で曲がる。洗面器をパイロン代わりにスラローム。1速半クラッチで小旋回。
たまに自動車教習所の自由練習というシステムも利用した。予約はできず、キャンセル待ちで空きがあれば練習させてくれる仕組みだ。教官は協力的で、やりたいことを伝えると効率的なメニューを考えてくれる。しかし、系統立てたカリキュラムをカバーするわけではないので、自主練習で苦手項目をしっかり把握しておく努力が必要だ。あくまでも、補助の手段となる。休みの木曜日に一時間づつ、試験当日に受けたことも2回ある。合計5回使った。
2013/09/26(木曜日)
さて、試験当日がやってきた。ここまでの練習7時間程度。うち2時間は教習所(当日の1時間も込)。
全然足りてないと思うが、キャンセル待ちにチャレンジ。08:00に試験場到着。08:30受付が開いたのでキャンセル待ちを申し込む。これまで対応してくれていた受付の女性は休みのようだ。慣れない様子の男性職員が、ペラペラの裏紙に名前を書き込む。ゴミ箱行きにならないよね。
自動車教習所で1時間練習をしたあと、免許センターに戻る。売店でカツ丼弁当を買って食べた。沖縄の高校球児は俺がとんかつを食べると甲子園で活躍してくれる。
12:00になると掲示板でコースが発表されている。第1コース。12:00から13:00の間はコースを開放すると聞いているので、歩いてみた。きっちり歩くと30分くらいかかる。
同じように歩いているのが数人いる。一発試験を受けようっていう人たちだ。俺より上手いに決まっている。しかもちゃんと予約してあって、試験を受けられるのは確実だ。キャンセル待ちの身は目立たないようにしておこう。
13:00受付で「キャンセルが出るかまだわからないが、試験の説明を受けておくように」と言われ、技能試験待合所に。結局時間になっても来ない人がいたので試験を受けられることになった。ようし、胸を張って受験者だ。
二輪の受験者は合計18人くらい。大型は6人。一番最後の走者になった。
結果、落ちた。一本橋から。
クランクが一番の心配項目だったが、2コースともスタート直後にこれが来る。うまく通れた。この後もずっと苦手意識があったが、一度も失敗しなかった。
停車をしようとしてふらつき、発進直後の左折でふらつき大回り、ウインカーを出すとホーンが「ブッ」、ウインカーを解除しようとして「ブッ」、ギアの上げ下げをアタフタ。後半の一本橋にたどり着く頃には疲れ果ててしまった。で、一本橋に2輪とも乗った途端に右へそれて行く。「ああ。」全く粘ることなく、淡白に落下。
発着場に戻り、試験官の乗る後続車で総評を聞く。が、何を言われたかあまり覚えていない。
安全確認をしっかりしようとしているのは良かった(うまくはない?)
スピード上げる メリハリ
二車線道路で右折のために進路変更するのが遅い 真っ直ぐ行くのかと思った(30m手前で一気に右端まで寄せた 二段階でやるべき?)
ウィンカー戻し忘れ(具体的にどこ?)
こんなところか。
待機時間中に仲良くなったO城さん、F川さんらと情報交換をして帰宅。
中型の試験を見ている際、腰パン、鎖ジャラジャラ、ガムをかみながら、慣らし走行のコースを盛大に間違えて試験官の話をさっぱり聞いていないことを証明してみせた少年が、8の字でドカンとパイロンに突っ込んだ。帰宅途中、半キャップを前後逆にかぶってあご紐だらり、スクーターに乗ったその少年が対向車線のど真ん中を追い越していった。「お前、さっき空飛んだばかりやんけ」
その後は、一本橋安定化、左折インベタ、スタートストップなどを重点的に練習。
NHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」のオープニング曲を歌うとリラックスできることを嫁が教えてくれた。「ちゃらっちゃっちゃっちゃっちゃっちゃちゃらちゃら、とぅーんとぅーんふぁーふぁーふぁーふぁー、ちゃらっちゃっちゃっちゃっちゃっちゃちゃらちゃら」ここまでで大体11秒だ。一本橋の上で歌おう。
2013/10/10(木曜日)
キャンセル待ちで受験できた。練習は前回から5時間追加(合計12時間)。うち教習所は1時間。
大型6人中2人目。第2コース。事前審査の時にじっくり見ていたのでコースの暗記はバッチリだ。前日の昼飯は嫁がとんかつを揚げてくれた。沖縄尚学が甲子園で優勝した時には、各試合前とんかつを食べて期間中に2キロ体重が増えたのだ。
コース間違いに気づいて、左に寄って止めたところで試験中止を告げられた。
メリハリが足りない
ふらつき
ウインカーが入りっぱなし クランクとか8の字(クランクは左折で入り左折で出るのでそのままにしていた 8の字では左折で入って右折で出るので途中で切り替えていた 一旦消してから入れないといけないか 二輪初心者なのでウインカー操作も苦手だ)
エンストの時は2速に入っていた(一時停止後、発進の際2回エンスト)
波状路OK スラローム7秒台 一本橋7秒台(あまちゃんの曲が思い出せなかった)
最後、8の字の中で右にウインカーを入れたのに、左に出てしまった。
この時、7回目の受験というI是名さんが合格していった。握手を求めて嘉例(カリー)をつけてもらった。
O城さんが波状路エンスト、F川さんは等幅道路交差点を直進したところで減点超過、事前審査で一緒だった教習所指導員のK仲さんは一本橋で落下だ。3人ともとても上手なのに残念である。
その後の練習では、スタートストップ、ウインカーの出し入れ、低速走行、あまちゃんの曲を思い出せるようにすることに重点を置いた。
2013/10/24(木曜日)
前日から「猛烈な台風」の影響を受けている。しかし、GPV 気象予報で西海岸側の降雨は少ないことを突き止めてある。ちゃんと予約もしてあるし、ゆっくり試験場に行ける。当然急制動は降雨条件だろう。俺にはキャンセルなんていう選択肢はない。
練習は6時間追加(合計18時間)。うち教習所2時間(当日の1時間も込)。
自動車教習所で1時間練習をさせてもらった。この日は教官がコースを作って走らせてくれた。これまでは教官の後について走行していたので、ウインカーの出し入れ、安全確認、進路変更などは見様見真似でやってきたが、自分の判断でタイミングを決めるいい練習になった。新たにコースを覚えるため少し時間がもったいないし、容量に限りのある脳みそが心配で言い出せなかったが、やはり早い時期にやっておくべき課題である。
この日の試験では、最後の課題、急制動の後中止を告げられた。具体的に何が悪かったのか聞けなかったが、多分開始位置より前でブレーキを掛け始めたのだろう。停止位置より前で止まれる絶対の自信はあるのに、直前に頭が真っ白になってブレーキを掛け始め、途中でクラッチを握りギアを落としてしまうのだ。教習所での練習時にも毎回そうなってしまうのに、それを治す練習はしていない。姉ちゃんのバイクではあまりやりたくない練習だ。
第1コースなので、急制動が終われば外周をくるっと回ってゴールだった。ただ、それまでにかなり減点されていることに気づいていたのでダメージは受けない。まだふらつくし、メリハリは足りない。だが、なにか見えたような気がする。一本橋9秒台、スラローム7秒台。減点はあるが、織り込み済みだし、風が怖くて一本橋はスピードを出したのだ。10秒台で行ける自信がついた。あまちゃんの曲も思い出せたし。それよりも、フラつきの原因だ。停止時、練習の時よりずっと早くクラッチを切ってしまう。試しに停止直前まで半クラッチで駆動力を効かせてみると、停止が安定した。
何よりも、ギアを上げる際クラッチを握っている時間が長い。アクセルを戻しながらクラッチを切る。これは同時にできる。シフトペダルの下に足を滑りこませ、それを掻き上げるのに2秒近くかかる。その間は加速できないんだからメリハリなんてつくわけがない。メリハリを意識して規定速度に近づけるため加速を引っ張った結果、減速開始が遅くなりクラッチを切るタイミングがずれる。変速操作に気を取られ、進路変更合図、安全確認動作がボロボロになる。俺の減点のすべてはヘタッピーな変速操作から来ている。
よし、素早いスムーズなギアチェンジだ。
同時に受験したのは5人。大型は4人だ。この風の中、合格者が1人出た。いかにも教習所の指導員という格好での受験でかなりの緊張を強いられていたが、安定感を見せてくれたI自動車学校のT波さん。握手を求めて嘉例(カリー)をつけてもらった。
初受験のA嶺さん、3回目の丘さん(米兵だ 何度聞いても、なぜ外国免許切り替えじゃないのかわからない)は残念だった。
次回の予約を入れるにあたって、10月は5回木曜日があることから3週間後が本来の試験日だが、台風の影響を考慮して来週も試験をしてくれることを告げられた。よしっ。この手応えを忘れまい。
2013/10/31(木曜日)
スムーズなギアチェンジをしつこく練習した。スムーズなシフトアップをマスターしたい(リンク先消失のためInternet archiveに変更 ) ここが教科書だ。練習5時間追加(合計23時間)。
駐車場の直線距離30m程の中で3速30キロまで上げ、ブレーキをかけながら1速まで落とし停止。繰り返し繰り返し練習した。瞬間的な操作ができてくると、意識して構えなくてもシフトアップができるようになった。これで、合図、安全確認に余裕が出る。
まあ、急制動の練習はできなかったが、それは時の運。どんなに練習でうまく行っても、俺のことだ、本番ではパニックになるに決まっている。合格するときはたまたまうまく行く事だろう。それに、これまで一度引っかかった場所は次回からは全部クリアしている。残すはゴールのみだ。
これまで、コースは事前審査の日も含めて2、1、2、1と来ている。今日は2だな。当たり!
さて試験。事前の諦めにも似た開き直りとは裏腹に、しゃきっとしない。停止で少し足を引きずる。左折インベタは少しカクカクする。ギアの選択でオロオロする。安全確認2回しちゃったよ。ああ、制動開始位置より少し早かったかも。あ、右足ついた。
あれ?行っていいんですか?この後、幹線を行ったり来たりしたら、もうゴールになりますよ。よし、右折のための進路変更は2段階にわけるぞ。はぁ、フラフラだ。疲れた。それでも、等幅道路の交差点では左右確認っと。ふぅ。ゴールの降車でコケるんだろうな。バイク壊したら、二度と試験を受けられないんだろうか。
終わったぁ。
後続車に乗り込むと、「合格です」との声。なんだかポァ〜ンとする。点数も聞けず、どこかで減点されたのかもわからない。合格ならいいや。70点以上なんでしょ。今日の試験官は事前審査で担当だった。どうです? 齢いってるけど取れたょ。
一本橋10.3秒、スラローム7.1秒、安全確認はできていたと言われた。
車から降りると、最終走者の俺が終わるまで友たちが待っていてくれた。にっこり笑ってサムズアップをしてくれる。
O城さん、丘さん、A嶺さん。今回は残念だったけど、皆さん俺よりうまいんだから、必ず合格は手に入れられるはずです。しつこく、ねちっこく継続してください。
事後
さて、一発試験での合格者は当然教習所でのカリキュラムを受けていない。そのカリキュラムには路上で起こりうる危険に対する予測、回避のシミュレーションが含まれている。初めてのカテゴリーの免許を試験場で合格した場合、教習所でこの講習を受けるまでは交付されない。普通車の免許を持っていても、二輪が初めてなら受ける必要があるのだ。
生意気にも、技能試験合格前からその「取得時講習」という過程について心配していたのだ。都合よく木曜日にそれを実施している教習所があるのかという点が問題だからだ。合格したらたくさんの教習所に電話で確認し、やっているところがなければ泣き落としで講習を都合してもらおうかとまで考えていた。一緒に受験した教習所関係の人たちと仲良くなったのは、そういう下心も含んでのことである。
しかし、そんな心配はせずとも構内に「自動車学校協会」のコーナーがあり、そこで相談をすれば実施のスケジュールは全部把握されている。木曜日に2輪向け講習を行なっている教習所がすぐ近くに見つかった。だが、すべて普通二輪と指定されており、大型二輪を対象にした講習はなかった。考えてみれば当たり前だ。大型からとる奴なんてほとんどいない。狙い通りアブノーマルだ。事務の方が電話をして確認し、予約を取ってくれた。来週に受けられるという。
これが終われば再来週、免許交付だ。
ここまで、かかった料金。
教習所(2箇所)
4700✕2=9400
4300✕3=12900
証明写真
600
技能試験
4600✕4=18400
小計 41300円
取得時講習
12450円
合計 53750円
練習環境
まず、必要なものは練習に使えるバイクだ。今にして思えば、小排気量のバイクでも練習は十分可能なように思う。試験に落ちている間は、大型じゃないからだとか色々考えてしまうと思うが。どちらにしても、自分で持っていなければ人から借りないといけない。姉ちゃんが気前良く使わせてくれたし、練習にも付き合ってくれた。合計19時間ほど乗らせてもらったが、38時間拘束したことになる。19回、往復の1時間、練習の1時間だ。しかも、7回転倒している。主にハンドル操作での直角転回、リーンアウトで小旋回の練習中。始めの4回は練習の中で仕方ない転倒だったと思うが、残りの3回は必要もない高難度の技に挑戦していて起こったものだった。申し訳ない。ウインカーレンズを割ったり、クラッチレバーを折ったり。俺もヘコむが、タンクも凹む。姉ちゃんにはもっとダメージだったろう。大事にしている愛車なのだ。感謝してもしきれない。高級焼肉をおごる約束をしている。(本当はタンクは凹んでいない)
協力と言えば、嫁の力も大きかった。「あまちゃん」と「とんかつ」しか書いてないが。
練習場所が手に入るかも重要なポイントだ。友人の会社が観光施設を持っていて、そこの駐車場はバスが数台、乗用車も十数台同時に停められるが、夜間には駐車車両がなく、安全に練習できる。小さな教習所コースの6分の1くらいの大きさだろうか。アスファルトがめくれたり、傾斜があったりして直線が取れる距離は30mほどだが、使わせてもらえて大いに助かった。こういった練習が法を犯すものでなければいいのだが。夜間、警備員さんが常駐しているし、頻繁に挨拶をしていざという時は助けてもらえるように気を遣っていたが、警官が職務質問に来ることもなく、確認はできていない。周辺に住宅が無いことが良かったんだろう。
練習期間中、その友人のご母堂と飲む機会があったのでお礼を述べたら、嬉しそうに「使ってくれ」と言ってもらえた。持つべきものはいい飲み友達だ。
練習
練習は当然大事だ。二輪に乗ったこともない俺が、練習もせず試験に受かるわけがない。普段乗っている人であっても、試験で求められるものは少し違うと思うので、時間を作って練習したほうがいいかと思う。
練習のテーマは低速でのバイクコントロールだ。具体的にはしっかりとしたニーグリップとハンドルに力を加えない乗車姿勢。ハンドルからの抜重について書かれている試験対策サイトは少ないが、これを意識しないと低速でバランスを取るのは難しい。背中は直立ではなく少し前傾にしニーグリップした内股で支える感じ、腕に余裕をもたせ少し外側に張るようにしたほうが細かく制御できた。
教習所程度の広さもない以上、練習方法は限られてくる。ただし、広い場所だとスピードが出せる分テーマが拡散してしまい、結局うまく行かなかったかも、と考えている。具体的な練習方法はいろんな場所に書かれているので、自分で吟味し取捨選択するべきだと思う。
ただひとつ、低速でのコントロールをある程度身に着けてからの練習方法を挙げる。「四角グルグル」だ。できるだけ距離を取って4箇所、四角形になるように目印を置く。車体からみて左方2m前方2mくらいに目印が来る位置で停車。スムーズに発車し、直進1.5mの位置で小回り左折、膨らまず目印を舐めるように通過。スムーズにシフトアップしながら思いっきり加速。目印手前でシフトダウンしながら減速。車体からみて左方2m前方2mくらいに目印が来る位置で安定した停止。最後の週はこれをひたすら繰り返した。インベタ左折、発進、停車、シフトチェンジ。試験中何度も繰り返される課題だ。最後の試験で「ダメだ」と思いながら実施していたが、これまでに比べるとずっとスキルアップできていたんだと思う。
法規走行、課題のクリアは必要なことだ。参考になるウェブページはたくさんある。熟読し、コース図を研究しながら、ひたすらシミュレーションしよう。このページの最後に、何も書き込みをしていないコース外形図を作成しておいてある。たくさん書き込みをして、研究材料とされたい。たまに教習所に行ってその成果を確認したらいい。一本橋、スラロームなど時間制限のある課題は、そこそこできたらいい。減点は僅かなものだ。
白線の上15mを歩くように走らせる練習は、最終的に15秒ほどかけられるようになったが、これは一本橋のためだけではない。低速でのバイクコントロールに明らかに効いた。自然とニーグリップが決まるようになる。あまちゃんのテーマ曲を口ずさみながらやってみよう。
おお〜、今思い出した。一つだけ課題のコツを書いておこう。波状路の通り方だ。ポンポン乗り越えて素早く通過することはあまり難しくない。座位で平地をゆっくり走らせることが安定して出来るようになったら、ステップに立ち上がってとてもゆっくり走らせる練習をしてみよう。本番ではアクセルを開け気味、半クラッチ、後ブレーキで低速を維持し、半クラッチを使いながら一つ目の突起をポンと超える。ここから秒数のカウントが始まる。後ブレーキを引きずりながら半クラッチで速度を調整し、2つ目の突起までゆっくり進みポンと超える。ここまでで2秒くらい消化したら、後はもう小細工せずに残る突起をポンポン超えていくと、余裕を持って5秒を超えることができる。アクセルを煽りながら、半クラッチを当てる方法だとエンストしやすいようだ。波状路で失敗するのは勿体無い。
規定
ローカルルールがある。本稿の本当の主題はこれだ。ここまで長々と書かれた文章は余談である。すべての状況を経験したわけではないし、うまく試験官から話を聞き出す手腕を持たない。あくまで想像で書くことであるので真偽のほどは定かではない。
本来、免許というものはどこで取るにしろ同じ条件で合否が判定されるべきものであるが、試験官も人である。色々と解釈の違いがあって、試験場が違うと少し表現が変わってくる。ここで書くことは、沖縄の場合である。
片側2車線道路での右折は、キープレフトの位置から2段階に分けて進路変更をするといいようだ。一回目の試験で「コース間違いに気づいて慌てて寄ったのか」と訊かれたことが根拠である。周回路から入ってすぐに進路変更を始めるとちょうどよいので、受験者にも都合がいい。
キープレフトの位置は車線の真ん中よりいくらか左といった程度の意識でいいようだ。むしろ、左折前に左に進路変更しましたよっときっちり表現することが重要らしい。ようだ、とか、らしいである。試験官が日本語の不自由な外国人受験者に、俺の走り方を例にとって説明していた。
メリハリと言っても、各所で書かれているような凄まじい徐行から鬼のような加速を求められているのではなさそうだ。少なくとも、俺が合格した時には常識的な範囲だった。下手くそな時間のかかる変速操作が、スムーズなシフトチェンジに変わっただけだ。
コース図を横方向に走る幹線に交差する短い道は30mの長さが取れない。右左折するにあたって、本来は30m手前で進路変更を完了しておく必要があるが、この場合は必要ないらしい。具体的には信号のある交差点を発着点に向けて進み、突き当りで右左折する場合、信号手前ではキープレフト、交差点進入時ウインカー点灯、交差点を過ぎてすぐに安全確認目視、前を向いて進路変更だ。合格した人たちはみんなそうしていた。
障害物の側方通過のための進路変更は30m手前で行う必要はない。合図から3秒で進路変更、すぐに左ウインカー、側方通過後安全確認目視、進路を戻す、でいけた。
スラロームはたまにパイロンが置き換えられるらしい。初回の試験ではコース図の通り置かれていたが、それ以降は左旋回から開始するように変わっていた。
左折してすぐ右折という状況では、一旦キープレフトの位置に入って右に寄せても、最初から右に入っても、どちらでも構わない。
クランク内、8の字内ではウインカーを一旦消す。
左折時巻き込み確認は必要。発着点から周回に入るときは右ウインカー。急制動の側道へ入るときは左ウインカー、出るときは右ウインカー。このあたりは常識のようだが、ネット上には違う解釈も書かれているのだ。調べれば調べるほど悩ましくなる。沖縄に限ってはこんな感じで大丈夫そうだ。
ここに書いていない項目は、「誰も書かなかった大型自動二輪免許一発試験必勝法」の記述通りに実施する。
終わりに
ここまで読んだ奇特な方はお気づきだと思うが、何人かの受験者が試験に姿を見せなくなった。シャイな若者や、腰パンの少年らだ。2人共いわゆる若者だった。教習所であれば規定の時間で足りなければ補習をしてでも、危険な二輪車に乗るにあたっての心構えを教え込む時間が取れるだろう。しかし、一発試験では試験官がそんなことをしてくれることはない。自分でその心構えを身につける必要がある。他にも姿を見かけなくなった受験者が何人かいたが、あまり会話を交わす機会がなかった。
印象的な言葉があった。最初の試験の後、受付をしていた慣れない様子の男性職員が、試験に落ちた俺達が受付前でしゃべくっているのを嬉しそうに眺めていた。「こうやって情報交換をしている人たちは、どんどん上手くなって合格していきますよ。」
技能試験の合格で公道でバイクを走らせるための資格は得た。ただし、まだ安全に楽しく走らせるだけの技量は持っていない。バイクを手に入れたら、人の迷惑にならない場所で練習を続けていこうと考えている。
受験にあたって、友人も何人かできた。バイクを乗り続けていけば友情も長く続くだろう。免許欲しい欲しい病は治癒した。バイク欲しい欲しい病を発症した。
なお、3回目の受験から試験前のとんかつはやめた。
(了)
2013/11/03