Last update: 2025.2.7
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甲殻類の性差構築機構の理解を目指し、幼生変態や左右非対称性、そして生殖システムに着目して研究を行なっています。ラボで実験をする時間より生き物の飼育をしたり野外調査に行く時間が増えている気がしますが、様々な研究ツールを駆使して生命現象を明らかにしていきたいと思っています。
主な研究内容
ミジンコの環境依存型性決定と環境毒性学
水産種を対象とした甲殻類の比較生理学
甲殻類を中心とした無脊椎動物の生理生態学
形態計測形態計測による雌雄・
生物多様性や保全生態学的研究
その他
1.ミジンコの環境依存型性決定と環境毒性学
1-1:ミジンコとは
ミジンコは淡水性の甲殻類で、日本全国をはじめ世界中に生息している動物プランクトンです。私はこのミジンコを材料に、環境で性が決まる環境依存型性決定のメカニズムを研究をしています。多くの方が小学校や中学校の理科の授業で顕微鏡越しに見たことがあるのではないでしょうか?そんな誰もが知るミジンコですが、彼らがとても興味深い生命現象の宝庫であることはあまり知られていません。
1-2:ミジンコ類の生活史(周期性単為生殖)
ミジンコは、季節によって移り変わる生息環境に巧く適応するために、ユニークな生存戦略を獲得してきました。ミジンコは、環境条件が良いときはメスだけで増える“単為生殖”によって短期間で爆発的に個体数を増やすことができます。しかし、環境条件が悪化すると単為生殖によってオスを産み、“有性生殖”をおこなうことで乾燥や凍結に高い耐性のある休眠卵を産生します。このように、環境に応じて単為生殖と有性生殖を切り替える生殖システムは周期性単為生殖と呼ばれます。
また、ミジンコのように仔虫の性が環境要因によって決まる性決定様式は環境依存型性決定(environmental sex determination: ESD)と呼ばれます。このようにミジンコは、外部環境の変化に応じて、仔虫の性や生殖様式を巧みに切り替えているのです。では、ミジンコにとって“悪い”環境条件とはなんでしょうか?これまでの100年以上にも及ぶミジンコの研究の中で、オスや休眠卵の産生が促される環境要因として、日照時間、水温、栄養状態(餌量)、個体数(密度)、あるいはこれらの様々な組み合わせが報告されています。(Illustration by Ayano Katayama)
1-3:実験動物としてのミジンコ
ミジンコ類は、研究に用いる実験動物として以下のような非常に優れた利点が数多く存在します。
・ 飼育が簡単:淡水性のため、飼育水の調達・調整も容易です。餌はクロレラなどの植物プランクトンを与えます。
・遺伝的に均一な個体が短期間で大量に容易可能:ミジンコは、一般的に約1週間で性的に成熟して、その後、単為生殖で3日ごとに約20-40匹の仔虫を産生します。さらに、単為生殖によって産まれてくる仔虫は母親のクローンのため遺伝的に均一な個体を容易に集めることができます。
・観察が簡単:ジンコの体は透明で内部器官を観察することが容易です。また、母親の育房に産み出された卵は、母親から取り出した後も発生するため、卵から仔虫への成長を顕微鏡下で観察することができます(右写真)。
・ゲノム情報等が利用可能:ミジンコ (Daphnia pulex)は、2011年に甲殻類で初めてとなる全ゲノム情報が解読されました (Colbourne et al., Science 2011)。また、国際ミジンコゲノムコンソーシアム (Daphnia Genomics Consortium)を中心に、ミジンコの生体内物質(DNA, RNA, タンパク質、代謝物など)や腸内細菌群の網羅的な解析が進められており、公共のデータベースへの登録数が増えています。
・卵への顕微注入(マイクロインジェクション)法の確立:ミジンコをはじめとする、いわゆる“非モデル生物”では、任意の遺伝子の機能を調べる遺伝子機能解析法の確立が実験を進める上で大きな障壁となります。2011年に大阪大学の加藤泰彦博士が、オオミジンコ (Daphnia magna) の初期胚(母親の育房に産卵された直後の卵)に顕微鏡下で微小針を介して外来物質を導入する方法を確立しました (Kato et al., Dev genes Evol 2011)。この方法により、ミジンコ類で初めて遺伝子機能を一時的に抑制するRNA干渉法が可能になりました。2013年には、岩手医科大学の蛭田千鶴江博士によってミジンコ(Daphnia pulex)でもマイクロインジェクション法が整備されました (Hiruta et al., BMC Biotech 2013)。現在では、このマイクロインジェクションを用いて、ゲノム編集と呼ばれる新しい遺伝子改変技術もミジンコで実用化されています (ミジンコのマイクロインジェクション法とその応用についての総説:Toyota et al., RNA interference 2016)。
1-4:ミジンコの環境依存型性決定の分子基盤の解析(2010ー現在)
生物の多様性に富んだ性決定機構は、染色体の構成に起因する遺伝型(XY/XX, ZZ/ZWなど)と、外部の環境要因に惹起される環境依存型の2つにわけることができます。遺伝型性決定は、これまでに、ヒトを含む様々なモデル生物の研究からその分子機構が解き明かされつつありますが、その一方で、環境依存型性決定は、優れたモデル生物や実験系が確立されていないため、その分子機構はほとんど明らかになっていません。環境依存型性決定を示す生物の例としてよく知られているのが、ワニやカメなどの爬虫類ではないでしょうか。調べられている全てのワニ類や大部分のカメ類、そして一部のトカゲ類は、卵の培養温度で産まれてくる個体の性が決まる“温度依存型性決定”と呼ばれる性決定様式を持っています。しかし、爬虫類は世代時間が長い上、研究室で卵を産んでもらえるように飼育するのも一苦労です。このように環境依存型性決定を研究するには、まずこの研究に最適な『モデル生物』を見つける必要がありました。
そこで白羽の矢が立ったのが、ミジンコでした。上でも述べたように、ミジンコ類は、生息に適した環境では単為生殖で繁殖してほぼ全ての個体はメスとして発生しますが、環境悪化によって雄を産生します。2000年初頭に日米の別々の研究グループからほぼ同時に、幼若ホルモン(JH)をミジンコ類に曝露することで環境に関係なくオスの仔虫が誘導されることが明らかにされました (Olmstead and LeBlanc, J Exp Zool 2002; Tatarazako et al., Chemosphere 2003)。JHとは、節足動物に保存されている内分泌因子で、脱皮・変態・性成熟など重要な生命現象を制御している多機能性因子です。この発見後、オス産生を誘導するJHの感受期が母親卵巣内にある卵母細胞期であることが明らかにされました。これは、外部からJHを母親に投与しても、そのとき育房にある卵の性には影響せず、そのとき母親の卵巣にあるこの次に育房に産み出される卵にJHが作用していることを意味しています。これらの発見によって、環境悪化を感受した母親体内ではJH濃度が上昇し、それが卵巣中の卵母細胞に作用することで卵の発生運命がオスになるという仮説が立てられましたが、環境情報を母親体内でJH濃度へと翻訳し、オス性分化へと導く一連の分子機構はまったく明らかになっていませんでした。そこで私は、このJHを足掛かりに、ミジンコの環境依存型性決定の分子メカニズムの解明に挑んでいます。
関連する論文・著書とその解説
ミジンコ種間における性決定遺伝子doublesexの発現解析 (Toyota et al., BMC Genomics 2013)。
ミジンコとオオミジンコからJH受容体の単離とリガンド特異性の解析 (Miyakawa et al., Nature Communications 2013)。
ミジンコ (D. pulex WTN6系統)を用いて日長時間依存的な雌雄の誘導系の確立と、JH生合成がオス産生に関与していることを発見 (Toyota et al., J Insect Physiol 2015)。
トランスクリプトーム解析によって、WTN6系統のオス誘導に関わるJHの上流制御因子として、イオンチャネル型グルタミン酸受容体を同定 (Toyota et al., BMC Genomics 2015)。
メタボローム解析によって、WTN6系統のオス誘導因子としてパントテン酸(ビタミンB5)を同定 (Toyota et al., Sci Rep 2016)。
ミジンコとオオミジンコの雌雄の胚発生ステージ表の整備 (Toyota et al., Zool Sci 2016)。
マイクロアレイ解析によって、性決定期の卵巣でJH物質に応答して発現変動する遺伝子のカタログ化 (Toyota et al., J Appl Toxicol 2016)。
ミジンコの顕微注入法についてまとめた総説 (Toyota et al., InTech 2017)。
WTN6系統のオス誘導にprotein kinase C経路が関与していることを発見 (Toyota et al., Biol Open 2017)。
WTN6系統のオス誘導に焦点を当てて光周性を詳細に調べました (Toyota et al., Zool Sci 2017)。
ミジンコ類の環境依存型性決定についてまとめた総説 (Toyota et al., Springer 2018)。
湖底堆積層の休眠卵から復活させた50年以上前のオオミジンコ集団の短日・長日下での生活史形質に与える経世代影響を調べました (Toyota et al., Sci Rep 2019)。
上記10の研究から見出した光周期依存的な性決定様式をもつオオミジンコ2系統についてそのオス産生機構に関与するシグナル経路を整理しました (Toyota et al., J Appl Toxicol 2020)。
オオミジンコの遊泳行動パターンの性差を定量的に示しました (Toyota et al., J Exp Zool 2022)。
ミジンコは環境の変化や化学物質による水質汚染に非常に敏感な性質をもっています。そのため、古くから環境指標生物として自然界の環境汚染をモニタリングするために重宝されてきました。その活躍は日本だけで留まるものではなく、経済協力開発機構 (OECD) が定める生物を用いた化学物質の評価ガイドラインにもミジンコ(主にオオミジンコ推奨)を用いた評価試験が2種類定められています (OECD Test Guideline 202; 211)。これらの試験では、ミジンコへの急性毒性(48時間)と生殖毒性(21日間)が評価することができます。また、近年の毒性学では、環境中の化学物質がどのように生体内のシグナル経路を撹乱し、生存率や繁殖率の低下を引き起こしているのか、その分子メカニズムの解明が進められています。私も、ミジンコの生存率や繁殖率に影響を与える幼若ホルモン物質が、生体内のどのような遺伝子の発現を撹乱しているのか調べるためにマイクロアレイ解析などをおこなっています。
関連する論文とその解説
オオミジンコ仔虫における3種のJH活性物質 (fenoxycarb, epofenonane, methoprene) を用いたJH応答遺伝子の網羅的な探索 (Toyota et al., J Appl Toxicol 2014)。
オオミジンコを用いた化学物質 (diofenolan) のJH活性作用の評価 (Abe et al., Aqua Toxicol 2015)。
オオミジンコを用いた化学分散剤 (Corexit 9500)の毒性評価試験 (Toyota et al., J Appl Toxicol 2016)。
節足動物の脱皮ホルモンのAdverse Outcome Pathwayの確立に関する総説 (You et al., Env Sci Technol 2017)。
ミジンコの幼若ホルモン受容体遺伝子のドッキングシミュレーションを用いて様々なリガンドの結合度を予測しました (Hirano et al., Chem Res Toxicol 2020)。
ミジンコの環境依存型性決定と幼若ホルモンのAdverse Outcome Pathwayの確立に関する総説 (Toyota et al., Aqua Toxicol 2022)。
2.水産種を対象とした甲殻類の比較生理学(2018ー現在)
2ー1:サイナス腺
十脚目甲殻類の眼柄(複眼を支えている部分)にはサイナス腺-X器官と呼ばれる神経内分泌系が存在します。このサイナス腺からは数多くのペプチドホルモンが分泌されており、それらによって脱皮、卵成熟、血糖値調節、体色調節など様々な生命活動が制御されています。
2ー2:サイナス腺ホルモンの生理学
クルマエビやズワイガニなど国内の有用水産種を対象にサイナス腺ホルモンの探索や単離精製、そして生理機能解析を通してサイナス腺ホルモンの生理機能を明らかにしようとしています。
クルマエビの眼柄切除の様子
ズワイガニの最終脱皮前後の生理変化 (Toyota et al., 2023)
関連する論文・著書とその解説
十脚目や枝角目の性決定・性分化について特に内分泌因子の観点からまとめた総説 (Toyota et al., Genes 2021)。
伊勢湾におけるヨシエビの周年繁殖生態を明らかにしました(Yamane et al., Fish Sci 2022)。
アメリカザリガニとミステリークレイフィッシュの造雄腺ホルモンの有機合成法を確立し、精巣を有するミステリークレイフィッシュの作出に成功しました (katayama et al., Bioorg Chem 2022)。
アマエビの赤色色素凝集ホルモンの単離と生理活性を明らかにしました (Ohira et al., Aqua Anim 2022)。
クルマエビの殻においてカルシウム沈着のメカニズムを解明しました (Sekimoto et al., 2022)。
ナンキョクオキアミの発光器官制御ホルモンの探索 (Ohira et al., Sci J Kanagawa Univ 2022)。
バナメイエビの脱皮抑制ホルモンに関する論文 (Ohira et al., Sci J Kanagawa Univ 2022)。
ズワイガニの最終脱皮後に血中幼若ホルモン(methyl farnesoate)濃度が上昇することを発見しました (Toyota et al., 2023)。
クルマエビの雌雄の眼柄神経節のRNAseqと2つのdoublesexを単離しました (Toyota et al., Gene 2023)。
クルマエビの稚個体において甲殻類雌性ホルモンの2つの生理機能(成長・体色制御)を明らかにしました (Toyota et al., Gen Comp Endocrinol 2023)。
イセエビの甲殻類血糖上昇ホルモンの生理活性を明らかにしました (Toyota et al., Zool Sci 2023)。
2ー3:十脚目甲殻類の幼生変態メカニズム
海産の十脚目甲殻類は幼生期は生体と異なる姿をしていて、その生活史も大きく異なります。つまり十脚目甲殻類も昆虫が幼虫から蛹、そして成虫へと姿を変えながら成長するのと同じように「変態」することで効率よく成長する術をもっています(上図:クルマエビ)。この十脚目甲殻類の幼生変態にどんな遺伝子が、どんなホルモンが関与しているのかというのはほとんど明らかになっていません。私のこれまでの研究からクルマエビ幼生の変態過程には幼若ホルモンと脱皮ホルモンの2つのホルモンが関与していることが明らかになってきましたが、他の十脚目ではどうなっているのかまだまだ未解明な部分が多く残されています。そこで国内の水産重要種の幼生飼育の専門家の先生方の協力を得て現在この謎に挑もうとしています。
関連する論文・著書とその解説
クルマエビの幼生変態に対する幼若ホルモンと脱皮ホルモンの影響を調べました (Toyota et al., Front Endocrinol 2020)。
十脚目や鋏角類(クモ類)の幼生変態についてまとめた総説 (Toyota et al., InTech 2022)。
3.甲殻類を中心とした無脊椎動物の生理生態学(2020ー現在)
2020年6月より新潟大学佐渡臨海実験所に着任したことを契機に、これまでのラボワークを主とした研究に加えフィールド調査による甲殻類の生理生態研究を始めました。日本海側の佐渡島、能登半島、隠岐島を主なフィールドとして活動しています。以下に現在精力的に進めているテーマを紹介しますが、これら以外にも、「そこそこ獲れて、そこそこ飼える生物」を対象とした甲殻類に限らない調査も進めています。
関連する論文・著書とその解説
アルテミアの光周期依存的な繁殖様式の可塑性に関する論文 (toyota et al., Aqua Anim 2021)。
アメリカザリガニの稚個体が青色照明飼育下で成長スピードが変わることを発見しました (Toyota et al., Zool Stu 2022)。
アカテガニ, ベンケイガニ, クロベンケイガニの幼生飼育における最適な餌料系列などを明らかにしました (Toyota et al., Plankton Benthos Res 2023)。
真鶴市(神奈川県), 佐渡市(新潟県), 能登町(石川県)のイワガニに寄生するフクロムシ優占種と宿主の形態的雌化を明らかにしました (Toyota et al., Zool Sci 2023)。
深海性環形動物マシコヒゲムシが浅海環境に適応したメカニズムに迫った論文 (Ogiso et al., Sci Rep 2023)。
トゲツノヤドカリとイソギンチャク類との共生生態 (豊田・角田, 日本海域研究 2024)。
4.形態計測形態計測による雌雄・系統判別(2019ー現在)
ケガニ漁師さんの一言をきっかけにケガニの雌雄を形態情報だけで判別することに挑戦しました。定規やノギスだけでもこんなにたくさんの情報が得られるのかと大きく感動してしまい、今や色々な研究に取り込んでいます。この手法は対象生物を細部まで観察する機会を提供してくれるので生き物のカタチに対する理解が深まります。
ケガニ
アカテガニ
スナガニ
関連する論文とその解説
ケガニの甲羅形態の2次元情報から幾何学的形態計測手法で雌雄判別を試みました (Toyota et al., Aqua Anim 2020)。
ケガニの甲羅形態の3次元情報から新しい雌雄判別手法を確立しました (Toyota et al., Aqua Anim 2021)。
ケガニの甲羅形態の写真から機械学習を用いて雌雄判別できる手法を確立しました (Ueki et al., Sci Rep 2023)。
アカテガニの能登町(石川県)と竹原市(広島県)の個体群を用いて甲羅形態から雌雄と地域個体群間を判別できる手法を確立しました (豊田ら, 日本海域研究 2024)。
スナガニの能登町(石川県)と佐渡市(新潟県)の個体群を用いて甲羅形態から雌雄と地域個体群間を判別できる手法を確立しました (豊田ら, 日本海域研究 2024)。
5.生物多様性や保全生態学的研究(2023ー現在)
フィールド調査をしていると時々普段見かけない生物に出会うことがあります。そららの中にはこれまで世界中のどこからも見つかっていなかった未記載種であったり、その地域では生息が知られていなかったり、雌雄モザイクであったり、色彩や形態に変異が生じていたりなど、様々なパターンが考えられます。またこれらに加え、一般の方が長年調査や採集をされている記録たちも後世に参照可能な形で残すことは生物多様性や生物保全活動を進める上でとても重要だと考えています。このような考えに則り、多くの学生さんや専門家、愛好家の方々のお力を借りて記録に残す活動を始めています。調査環境は沿岸域に限定せず、深海、海浜、河川、水田、陸域、森林などカバーできるように、対象種も無脊椎動物に限らず脊椎動物や植物まで扱えるように勉強中です。
5ー1:新産地報告
5ー2:雌雄モザイク
5ー3:色彩・形態変異
5ー4:ストランディング
関連する報文とその解説
左鉗脚が白化したヒライソガニの発見 (角田・豊田 Cancer 2023)。
隠岐諸島島後におけるホソアシチビイッカクの初記録 (角田ら, さやばね 2023)。
アカバツヤムネハネカクシの隠岐諸島初記録 (角田ら, さやばね 2023)。
隠岐諸島島後に漂着したオットセイの記録 (角田ら, 山陰自然誌研究 2023)。
石川県からクロヘリメジロザメの初記録 (角田ら, 水生動物 2023)。
福井県で水揚げされた雌雄間性のズワイガニ (角田ら, 水生動物 2023)。
福井県で水揚げされたズワイガニの奇形2例 (角田ら, 水生動物 2023)。
石川県能登町でゴイシガニの形態変異個体の発見 (角田ら, のと海洋ふれあいセンター研究報告 2023)。
6.その他
高専時代(高校+学部4年相当)は柿の有用種選抜の分子マーカーの探索研究を、学位取得後は甲殻類以外の爬虫類(クサガメ、アカミミガメ、スッポン)、哺乳類(マウス)、真骨魚類(メダカ、海産魚類)などの脊椎動物の共同研究に従事しました。
関連する論文とその解説
Estrogen receptor (ESR)とandrogen receptor (AR) の機能分化に関する総説 (Ogino et al., J Steroid Biochem Mol Biol 2018)。
メダカのGPCR型ESRの同定 (Miyaoku et al., J Appl toxicol 2021)。
マウス子宮における間葉系ESR1の機能の解明 (Furuminato et al., Sci Rep 2023)。
海産魚メジナを表層水と深層水下で高密度飼育した際の血中コルチゾル濃度を明らかにしました (Ikari et al., Data Brief 2023)。
海産魚ヒラメにおいてキヌレニンがコルチゾル値を下げることを明らかにしました (Ikari et al., Sci Rep 2023)。
深層水がスルメイカのコレステロール/ミネラル代謝を変化させて体重損失を防ぐことを明らかにしました (Hatano et al., Sci Rep 2023)。
キンギョのスタニオカルシンの生理機能を明らかにしました (Kuroda et al., J Biol Reg Homeo Agents 2023)。
6ー1.有用柿品種の選抜のための分子マーカーの探索(2011ー2014)
西条柿は中国地方を中心に栽培されている柿品種で、食用として高い人気を誇っています。2000年頃に島根県の農場で形態的特徴は西条柿に類似しているものの、果実が既存の西条品種と比べ明らかに大きな品種が見つかりました。この品種はM-3と名付けられましたが(左の写真)、本種を新品種として栽培するためには、既存の西条柿品種との類縁関係を明らかにする必要があります。そこで、私は、制限断片長多型 (RFLP) という手法を用いて、既知の西条品種や複数の受粉樹とともに本種のRFLPを比較し、M-3が西条品種と受粉樹との交雑で産まれた実生品種である可能性が極めて高いことを突き止めました。通常、西条柿の多くは枝変わりによって作出されたものが多数を占めますが、本研究は実生でも有用な柿の新品種の作出が可能なことを示しました。
関連する論文
- Toyota et al., Scientia Horticulturae 2016.
6ー2.カメの温度依存型性決定研究(2018−2023)
爬虫類の一部には孵卵温度で性が決まる温度依存型性決定(temperature-dependent sex determination: TSD)を示す種が存在します。私はポスドク時代にこの爬虫類のTSDの分子機構を解明するプロジェクトに参加し、スッポン(遺伝型性決定:genotypic sex determination: GSD)やクサガメ(TSD)を用いて研究を行ないました。
関連する論文
スッポンの卵にエストロゲンを塗布して遺伝的雄の生殖腺がメス化することを示しました(Toyota et al., Zool Stu 2020)。
クサガメの性決定の温度感受期の時系列RNAseqから性決定/性分化遺伝子を整理しました(Toyota et al., Gene 2023)。