04.つや出し磨き

▼「つや出し磨き」作業概要

「中磨き」を行った木の実を製品にするための仕上げ、機械化する前の手作業から、様々な工法を試行錯誤した後に確立された「乾式研磨機によるつや出し磨き」まで。それぞれの作業内容。

艶出し磨き後の椿の実

1)木の実のバフ仕上げ(昭和35~36年ごろ)

バッファーと呼ばれたモーター動力の機械の軸に、布製バフを取り付け固形ワックスを塗る。

木の実を一つずつ指先でしっかり持って、高速回転するバフに押し当てて「つや出し磨き」をする。

一つ仕上げるのに1分以上かかり、指先もバフに触れて痛めることが多く、大変な作業だった。

バッファーを導入する以前は完全な手作業であったことを考えると、少しは近代的である。

2)バッファー以前の木の実の磨き(昭和30年代初期)

磨き台

約25cm×12cm位の木材に釘で丈夫な布を固定し、磨き台を作る。



磨き粉での下磨き

磨き台の布の中心を水で湿らせて、クレンザーなどの磨き砂を少量置き、指先でしっかり持った椿の実を何回も往復させて表面を滑らかにする。(下磨き)


ワックスでの本磨き

下磨きをした実を洗って乾かしてから、建築用の白木用ワックスなどを塗った別の作業台で同じように磨き、つやを出して仕上げる。(本磨き)

左:拾った実 中:下磨き後 右:本磨き後

これらの作業を機械化して大量生産が可能なように、大変な苦労と工法が考えられたものである。

様々な試行錯誤を経てようやく次のような作業工程が確立された。

3)木の実の乾式研磨機によるつや出し磨き

中磨きの後、乾燥させた木の実3kgを木製回転ドラムにいれ、3~5mmくらいの大きさのクルミ殻のチップ5kg、クリーム状のワックス(アモール油と呼ばれていた)を加えて、適度な速度で30時間ほど回転させてつや出しをする。それぞれの木の実の状態が異なるため、多くの経験を要する極めて慎重な作業であった。

仕上がりはバフ仕上げと同様に、木の実の肌を生かし、自然の風合いで上品な感じのものとなった。

研磨機は「斜め回転式」と「横型回転式」があり、当方では横型回転式を使用していた。これらは各自がそれぞれ工夫した手作りのものであった。

「選別」「荒磨き」「中磨き」「つや出し磨き」の工程を経た木の実は、一つずつドリルで穴をあけ、糸でつないでネックレスを、また金具を取り付けてキーホルダーやブローチなど、様々なアクセサリー・小物として製品にされる。

現在では合成漆塗料での塗装仕上げが主流となったため、つや出し磨きでの製品は稀少となってしまったが、自然な風合いを好まれるお客様への需要は多く、絶やしてはならない工法の一つと考えている。