▼「荒磨き」の作業概要
椿の実、または様々な木の実の表面のザラザラをなくし、表面を滑らかにして、つや出し、または塗装仕上げの準備をするための作業。
この作業「荒磨き」という呼び方は、始まりのときから今日に至るまで変わらずに残る。
左:荒磨き後 右:荒磨き前の実
▼歴史と詳細
昭和35年~36年頃、今まで手作業で行われていた椿の実の研磨作業の機械化が試みられた。
もちろん椿の実専用の研磨機などあるはずがなく、メッキ加工等に使われている機械が応用され、大島でも何人かの人がそれぞれの研磨機メーカーからの指導や独自の工夫により、機械や材料など試行錯誤を繰り返しながら工程を確立した。
▼「磨き」の工程
アクセサリー用に選別した形のよい椿の実、またはその他の様々な木の実は「磨き」の工程で製品化にする準備段階となる。
1)荒磨き
動力式の八角形の回転ドラムに「椿の実10Kg」「荒目の研磨石」「発泡性研磨剤」をそれぞれ投入し、水を適量加え、何時間か回転させる。
これは木の実の表面のザラザラをなくし、実の表面を滑らかにするもので「荒磨き」と呼ばれていた。
2)中磨き
これを取り出し水洗いをして、次に「やや細かい研磨石」「研磨剤」を使って同じように何時間か研磨した。これは「中磨き」と呼ばれた。荒磨きで不足の面を補い、次のつや出し磨きをしやすくするためである。
研磨石約10Kgと発泡性研磨剤を使うので、いずれもとても手間と労力のかかる作業であった。
▼新しい荒磨きの工法
ある時期に、同業者であり友人でもあった志村良三氏と私で1での「荒磨き」の作業を単純化するように工夫し、次のように行うようになった。
回転ドラムに椿の実10Kgと「磨き砂」、水を加えて回転させる。
実と実が互いに擦れあって研磨ができるというもので(共摺り)、仕上がりもよいものであったため、中磨きを省略し、仕上げの工程に入ることができる。
当工房では、現在もこの方法であらゆる木の実の荒磨きは行われている。