第5回応用可積分系若手セミナー


参加希望者へのお願い:施設利用の都合上「参加者リスト」が必要のため、お手数ですが2月27日(水)までに三木 (hmiki at mc-jma.go.jp) まで参加のメール連絡をお願いいたします。

講演1 (13:30–15:00)

講演者

長谷部高広(北海道大学大学院理学研究院)

題目

非可換確率論入門

概要

非可換確率論では行列などの非可換な対象に対しても確率論が適用できるように拡張する.このとき「独立性」をいかに定義するかという点が興味深い問題となる.実は,自然な「独立性」が複数知られている.特に「自由独立性」という概念の研究が進んでおり,ランダム行列や(対称)群の漸近表現論への応用が見つかっている.講演ではこれらに関する入門的な話をする.

講演2 (15:10–16:40)

講演者

瀬川悦生(横浜国立大学大学院教育強化推進センター)

題目

量子ウォークから誘導されるセルオートマトン“もどき”

概要

量子ウォークは離散空間上をユニタリ作用素が離散的に時間発展する量子モデルである。線形的にユニタリ作用素で時間発展し、最後に存在確率をとるときに、ノルムの二乗をとる操作のために非線形な操作が加わる。量子ウォークの研究では、この各時刻での存在確率を与える分布の列について研究が盛んに行われている。一方で、この講演では存在確率を求めるときに、その複素数の状態のノルムの二乗をとって情報が失われる偏角の列に焦点を当てる。より具体的には一次元格子上の量子ウォークを考え、ユニタリ作用素、初期状態を実数にとる。すると各時刻と場所で正の値をとるときには黒、0か負の値をとるときは白く塗ると、前の時刻の周辺のセルの色の配列に応じて半分だけ決まる、セルオートマトンもどきになり、奇妙な模様がでる。実はこの量子ウォークの偏角の模様の解明は未解決である。

奇妙な模様ができること以外でこの問題に興味を持つ理由は、Grover walkと呼ばれる特別な量子ウォークの時間発展作用素のn乗の正台のスペクトルが、グラフの同型判別に有用であることが、特に強正則グラフで、示唆されているためである。そして実は、このn乗の正台を与える構造定理が、時刻nでの先ほどの量子ウォークの偏角の模様を調べれば、与えられることになっている。そしてこのn乗の正台から誘導されるゼータ関数(n=1のときはIhara's zeta function)を求めることができ、非自明なゼロ点の台を記述できる。本講演ではこの周辺について詳しく説明する。

[1] N. Konno, I. Sato and E. Segawa, Phase measurement of quantum walks: application to structure theorem of the positive support of the Grover walk, arXiv:1801.06209.


世話人

    • 三木啓司(気象大学校)