セミナー2019

実務セミナー「資料管理の現場でデジタルアーカイブを位置づける」を開催しました。

おかげさまで定員オーバーの大入り満員の大盛況でした。

このセミナーでのレジュメなどは下のほうにアップしています。ご利用については著作権法の定めに従ってください。

また、エル・ライブラリーのスタッフ・森井雅人が参加記を書きましたので、掲載します。写真はいずれも森井雅人撮影。

(記録は労働資料協事務局長 谷合佳代子〈エル・ライブラリー館長〉)

主催: 社会・労働関係資料センター連絡協議会、東京大学経済学部資料室

日時: 2019年6月22日(土)13:30-17:00

場所: 東京大学大学院経済学研究科学術交流棟(小島ホール)第二セミナー室

参加者:40人

<趣旨>

現在、図書館やアーカイブズの所蔵資料において、デジタル・メディアが大きな位置を占めつつあることは、誰もが認めるところでしょう。ボーンデジタルメディアの収集や、旧来メディアのデジタル変換・公開といった取組の事例は多く紹介されています。しかし、資料管理の現場の視点からすれば、デジタル・メディアは、あくまで所蔵資料の一部をなすにすぎず、肝心なのは、所蔵資料の管理全般において、デジタル技術を如何に有効に活用するかであるはずです。

本実務セミナーでは、まず、様々なタイプのデジタルアーカイブ作成実績をもつエルライブラリーの事例を参照しつつ、デジタルアーカイブの教科書的な知識と課題を共有します。次に、東京大学経済学図書館の取組から、特にモノ資料のデジタル化という部分に焦点を当て、資料管理全体におけるデジタル化の位置づけについて、その大枠の考え方、システム構築にいたる経緯、技術的なポイントを明示します。これを通じて、参加者が、デジタルも含めた資料管理の在り方を考え直すことを狙いとします。

<参加記>

図書館やアーカイブズの所蔵資料において、デジタル・メディアが徐々に増えてきました。従前のメディアのデジタル変換・公開の実例はいくつかありますが、あくまで所蔵資料の一部にすぎないデジタル・メディアをいかに有効活用するかについてのレクチャーが、6月22日(土)に東京大学経済学部資料室で開催されました。

まず、当館・谷合館長がさまざまなデジタルアーカイブ作成事例を説明して、デジタルアーカイブの入り口的な知識と課題を共有しました。これにはモノ資料のみならず、労働・産業映画フィルムのデジタル化や、労働組合旗、運動当事者のオーラル・ヒストリーの取り扱いも範囲に入っています。

次に東京大学経済学部資料室のモノ資料のデジタル化にポイントを置き、資料管理全体におけるデジタル化の大筋の考え方、システム構築運用にかかわる考え方、技術的ポイントを例示していただきました。

この後、デジタル資料の撮影の実演レクチャーがありました。こういう撮影は専門業者に委託するという先入観がありました。東京大学経済学部資料室では写真撮影のスキルをもった人を支援職員として受け入れ「直営」に準じた形で運用していることがわかりました。私自身、当館のボランティアスタッフになる前にメーカーに勤務しており、業務で供用している下水道内のカメラ調査の提案や仕様書作成に従事しましたが、映像資料は「仕様書」どおりに必ずしも進まない「特記」的ケースは場合によっては多く発生し、その都度発注者と協議して進めました。

おそらく、東大で「直営」(内製)で運用しているのはシステムメーカーの「現場」にそのような臨床例をどう次に活用するのかという視点が欠けていて、その結果研究者がアーカイブ作業をていねいにケース判断し、運用されていることだと推測しました。(エル・ライブラリー ボランティア司書・森井雅人)

左の写真は撮影室の見学光景。岸さんによる撮影実務の説明。

<セミナー次第>

13:30 開会の辞:東京大学経済学部資料室

労働資料協代表幹事挨拶:鈴木玲(法政大学大原社会問題研究所所長)

13:35 第1部

講義「デジタルアーカイブ入門:歴史と課題」

報告「エル・ライブラリーの事例から教訓を学ぶ 労働組合旗、労働史オーラルヒストリー、産業映画フィルムのデジタル化について」

講師:谷合佳代子(エル・ライブラリー〈大阪産業労働資料館〉館長)

14:25 第2部

講義「東京大学経済学図書館の蔵書管理におけるデジタル化の位置づけ」

講師:矢野正隆(東京大学経済学部資料室助教)

14:55 休憩

15:00 第3部 見学:東京大学経済学部資料室の撮影室(3班に分かれる。休憩あり)

15:30 第4部

講義「東京大学経済学部資料室における撮影システム構築の考え方」(30分)

講師:小島浩之(東京大学経済学部資料室講師)

ワークショップ「資料のデジタル撮影のポイントと注意点」(40分)

講師:岸剛史(東京大学経済学部資料室学術支援職員)

実習+質疑「デジタル化のプロセスについて参加者と考える」(30分)

講師:矢野正隆(東京大学経済学部資料室助教)

17:00 閉会の辞 鈴木玲

17:30 懇親会(近隣の飲食店にて)