睡眠時無呼吸症候群のお話
【睡眠時無呼吸症候群】
2003年に山陽新幹線がオーバーランをするという事故が起きました。
理由は運転手の睡眠時無呼吸によるものだということがわかりました。
その後、運転手の事故が睡眠時無呼吸によるものという報道が繰り返される度に、睡眠時無呼吸症候群は眠い病気であることが国民に伝えられていきました。
Q1.睡眠時無呼吸症候群は眠い病気なのでしょうか?
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が停止する病気です。
この結果、睡眠の質が低下し様々な症状を引き起こします。
代表的な症状
1.大きないびき
2.睡眠中に呼吸が停止(急に静かになる)
3.中途覚醒(トイレに起きる、息苦しくて起きる)
4.起床時の熟睡感不足、頭痛
5.午後の眠気
6.車の運転中の眠気
A1.眠いとは限らず、他の症状のことも、症状が無いこともあります。
Q2.どうして睡眠時無呼吸を起こすのでしょうか?
A2.咽頭周囲の筋力低下、肥満、咽頭の狭小化、口呼吸などによる気道閉塞が原因です。太っているとは限りません!
Q3.とくに症状が無ければ大丈夫ですか?
睡眠時無呼吸症候群には様々な合併症があります。
代表的な合併症
1.高血圧症
2.糖尿病
3.高中性脂肪血症(脂肪肝)
4.脳梗塞
5.心筋梗塞
6.不整脈
などが指摘されています。
小児では発育障害を起こすことが報告されています。
A3.症状が無くても睡眠時無呼吸は放っておいてはいけない。危険です。
Q4.どうやって検査するのですか?
睡眠時無呼吸ですから、睡眠中の無呼吸を検査します。
簡易睡眠検査という自宅で測定できる方法があります。
しかし、睡眠学会や循環器学会は、原則としてポリソムノグラフィ(PSG)を行うことを推奨しています。
夜間の睡眠検査を一晩泊まりに来ていただきます。
① 総合病院では小回りがきかないので、2日がかりになるが、
当院のような診療所では、夜に入院し翌朝退院できる。
② 診療所レベルでポリソムノグラフィを行っているのは、
埼玉県北部では当院しかない。 といった実情があります。
A4.ポリソムノグラフィ(PSG)検査を受けることが重要です。決して簡易睡眠検査で決めつけないでください。
Q5.ポリソムノグラフィ(PSG)検査の結果について教えてください。
ポリソムノグラフィでわかることは、
睡眠についてすべてわかります。
① 睡眠中の無呼吸回数 (睡眠時無呼吸には重要)
② 睡眠中の脳波 (脳からみて睡眠が良くとれているか)
③ 睡眠中の心電図 (不整脈や狭心症が発生していないか)
④ 睡眠中の胸や腹の動き(中枢性無呼吸があるのか)
⑤ 睡眠中の行動障害 (夢に関連した行動障害や足の異常な動き)
などを測定します。
睡眠時無呼吸には①の無呼吸回数に注目します。
1時間あたりの無呼吸回数が、
5〜15回 軽症
15〜30回 中等症
30回以上 重症
となります。
A5. 1時間あたりの無呼吸低呼吸の回数が重要です。
Q6.重症だった場合の治療を教えてください。
日本では重症の場合、CPAP療法が推奨されています。
具体的には1時間あたりの無呼吸低呼吸回数が20回以上が保険適応です。
寝ているときに、マスクを鼻に当てておきます。
CPAP装置から風圧がでて呼吸状態を監視します。
本人がすやすやと眠れているときはすべて自分の力で呼吸をします。
気道が閉塞し呼吸が出来なくなったときに、CPAP装置の風圧で風船を膨らませるように気道の狭窄部位を含ませて閉塞を解除します。
その結果、無呼吸が消失した場合、症状や合併症が治癒します。
重症の方は「最初は嫌だと思ったが、実際に使ってみると調子がよい」という方が多いのです。
A6.重症の場合、積極的にCPAP療法をしましょう。最初は大変そうだと思いますが、治療するととても調子がよくなります。
Q7.重症の睡眠時無呼吸なのに治さないとどうなりますか?
睡眠時の無呼吸が1時間あたり20回を超えてくると死亡率が増えてくることが示唆されています。
予兆は、眠気や慢性疲労、高血圧症、糖尿病、脂肪肝、心筋梗塞、脳卒中です。
突然死も少なくないので注意が必要です。
A7.重症の場合、リスク軽減、突然死回避のために、積極的にCPAP療法をしましょう。
【睡眠検査の流れ】
1.まずは簡易睡眠検査かPSG検査かの相談をします。
心配せずに来院してください。
2.PSG検査の場合、一泊検査のスケジュールを相談します。
当院では、夜に入院し、朝に退院という方法をとっています。
夜は18時までに入院し、朝は5時以降はいつでも帰宅可能です。
3.1〜2週間後に結果が報告されます。
睡眠時無呼吸症候群だった場合は、
1時間あたりの無呼吸低呼吸が20回以上では、CPAP療法
1時間あたりの無呼吸低呼吸が20回未満では、マウスピース
になります。
小児は耳鼻科で手術をしたり歯の矯正をしたりします。
4.CPAP療法になったら
機械の使い方、マスクの使い心地を確認しながら行います。
マスクの種類は何十種類もあります。
機械の風圧の設定も様々です。
使いやすくなるまで睡眠検査技師が設定や調整を行います。
5.マウスピースになったら
歯科で製作します。専門の歯科医へ紹介いたします。
6.耳鼻科治療になったら
小児では、アデノイド切除や扁桃切除をすることが多いです。
入院になりますので、総合病院耳鼻科をご紹介いたします。
7.CPAP療法の通院の仕方や費用など
診察と機器代で、毎月5,000円弱(3割負担)の費用がかかります。
8.再PSG検査について
CPAP療法を開始したら、3〜6ヶ月後に再入院で確認します。
定期的な検査入院は、3年に1回を目安に行っています。
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青木 康弘
診療科 呼吸器内科
・・・・睡眠呼吸障害・COPD・抗酸菌症
学位 医学博士(群馬大学大学院)
専門 総合内科専門医
呼吸器専門医
睡眠医療認定医
プライマリ・ケア認定医/指導医
結核・抗酸菌症認定医
肺がんCT検診認定医