臨床薬物動態のパラメータとその特徴、決定因子を薬物ごとに掲載し、有効成分(一般名・英語)をアルファベット別に分けて掲載した。
【PKパラメータ】
原則、健常人を対象として実臨床での投与量を静脈内投与したデータ、もしくはそれに準じたデータを基本とした。しかしながら、健常人のデータが得られない場合はその旨を備考に記載することとした。
体重は60kg、体表面積は1.6 m2を標準値として、/kg、/m2のパラメータ値は絶対値に変換した。
情報源
パラメータ値を収集するために用いた資料は、対象薬剤のインタビューフォーム(以下、IFと略す)とした。IFで収集できなかった場合は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下、PMDAと略す)のホームページにおける「医療用医薬品情報検索(http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)」にて公開されている製造販売承認時の審議結果報告書及び申請資料概要を資料とし、これらから収集できなかった場合にはPubmed(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed)による文献検索を行い、静脈投与後の薬物動態パラメータ値が収集できた論文とした。これらの情報源から静脈投与後の薬物動態パラメータ値を収集できなかった医薬品の一部は、緒方宏泰編著、臨床薬物動態学(1)・付表(http://pub.maruzen.co.jp/book_magazine/rinsho_yakubutsu/fuhyo/)丸善(以下、CPKと略す)に記載された値を引用した。
【特徴づけ】
以下の表にしたがって、各パラメータの特徴づけを行った。
Vd、CLX、EXはB/P値で補正して特徴づけを行った。補正したVd、CLXおよびEXをVd’、CLX’あるいはEX’と表現した。
Vd(b) = Vd(p) / (B/P)
CLX(b) = CLX(p) / (B/P)
EX = CLX(b)/Q(b)
Vd(p)、CLX(p)は血漿(血清)中総薬物濃度を用いて算出されたパラメータを示し、Vd(b)、CLX(b)は全血液中濃度に基づいて算出されたパラメーラを示す。Q(b)は全血流量を示す。
CLx’、Vd’が判断基準よりやや大きい場合や、やや小さい場合は、例えば、「大概、消失能依存型を示す」などと記載した。
B/P値が得られなかった場合は、B/P値に0.5(最小値)を用いて計算し、Vd’<20Lの場合はSmallとし、20L以上の場合は特徴づけできないとした。同様に、EX’<0.3の場合は、Capacity Limitedとし、0.3以上の場合は特徴づけできないとした。
血漿(血清)中非結合形分率は以下の式で全血中非結合形分率(fuB)に変化することが可能であるが、fuBの変化率とfuPの変化率は同一となるため、薬物の全血液中非結合形分率に基づく薬物動態の特徴付けは血漿中非結合形分率(fuP)の値に基づいて行うことができる。
fuB = fuP / (B/P)
【各パラメータの決定因子】
総薬物濃度に基づくパラメータの決定因子と非結合形薬物濃度に基づくパラメータを特徴づけに基づいて特定した。
パラメータ値が得られないために特定できない場合は記載しなかった。
Binding insensitiveの場合においても、決定因子にfuBを含めて記載した。
分布容積
分布容積は以下の式で表すことが出来る
Vd = Vp+VT(fuB/fuT)
Vdの特徴づけよりそれぞれの決定因子を以下の通り特定した。
臓器クリアランス
臓器クリアランスは以下の式で表現することが出来る
CLX=QX・fuB・CLintX/( QX+fuB・CLintX)
Aeによって臓器クリアランスの値を特定し、その値に基づいて、臓器クリアランスの決定因子を特定した。
ここで、QXは臓器Xの血流速度、CLintXは臓器Xの固有クリアランスを表す。
経口クリアランス
肝代謝型薬物の経口クリアランスは、抽出比を問わず、CLpo=fuB・CLintH/Faとなる。
該当薬物の投与経路が経口以外の場合は、それらに応じたクリアランス(皮下注投与後のクリアランス;CLsc、筋肉内投与後のクリアランスCLimなど)を記載した。
消失速度定数
CLおよびVdは上記の決定因子を用いて、kel=CL/Vdより決定因子を推定した。
半減期
CLおよびVdは上記の決定因子を用いて、t1/2=0.693・Vd/CLより決定因子を推定した。
臓器障害時のそれぞれの決定因子は、健常人において腎排泄型あるいは肝代謝型であってもCLHとCLRともに考慮に入れて推定した。
2017年6月20日 改訂(第2版)
2017年10月23日 改訂(第3版):fuPに関する記載を改訂