ゲーム時脳活動

研究詳細(Research Details)

3.熟達度を視点としたテレビゲーム実施時の脳活動の分析

近年,日本のゲーム産業は,他国に勝る一大産業として,重要な位置を占めるに至っています.

それに伴い,ゲームによるヒトへの影響の調査・分析は急務となっています.

「ゲームプレイ中に,前頭前野の脳活動が低下する」という研究報告もなされており,

やる気の低下,少年犯罪などの社会問題の原因として,ゲームが取り上げられるケースも少なくありません.

しかし,一概に「ゲームは悪」と決めつけるのは早計だと考えています.

脳活動が低下するのであれば,その要因を精緻に分析する必要があります.

プレイヤの年齢や性別,熟達度,嗜好や没入度合いによっても,「楽しみ方」は千差万別でしょう.

研究紹介の中で,自然な(人間らしい)COMプレイヤとの協力プレイ(または敵対プレイ)することが,

ゲームにおいて人間プレイヤに「楽しみ」を提供することにつながる,と言いましたが,

本当に「人間プレイヤが楽しみを感じているか」を評価することは簡単ではありません.

そこで,本研究では,人間プレイヤのゲームに対する「楽しみ」を,

「ゲームプレイ時の脳活動」に着目し,定量的に評価することを目標にしています.

その初期検討として,対象となるゲームの「熟達度」に着目し,脳活動計測を実施しました.

関連研究における「熟達度」は,初心者と経験者,として区分されることがほとんどですが,

本研究では,経験者を超越した存在(神の領域)として,「熟達者」を設定しています.

  • 熟達者:対象ゲームの全国ランキング上位入賞者.

  • 中級者:関連研究の経験者相当.日常的にテレビゲームを実施し,対象ゲームを1週間訓練.

  • 初心者:普段からテレビゲームを実施せず,対象ゲームは未経験.

ゲームジャンルとしては,

縦スクロール型シューティングゲーム(画面が上から下にスクロール.飛び道具を用いて敵機を撃ち落とす.),

リズムアクションゲーム(ボタン操作により楽曲を演奏する.)の2つで実施しました.

実験の結果,熟達者においては,熟達したゲームの実施時に,前頭前野の脳活動が上昇するという結果が得られました.

これは,「ゲームプレイ中に前頭前野の脳活動が低下する」という従来の研究結果と反するものであり,

ゲームにおける「楽しみ」の分析には,ゲーム要素や被験者条件をより精緻に検討する必要があることが示されました.

また,ゲームの「楽しみ」を評価するための一手法として,脳活動計測が有用であることが示唆されたと言えます.

<関連する研究業績>

  1. 八田原慎悟・藤井叙人・古屋晋一・風井浩志・片寄晴弘,「テレビゲーム熟達者の脳活動に関するケーススタディ」,『情報処理学会論文誌』,情報処理学会,Vol.50 No.12,pp. 2782-2795,2009/12/15[DOWNLOAD]

  2. 八田原慎悟・藤井叙人・長江新平・風井浩志・片寄晴弘,「熟達度を視点としたテレビゲーム実施時の脳活動の分析」,『情報処理学会論文誌』,情報処理学会,Vol.49 No.12,pp. 3859-3866,2008/12/15 [DOWNLOAD]

  3. Shingo Hattahara, Nobuto Fujii, Shinpei Nagae, Koji Kazai, Haruhiro Katayose, " Brain Activity During Playing Video Game Correlates with Player Level", International Conference on Advances in Computer Entertainment Technology 2008 (ACE 2008), pp. 360-363, Keio University Japan, 12/2008 [DOWNLOAD]