12月29日(火) SlingShot (2014)

Post date: 2015/12/30 2:57:18

Netflixにて,SlingShot (2014)を見る.この映画は,Segwayの開発者Dean Kamenを取り上げたドキュメンタリー映画である.

映画のタイトルのSlingShotは,Dean Kamenが開発している水の浄水装置の名前からきている.Dean Kamenは日本では有名ではなく,自分も知らなかった.しかしその人物像に迫ることは,アメリカのテクノロジーベンチャーや発明家の考えを知ることにつながり,それらを参考にしたい人には価値があることである.

主力事業

Segwayを除いては,次の3事業に力を使っている.

  1. 自宅透析用のMedical Device
  2. FIRST (For Inspiration and Recognition of Science and Technology)元祖ロボコン
  3. Slingshot (Water Vapor Distillation System)浄水システム

それぞれ深い哲学に裏付けられていて,実施されている.各事業の必要性と波及効果は,明確に説明されている.そのため実施している事業には,こちらから協力したくなる.Deanはこれらを説明する高い能力を持っている.

世の中の必要性から出発して大きな問題を解決しようという姿勢,世界をよくしようという姿勢は,工学部の教員として学ぶべき点が多い.

それぞれのスケールも大きくて,自分も同じぐらいはできるのではないかと錯覚できる.少なくとも与えられた環境に不満を言うのではなく,実際には取れる手段が多いのと気がつくことができる.

それぞれの事業がおさえているポイント

アメリカに来てからも思うけれども,大きな波に乗って事業が急拡大するものは,必ず人間の需要を捉えた技術になっている.その需要を知るには,世間一般のことも広く知って,伸びるポイントを押さえる必要がある.そのためには技術動向だけにフォーカスしていたのでは,不足している.

もし世間の動向に反していれば,先細りしたり,使われないという結末に至る.開発した上で使われないのは勿体ないので,それはできるだけ避けた方がよい.避けるためには予め,世間の動向も把握しつつ,大きくなる分野に集中投資しないといけない.

以上の点は従来の日本の工学教育には,どちらかというと欠けていた視点である.最近では技術経営も教えられているけれど,卒業に必須というわけではない.アメリカの工学が強いのは,需要から出発して技術を提供するという基本を押さえているからではないだろうか.

順風満帆ではない人生

Dean Kamenは順風満帆だったというわけでもない,ということも興味深い.

①識字障害(Dyslexia;学習障害の一種)である.そのため学業成績は優れず,先生から話があり,親が心理学者に相談したこと.

②達成には代償(Compensation)が必要であり,子供を持たないことに決めたこと.

③人種差別的な行為があり,自転車を乗るなといじめられたが,負けなかったこと.

④SlingshotのDistributerが簡単には見つからなかったこと.最終的にはコカ・コーラ社と提携するまでには,色々なところに出向いている.

が印象に残っている.

技術が好きな人には,オススメの映画である.といっても日本で見るのは,Region 1のDVDの輸入が必要であり,簡単にはいかないようである.アメリカにいてNetflixにあったから見れたが,日本にいたら見ることができなかった動画の1つである.