名越裕子さん

投稿日: 2011/06/11 17:26:16

「ミスコンがない」という事実は、ICU生だった頃の自分にとって、軽く言えば〝ICUの好きなところ〟の一つであり、もっと言えば〝ICUをICUたらしめている基本理念の一つの顕れ〟であり、どちらにしろ、当時からその〝不在〟を非常に意識し(そして歓迎し)ていたことでした。

今、ICU祭でミスコンを行うという話を聞き及び、そのバックラッシュ(と言うより現在進行形の世間的風潮へのおもねりか)を大変残念に思うと同時に、一関係者として見過ごせないものと考え、本共同声明に賛同します。

ファッション・料理・プレゼン等を基準にするという噂も聞きましたが、「顔とスタイルで判断するんじゃなければいいだろう」程度の認識なのでしょうか。問題は、何かを基準として「ミス」の名の元に女性の〝あるべき姿〟を規定しようとする態度そのものにあるのです。(世界の様々な「ミスコン」でも、実態はどうあれ容姿以外の基準項目を設けています。)

ファッションや料理やプレゼンのコンテストをするなら、「ミスコン」などという名前を付けずに、性別問わず参加者を募り「ファッションコンテスト」や「料理腕比べ」「プレゼン大会」をすれば良い。女性、男性、あるいは日本人、○○人…何でもいいですが、わざわざそうした属性で他者のアイデンティティを区切り、そこに〝望ましい〟とされる基準→価値観を付与していく、同時に、そうした枠組みに収まらない(と感じている)人を無意識的であれ排除する行為=ミスコンが、能力テストとは全く異なる問題を孕んでいることに、何故企画者は気づかないのでしょう。

個人の資質の問題と考えるべきかもしれませんが、ICUの教育や入試形態の変化も影響しているのだろうか、と憂いたくなる事態だと感じています。