Post date: 2020/01/19
Keywords: 心理統計、因子分析、主成分分析、JASP
2017、2018年頃から統計ソフトJASPを使っています。
JASPはフリーのGUIに優れた統計ソフトで、Rが裏で動いているものです(いずれRのコードを見えるようにしたいらしいです)。特にベイジアンアプローチを気軽にできる点も良く、Rを自在に使いこなせない、周囲に相談できる環境が少ない僕にはありがたいソフトです。ちなみに、JASPと似たGUIで、Rに接続しやすいものとして、似たGUIのJAMOVI というのもあります。これはベイズは非対応です。
JASPは2018年の日心でWSも開催されました(未参加)。
最近、JASPで因子分析・主成分分析を行っていて確認したことをいくつかメモしておきます。
SPSSでは主因子法が最初に来ていますが、近年では最尤法が主流です。教育・心理統計で非常に勉強になる「外国語教育研究ハンドブック(竹内先生・水本先生、2014)」でも、最尤法を取ることで因子数決定の際に適合度指標を利用できると推奨されています。またNCNPの奥村先生の「中級者による初心者のための探索的因子分析」でも、最尤法と主因子法を比較して紹介しています。
さて、JASPはどうなんでしょう。
JASPは実は母数推定のオプションが見当たりません。論文書くときに困ります。
そこでJASPのフォーラムを覗いてみました。
→What matrix reports JASP in EFA?:https://forum.cogsci.nl/discussion/5004/what-matrix-reports-jasp-in-efa
最尤法でプロマックス回転をやるんだけど、JASPとSPSSで結果違うのなんで?
という質問です。
で、中の人(Erik-Jan先生)の回答は
EFA is estimated in JASP not by ML but by a procedure called "MinRes", which according to the author of the psych
package in R
produces "solutions very similar to maximum likelihood even for badly behaved matrices". This may be the source of the difference between JASP and SPSS.
という事で、JASPでは最尤法ではなく、最小二乗法を使って回転してるから、最尤法を選んだ回転とは結果が変わってくるよ、とのことでした。
因子数・成分数の決定基準では、一般的なものはカイザー基準(固有値eigenvalue 1オーバー)やスクリープロットの傾き。
JASPでも選択できますが、デフォルトになっているのは、Parallel Analysisと呼ばれるもの。JASPで初めて知りました。定訳があるか分かりませんが、NCNP奥村先生の上述の資料によると
・並行分析・・・最も優れた因子数決定法。実データと同じ観測変数の数と同じ標本サイズの乱数データをn個作成し、各乱数データから固有値を算出した上で、実データの固有値>乱数データの固有値となる最大固有値番号の因子数とする、
と解説がありました。
なるほど、確かにJASPのスクリープロットには、シミュレーションデータによるスクリープロットが重ねて表示されます。そういう意味だったのか。(実データの傾き、見にくい)とか思っててすみませんでした。
へー。
近年の心理統計の発展が著しいので、院生の方は指導教員によってはスクリープロットや固有値で出した方が話が通じると思います・・・
ちなみに、竹内先生・水本先生のおっしゃる適合度指標RMESA(<.08)もJASPは計算してくれます。
Descriptive の中にありました。因子分析のオプションをいくら探しても出てきません。
以上