ペルム紀-三畳紀境界大量絶滅事変における表層環境と生態系の回復過程とその相互作用の解明

約2億5000万年前のペルム紀/三畳紀(P/T)境界には顕生代最大規模の大量絶滅が起きたことが知られ,生物種の90~95%が絶滅したとも言われています.

表層環境と生態系がこの大絶滅から回復するのに500万年以上もかかったことが分かってきましたが,なぜ回復が遅れたのか,その要因は未だ謎のままです.

私は日本の付加体中に広く分布する遠洋深海性堆積物”層状チャート”を主な対象として研究を行っています.

この絶滅を引き起こし,回復を遅らせた直接要因の一つとして長期間の海洋無酸素事変(Superanoxia参照) があげられていますが,その実態は未解明でした.

未解明の要因として,この時期の地質記録が地殻変動で断片的にしか残されていないことが大きな問題でした.

そこで,私は詳細な地質調査によって各地の断片的な地層の重なり(層序)を1枚1枚つなぎ合わせることにより,回復過程の完全連続に復元しました.

その結果,長期間の海洋無酸素事変からの回復期が360万年周期の長周期な日射量変動の極小期に対応していたことが明らかになりました.

現在は,このP/T境界大量絶滅からの回復過程において,ミランコビッチ・サイクルの日射量変動が表層環境と生態系にどのように影響を与えたのか,日々研究しています.

表層セミナー:ミランコビッチサイクルと気候変動