2020年3月発行

映画のイコノロジー飛行新聞 Die ikonologische Flugzeitung des Kinos Vol.12-2


(飛行新聞 Die Flugzeitung とは、グーテンベルクの活版印刷によって宗教改革時代以降、カトリックとプロテスタント両派が宣伝合戦を繰り広げたビラに由来する。つまり現在のフライヤーのこと)


「映画のアルケオロジー」其の3の続き



これは根付です。

根付

次は日本のからくり人形、連理人形と言われるものの1760年代フランス版です。

連理人形

これは砂の移動を動力としているもの。

やじろべえ、どこにでもありますよね。

やじろべえ

こういう紙モノの動くおもちゃが後々のフェナキストスコープとかゾートロープにつながる。

ハーレクイン(英語でいたずら者)ですね、アルルカン。お決まりの衣装を着ていますね、菱形の道化の衣装。普通は人形劇で1人が演じていた。

アルルカン

覗きからくりの柄のタイルですね。

昼間の景色と夜の景色とを変えていく、仕掛けスライドで。

これが1760年代に日本に長崎から入ってくるとすぐに真似て作る。作った人がどんどん日本風の絵を発注するのが円山応挙です。応挙は絵師として覗き絵でデビューする。日本では写真鏡と呼ばれました。応挙の吉原を描いた絵で昼間の風景と、光を変えて外の光になると夜になるというような。

ルミナリエですね。都会で明かりが入るという、夜に明かりが点るという事が豊かさの象徴ですから、貧乏な人は明かりをつけられないですからね、お金がかかるから。

明かりを自由自在にするというのは権力とか富の象徴です。だからルイ14世はベルサイユに鏡の間を作ったのです。あそこでシャンデリアを点けると反射して、物凄く明るいわけでしょ、そういう意味です。光を我が物にしていることを見せつける。それで「太陽王ルイ14世」と呼ばれる。


お葬式、葬列のパノラマ本です。

これはウォータールーの戦いのパノラマです。番号がついているのは全部、誰々の何々部隊とわかるようになっています。

日本でも明治時代あちこちにパノラマ館というのがありました。見世物です。円筒形の建物があって中に入ると周囲にずっと幕があって360度見回せる。


これはテムズ川ですね。川岸の建物を全部正確に描いてある。これは川の研究というか、寧ろ河川というのは物流ですから、物流のためのものなのです。正確に両岸を描いておくと役に立つ。河川で物品を運ぶ人にとっても、河畔で商売をしようという人にとっても町の状況を見るのに非常に便利。そういう実利的なものも含んでパノラマを作っている。

これ一つ完成するまでには大変なお金と時間がかかります。出版してる訳でしょ、誰が買うのかってことです。マーケットリサーチです。テムズ川はロンドンまで来ている、言ってみれば大動脈ですから。こういうのを見ていると、パンだとかワイプなど映画の手法が既に使われているのが分かりますね。映画言語はこういうものから来る、では何からかと言えば単に娯楽からではないのです。パンして見るということは全体の状況を把握するという事です。

そういう考え方の下に、このようなビジュアル本の形が求められた。


これはヘンゼルとグレーテルです。

ヘンゼルとグレーテル

ちょうどこういうおもちゃが作られた頃にドイツではカール・マイという人が冒険小説をたくさん書いています。

当時の子供たちは誰でも読んだ。


これはアメリカの歴史物、コロンブスです。

コロンブス

これは題名がサンタクロースなのですが一度もサンタクロースが出て来ない。

サンタクロース

ネケス終わり






からくり人形と覗きからくりの映像


日本の仕掛け種板の画像を数点提示


噴水、ビン、2枚もの(扇子の開閉)、8の字にかけた糸の仕組みとどう見えるかを図版で解説。

噴水
ビン
扇子の開閉

雪が舞うもの。日露戦争の戦場シーン、奥行きがあるもの。左右の動きだけではない。

雪が舞う
日露戦争戦場

いきなり映画ができたわけではなく、プレアニメーションの段階があるわけです。


これは猿蟹合戦ですが、ストーリーが今のものとは違います。

猿蟹合戦

これは猟師が火縄を回して消えないように持っている。

猟師と火縄銃

こうした描写は中々ないです。


大嘗祭の高御座です。ご大典です。

大嘗祭高御座

猩々の種板、そろばん攻め等、昔の英雄豪傑譚です。桃太郎。

猩々
そろばん攻め等
桃太郎

日本の幻燈種板はガラスの表面に色彩、裏面に墨で描きました。光源の熱で色彩は褪せるが、塗り直しができる。墨の絵の方は細かい描線や黒字に白く毛書きしたもので描き直しが出来ないからです。


船の種板、京都の島原の花魁と禿。

船の種板
京都の島原の花魁と禿



幻燈上映

探照灯サーチライトを回転盤で回す。

下に兵隊がいて爆弾が爆発して逃げ惑う。

頭を動かし扇子を持った手や足を上げ下げして踊る。上半身と下半身の板が分かれていて動かしていく。

青空の下、帆船が波に揺れる描写の仕掛けです。