リキュール
あなたは14時に起きだして、寝癖を付けたまま満足そうな顔で私の足を撫でた。
昨日もおそくまで、ふたりで楽しんでた。
あなたはそのまま寝てしまったから、私はべたべたの体のまま、あなたの寝顔を見てたのよ。
きのうはコアントローだったから、いいけど。
あなたは下着のまま冷蔵庫を開けて、チョコレートリキュールの小瓶を取り出す。
あなたの指が小瓶を傾けると、生クリームの入ったとろとろの液体がそこから零れ落ちて、べたべたな私は満たされていく。
よくばり。朝からなんて。
私がくすくすからかうと、あなたは私の足をもって、ぐっと持ち上げた。
ああ、これ。
幸せな浮遊感で、私は甘い眩暈を感じる。あなたの息がかかる。舐めるように私の水面を嗅ぐ。
私からあなたの口内へ、リキュールが零れる。
気難し屋に見えるあなたの唇がこんなに柔らかいなんて、この世の中でたった一人しか知らない。
お行儀の悪いあなたはリキュールの粘りを感じたがって、私のふちに何度も、歯を立てないキスをする。
あの娘にそんなことしないほうがいいわよ。
あなたはうっとりした顔で、私を持ち上げ、最後の雫を舌先に落とす。喉を熱くした、猫みたいにとろけたあなたの顔。
そんな顔、とてもあの娘には見せられないでしょう。
あなたはあのショートカットの娘とキスするようになってから、唇が荒れなくなったと思ってる。
でも本当は、私にキスするようになったから。
あなたはあの娘に甘い言葉を囁いて、大人になったと思っている。
でも本当は、私に酔わされるようになってから。
あなたはこうしている間、一向に私の言葉を聞かない。前からそう。
ほんとうは叱らなくちゃいけないけど、落ちる雫を待つあなたの顔を見下ろしてると、どうしても甘やかしたくなるの。
甘くてとろとろして、喉が熱くなるの。
あんまり甘すぎて信じてもらえないけれど、本当はその一滴だけで、完璧に完成しているのね。
そういうのが好きなの。あなたもそうでしょう。