-26.残暑見舞い

1.遠縁(4500字くらい)

知らない人から

ひっそりと届いていた結婚祝い。

初夏に似合う薄緑のティーカップだった。

2.独り身(3000字くらい)

彼は思いもよらない提案をした。

――来週結婚するんだし、今夜は各自、

独身の葬式をするのはどう。

3.狐の嫁入(4500字くらい)

剥製作りの師匠である、おじさんとの思い出。

誰に言うつもりもなかった。

でも、聞いてくれるかな……。

4.甘いもの(5500字くらい)

昔飼っていたコーギーの名前は、アイス。

アイスの散歩で出会った犬好きの男の人は、

優しくて甘かった。

5.常夜灯(5500字くらい)

夢の中で次に会えたら

言えばいいと思い続けてる。

また発作から覚めて、

色鮮やかなあの人の夢を見る。

6.風鈴(4500字くらい)

咲は何度も指輪をなくす。

肌と指輪の間に、薄い夏風がすべりこむ。