【日本語教育の推進に関する法律について】
【概要】
2018年、超党派の日本語教育推進議員連盟がまとめた日本語教育推進基本法(仮称)の政策要綱(原案)の中に「海外に暮らす日本ルーツの子どもたちの日本語教育支援」に対する条文がないことをきっかけに、MHB海外継承日本語部会が法案の条文修正を求める署名活動を行い、最終的に成立した「日本語教育の推進に関する法律」には支援の文言の追加が行われました。(代表・カルダー淑子)
この運動は、2018年6月に部会メーリングリスト上で交わされた問題提起と意見交換に始まりました。それを受けて、在外の子どもの教育に関心を寄せる有志11人が連名で要請文を作成、同年7月に日本語議連に送付しました。主旨は、戦後日本から世界各国に渡航し、在住国に永住を予定する多数の子どもたちの日本語教育支援を法案に明記することを明確に求めるもので、その後、同年10月、当部会の呼びかけで、継承日本語教育に携わる世界各地の教師・保護者・研究者が立ち上がって要請文に賛同する署名運動を展開。2000筆を超える署名と500通に近い付帯意見が集まり、月末に条文の最終稿を編成中の日本語議連に提出しました。これを受け、年末に可決された日本語議連の法案には、在外で暮らす日本ルーツの子どもの日本語教育支援の条文が盛り込まれました。さらに、当部会は、この法案の国会における早期成立を求め、国内の有志組織と連携し、第二の署名活動も行いました。このような経緯を経て、2019年6月の国会で成立した「日本語教育の推進に関する法律」第3章2節19条に、海外における継承日本語教育に対する政府支援の文言が明記されることとなりました。
当部会は、推進法の成立後も、法律の目指す政策の有効な実施に向けた活動を行い、2020年4月には、公開された「日本語教育の推進に関する法律の実施に関する基本方針」に対するパブリックコメントへの投稿を呼びかけ、南米を含む世界各地の現場から多数の声を送りました。さらに、推進法の施行から5年を経た2025年の夏には実態把握のためのアンケート調査を行い、政策実行中の現在も残る現場の多様なニーズを関連省庁と国際機関の担当者に報告しています。
その活動の沿革は以下のとおりで、当部会のメーリングリストおよび当部会ウェブサイトを通して公開された記事を中心にした経過報告です。
関連:にほんごぷらっと(2018年10月18日)
日本語教育推基本法の原案修正で、海外の日本語教師らが署名活動
【要請活動の沿革】
各項目のプルダウンをクリックすると、詳細をご覧いただけます。
日本語教育推進議員連盟による法案の原案
「日本語教育推進基本法の原案」に対する要請文を日本語議連に送付
この要請文は、日本にルーツを持って在外で育つ年少者の日本語教育に関心を寄せる教師・研究者の連名で、2018年7月16日に日本語教育推進議員連盟に送付され、その全文は「にほんごぷらっと」にも掲載されました。
要請文はこちら
関連記事:にほんごぷらっと(2018年7月19日)
部会を基盤にする署名運動の開始
メーリングリスト送信日:2018/10/18
日本語教育推進基本法案に対する署名のサイトを部会のウェブサイトに開設したので、お知らせします。
この法案については、その原案が公開された後、「在外の継承語学習者に対する配慮が欠けている」という声が各地の先生や学校関係者から上がり、7月末に部会の代表者らが要請文を作成して日本語教育振興議員連盟の主要議員に送り、「当方の主張は理解した」という返答を得ています。しかし、在外教師や現場の支援者の要請に沿った具体的な法案の改定が行われるかどうかはまだ不明であり、この秋の国会に上程を予定されている法案に対し、部会のグループメールには「署名をまとめて議員に送りたい」という強い思いも届いています。
この署名サイトはこうした各地の声を議員連盟に送り、法案に対する在外教師の要請を伝えるツールとするもので、法案が国会を通過するまで続けます。方法としては議連に送付済みの上記「在外教師からの要請文」に賛同される方の署名をお願いするもので、各地の状況や個人の思いを議連に伝えるために、ご意見を書き込む場も用意しています。賛同される方はどうぞ下記のサイトからご署名をお寄せ下さい。頂いた署名は企画委員が管理して議連に送り、同時に日本語教育政策の関連サイト「にほんごぷらっと」の「在外教師からの声」のページにも送付して、個人情報に配慮した上で、国内外の皆さんにも共有されます。
https://sites.google.com/site/keishougo/kihonhoan(署名活動を終えて閉鎖)
この署名サイトは、部員以外の賛同者にも使って頂けますので、各地の教師会などに幅広くご紹介頂き、署名活動にご参加頂けるよう、ご自由にお声をお掛け下さい。多くの皆様の署名をお待ちしています。
関連:にほんごぷらっと(2018/10/19)
「日本語教育推基本法の原案修正で、海外の日本語教師らが署名活動」
経過報告
メーリングリスト送信日:2018/11/03
署名運動の続報をお送りしています。
前回の報告では各地からの署名が1800通を超えたことをお伝えし、記名された方のリストと400通を超えるご意見を集めたファイルを日本語教育推進議員連盟の中川正春会長代行、石橋通宏事務局次長にお渡したことをお知らせしました。その後、10月30日に馳浩事務局長に面談をし、アップデートした署名リストをお渡しし、週の後半には、国語教育と日本語教育を所轄する文化庁日本語課の専門官と、海外の日本語教育を支援する国際交流基金の事業部長にお会いし、同様のファイルをお渡しして現場の実態をお伝えする機会を持ちました。
ファイルをお渡しした議連の主要議員の反応は良く、こちらの主旨はご理解いただいたという強い感触を持ちました。お会いした政策策定にあたる方の中には、海外に永住していく日本渡来の新しい世代が多くの国々で増え続けていることや、その子供たちのための継承日本語教育の多くが、現地の保護者や日本人コミュニティーの自助努力で行われていることを「認識していなかった」と率直に言われる方もあり、とにかく多様な地域の多様な方々の声を、その実態とともにお伝え出来たことは本当に良かったと思います。
一方で、国内の教育事情を基盤に政策を作られる方々には、在外の子供たちに関わる問題は見えにくいところもあり、その点の説明にはこれからも時間をかけて理解を求めていく努力が必要だと感じたことも合わせてお伝えしたいと思います。この運動を通して、私たちが支援の対象として求めているのは、文科省認可の補習校や日本人学校を通して政府支援を受けているいわゆる「在留邦人」の子女とは異なる、現地永住予定の家庭の子供たちですが、こうした子供達の多くが通学する政府未認可の補習校の実態は全くと言っていいほど日本政府には把握されておらず、まずこの認識が必要と思われました。同時に、私たちが支援の主体として考えているのは、JICAなどを通して外務省の支援を受けている戦前に渡航された日系人の後継世代とも違う、新しい世代の渡航者ですが、このような世代間の相違も国内の政策担当者には見えづらいところがあり、私たちが現在育てている多文化、多言語の子供達は、いわば「法律の谷間」に落ち込んでいたのだと改めて感じました。
そうした中で、今回、実情を明確に説明する何よりの根拠となったのは世界各地から送られた2000人に迫る方々の署名であり、実態を仔細に書かれた400を超える意見文でした。署名を送られた方々の在住地や職種の多様さや、意見文に書かれた当事者ならではの実態紹介は、読む方を大きく動かしたもので、署名、意見の全てに目を通したという上記の方々の中には「海外で暮らす方々の子供の日本語教育にこれほどのニーズがあることを知らなかった」「胸が一杯になった」という言葉を伝えられた方もありました。その意味で、今回の法案上程をきっかけに多くの現場のご意見を集められたことは、本当に良かったと思います。海外の実情は海外の者が立ち上がって伝えるほかはないのだと、改めて感じました。
この署名運動の今後ですが、前にもお知らせした通り、日本語法案(2026年1月5日訂正:日本語教育推進法案)が国会を通過するまで継続の予定です。今回の経過からも分かるように、世界の多様な地域に暮らす多くの方々が国境を超えて一斉に立ち上がったパワーは、政策を担当する人々にも無視できないインパクトを持つもので、私たちの要請をより確実に政策に反映させるためにも、さらなる賛同者に呼び掛けを続けて頂ければ幸いです。これからも、皆様の手でこの運動の輪を広げて頂けますよう、ご報告をかねてのお願いとさせて頂きます。
MHB海外継承日本語部会
カルダー淑子
署名者リストの公開
ウェブサイト掲載日:2018/11/11
要請文に対する賛同署名者リスト(2018年11月10日時点)を公開いたしました。引き続きフォームでの賛同署名を受け付けています。
http://harmonica-cld.com/wp/wp-content/uploads/2018/11/ShomeiList20181111_web.pdf
当初「にほんごぷらっと」上で公開する予定でしたが、「MHB学会 海外継承日本語部会のウェブサイト(本ウェブサイト)」上で管理、掲載することにいたしました。なお、「にほんごぷらっと」の「ぷらっとニュース」に、署名活動に関する記事が掲載されています。(本サイトの「概要」の「関連」に記載)
議連による日本語教育の推進に関する法律案の改訂版公開
ウェブサイト掲載およびメーリングリスト送信日:2018/12/06
この12月3日に日本語教育推進連盟の総会が開かれ、「日本語教育推進法案」の改定案が承認されました。その改定案が公開されたのでお知らせします。
(12月3日付「にほんごぷらっと」記事)
http://www.nihongoplat.org/2018/12/03/日本語教育推進議員連盟が日本語教育推進法案を/
改定案(「にほんごぷらっと」サイト上に掲載)
http://www.nihongoplat.org/pdf/20181203_nihongokyoiku_susin_an-2.pdf
全文は上のURLの通りですが、私たちが要請運動の要としていた第3章2節19条の「海外における邦人の子等に対する日本語教育」の案文が次のように改定されたのでどうぞご確認下さい。
原案
「国は、在留邦人の子等を対象とする日本語教育の充実、支援体制の整備、その他の必要な施策を講ずるものとすること。」
改定後
「国は、海外に在住する邦人の子、海外に移住した邦人の子孫等に対する日本語教育の充実を図るため、これらの者に対する日本語教育を支援する体制の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。」
これは、当初の案で「在留邦人の子等」と、いわゆる駐在員の子供たちと一括りにされていた、永住者の子供たちの存在を改めて明記し、「支援する体制の整備、その他の必要な施策を講ずる」ということを明らかにした文言であり、「継承語教育」という言葉を入れていた私たちの要請文の通りではありませんが、このような結果を得たことは、私たちの署名運動の大きな成果だと思いました。ご苦労の上に署名活動を盛り上げて下さった皆様にまずお伝えさせて頂きます。
これからは、この「邦人の子孫等」が、すでに政府支援の対象になっている戦前に渡航された日系人とは異なる、現在家庭で日本語を使っている新しい渡航者の子供たちであり、その国籍も多様であることを強調しつつ、「支援体制」の枠組み設定に繋がるよう、お互いに働きかけを続けていきたいですね。
この法案の国会への上程ですが、総会に参加された人によると、閉会の迫った現在の臨時国会への上程は難しく、年頭の通常国会に持ち越されるということです。
今回の日本語議連の総会の動画が近く「ぷらっと」に掲載されるとのことで、それを見ると議論の過程が分かると思いますが、法案が国会を通過するまで、これからもしっかりと見守っていきましょう。
もう一つ、嬉しいお知らせですが、中島和子先生を中心に「バイリンガルマルチリンガル子供ネット」(BMCN)の先生方が国内における外国人就労者の子供達への母語教育の支援と、在外の子供達への母語教育(継承語教育)の支援の要請を合わせて行って下さっていましたが、そのうちの国内の就労者の子供達への支援についても、改定された法案には次のような案文が追加されました。
(第1章第3条7)「日本語教育の推進は、我が国に居住する幼児期及び学齢期にある外国人等の家庭における教育等において使用される言語の重要性に配慮して行われなければならない」
この「幼児期から学齢期にかけて家庭で使われる言語への配慮」はまさに在外の私たちの運動とも通じるものであり、理念法と言われるこの法案に、このような一文が盛り込まれたことは、大きな成果だったと思います。各方面の皆様のご尽力に心からのお礼をお伝えし、報告とさせて頂きます。
今後は上記のように法案の国会上程から通過、そしてその後には、しっかりとした実施の道が開かれるよう、見守っていきたいですね。
これからもどうぞよろしくお願いします。
カルダー淑子
日本語教育の推進に関する法律の早期成立を目指す第二の署名活動
ウェブサイト掲載日:2018/12/27
すでにお知らせのとおり、2018年12月3日の日本語教育推進議員連盟の総会で「日本語教育推進法案」が取りまとめられ、海外からの声に応える形で新しい文言が盛り込まれました。この法案は2019年1月開会の通常国会に提出される予定です。この法律について、日本語教育学会を中心に、早期国会成立を求める署名運動が始まりました。当部会としても、まずは法律そのものの早期成立を目指し、その上で必要に応じて海外からの要請を伝えていく予定です。下のページで、詳しい情報を読んで、署名活動にご参加いただけます。
Change.org:外国人の日本語教育を法的に位置付けるための法律の早期成立を求めます
「日本語教育の推進に関する法律」の成立
ウェブサイト掲載日:2019/06/22
「日本語教育の推進に関する法律」が6月21日に成立しました。法律は第198回国会で審議され、衆議院、参議院とも全会一致での可決でした。法案の内容と審議の経過は下の通りです(第198国会衆法情報|衆議院法制局より)。
法案(該当サイト:https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/housei/pdf/198hou10an.pdf/$File/198hou10an.pdf)
概要(該当サイト:https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/housei/pdf/198hou10siryou.pdf/$File/198hou10siryou.pdf)
要綱(該当サイト:https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/housei/pdf/198hou10youkou.pdf/$File/198hou10youkou.pdf)
また、日本語教育学会のプレスリリースや、にほんごぷらっとの記事(速報 日本語教育推進法が成立 「共生社会」への大きな一歩に(2019/6/21))では、法律の成立に関して、日本にルーツを持つ海外在住者について言及しています。
MHB学会 海外継承日本語部会 企画委員一同
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メーリングリスト掲載日:2019/06/22
日本語教育推進法案がようやく国会で成立しました。
ここまでの曲折を振り返ると、大きな感慨があります。
連携して運動にあたって下さった各地の皆様も同じお気持ではないでしょうか。
昨日から今日にかけて、在外の多くの有志からメールをいただき、お一人ずつにお返事を出来ずにいますが、皆様には、最後の数日に至るまでのお力添えを、本当に有難うございました。
この法案の成立は、まさに思いを一つにする世界中の方が立ち上がって下さった成果であり、この連携なしには「海外に永住する戦後渡航者の子供たちの母語教育に政府支援の拡大を!」という私たちの要請を法案に組み込む事は出来なかったと思います。
この法律が成立したことで、これまで家庭や教師の自助努力に任されていた在外の子供達の母語教育に政府支援の道が拓けたことは本当に嬉しく、記念すべきことになりました。とはいえ、多くの方が指摘されているとおり、この日本語教育推進法案は、あるべき方針を述べた理念法であり、これを現場の実態に合わせた支援の具体策に結びつけるには、何よりも現場の皆様の手による現状の紹介と、実現可能な支援策の提示が必要になります。トップダウンで日本政府から降りてくるアイデア以上に貴重なものは、現場の先生方や保護者の皆様が積み重ねてこられた知見であり、その隙間を埋める形の政府支援こそが、望まれるのではないでしょうか。この点については、別のメールでお伝えしたいと思いますが、皆様のご意見や情報もぜひお知らせ下さい。
以上の謝辞とご報告は、この運動に賛同され、署名を送って下さった全ての方にお届けしたいのですが、2000名を超える方々に一斉メールをお送りするには技術的な制約があり、まずは部員の皆様にお送りしています。それぞれのネットワークを通じて、ご賛同下さった多くの有志にお伝え下さるよう、お願いします。また日本語法案に関するこれまでの流れは、部会のオンラインサイトを管理して下さる企画委員の先生の手で、サイトの法案関連の公開ページにも掲載されていますので、どうぞご活用下さい。
https://sites.google.com/site/keishougo/kihonhoan (現在は閉鎖)
共に立ち上がって下さった各地の皆様へ心からのお礼をお伝えしたく、お送りしました。
皆様、本当に有難うございました!
カルダー淑子
署名活動の結果報告
メーリングリスト送信日:2019/11/28
部員に配信された部会年次会報告「2019年MHB海外継承日本語部会の報告と今後の指針」から関連部分を抜粋
2018年秋の署名活動に見る各地の意見
<署名活動の参加者数>
日本語教育推進法案のための署名活動は、2018年10月中旬から月末にかけてオンラインで行われ、世界各地から、合計2007通の署名が集まった。また署名サイトの自由記述欄には、489通の意見があった。このうち10月末までに届いた署名と意見の全てを日本語教育推進議員連盟の主要な議員に手渡すことが出来た。国会に上程する最終法案の作成にあたった方からの情報によると、この署名リストと意見集は法案の改正に大きなインパクトを持ったとのことである。署名者の氏名は原則として非公開だが、それを尊重しつつ、ここでは、その意見集にある要請事項に注目し、記入者の在住国と意見の概要を報告する。(署名者のうち、氏名と所属先を公開することに同意された953名のリストは、部会ホームページに掲載されている。)
<自由記述欄に書かれた意見>
自由記述欄に書かれた意見は、氏名の非公開を希望した方のものも含めて合わせて489通で、書き手の在住国は分かる範囲で次の通り。
米国(129) 韓国(56) ドイツ(45) 豪州(43) 英国(38) 日本(29) シンガポール(27) 台湾(16) 香港・スイス(各9) フランス・イタリア・カナダ(各4) ニュージーランド(3)ブラジル・デンマーク・スウェーデン・ハンガリー・ベルギー(各2)
これ以下は一国1名の署名者が13カ国(略)で、日本からの在住者が極めて少ないと思われる国からの意見もあった。
自由記述欄に書かれた意見の中で、地域を問わず最も多く出されたのは、「多言語多文化で育つ子供達はグローバル人材であり、日本政府・社会にその理解を求める」という「認知の要求」であり、同時に、「国際結婚家庭にあっても、我が子に日本語や日本文化を残したい」という親の願いも多くの意見に共通してあった。また補習校をはじめとする日本語教育機関にアクセスのない多くの地域では、日本語を話すコミュニティーを中心にして、親子教室や、学年を超えた子どもを対象とする日本語クラブ、読書会などが保護者の手で維持されており、その苦労を語り、政府支援を求める声が多かった。また、海外に永住していく家庭の背景の多様化が進み、週末の補習校においても、従来型の国内準拠の対応だけではそのニーズに応えることが困難であること、永住型の生徒に対する、より適切な教材や指導法、教師養成が必要であるという意見も出された。これらの意見の多くは上記の部会の座談会や投稿意見とも共通するものであり、同様に、海外における在住地での経験を通し、日本の言語教育政策の遅れを指摘し、改善を求める意見も少なからずあった。この署名者リストと、付帯意見集は各地の家庭や教育現場の生の声を伝える貴重な資料であり、署名運動の主旨に従い、署名者のプライバシーに配慮しつつ、今後も政策策定に直接関わる国会議員や政府関係者に手渡していく予定である。またその経過は、署名運動に参加された方々にできるだけ報告していく。
今後の要請運動の検討事項(仮案)
<要請運動の目的>
在外の多言語多文化環境で育つ子どもは真のグローバル人材であることを踏まえて:
① 現在日本語が話されている在外の家庭で育つ次世代の母語教育に政策支援の拡大を求める。
② 支援にあたっては、学習者を多言語多文化環境で育つものと捉え、その特性に配慮する。
③ この目的のため、担当官庁・在外公館・国際交流基金・現地の親や教師会の連携を求める。
<最初にすべきこと:現状把握>
① 政府支援の対象となる世界各地の永住者家庭・そこで育つ子どもの数と現状の把握
② 各地の継承日本語教育機関の現状の把握・ニーズの把握
<教育現場への政策支援:波及効果の大きいものから>
① 研究会・教師会への支援、教師・保護者のネットワーク作りへの支援
② 多言語環境の子供に知見を持つ教師の養成
現地ライセンスを持つ教師の養成(海外の教育機関における教師養成コースの開設支援)
日本からの教師派遣にあたっては多言語環境の子どもに経験を持つ教師の継続的な派遣を
③ 教材・授業案などの共有が可能なオンラインサイト立ち上げの支援
④ 家庭における母語教育への支援
現地を知る相談員の養成・親子サークル等への支援・図書の提供
<文部科学省認可補習校の政府支援に対する要請>
① 児童生徒の日本国籍の有無や永住/帰国予定による線引きの撤廃
② 多言語環境の生徒に対応する教師の養成や指導法の開発に理解と支援を
③ 義務教育相当学級のみならず、幼稚部、高等部、国際学級へも支援の拡大を
<今後の活動プラン:アドボカシーのために>
① 要請運動の主旨を継承語教育界から日本語教育界全体へ広げる
② 日本国内における多言語環境の子どもの支援者との連携
③ 「海外における日本語教育推進関係者会議(仮称)」の立ち上げ
上記③の「海外における日本語教育推進関係者会議(仮称)」は、日本語教育推進法の成立を受けて、この問題に共通認識を持つ各地の関係者をつなぐ会議の立ち上げを提案するもので、日本国内の関係者会議や有識者会議に招聘される機会のない海外の関係者の声を発信するプラットフォームの開設を目指すものである。
本報告でも述べたように、推進法の成立を受けて世界の各地域で多様な考えによる活動計画が進んでおり、こうした多くの組織や個人の声を発信する母体になることを願っている。
(部会報告・了)
ボストン国際フォーラムにおける呼びかけ
メーリングリスト送信日:2020/04/02
このフォーラムは、前年の日本語教育推進法の成立を受けて、2020年3月、同じ時期に開催予定だった全米日本語教育学会の大会に合わせてボストンで対面開催される予定でした。コロナの影響で急遽ズーム開催となり、結果的に、日本語教育関係者会議の委員、国際交流基金の責任者、在米日本大使館の広報文化担当官など、当初の予定になかった方々にも飛び入りで参加して頂くことが出来ました。プログラムは以下の通り。
ボストン国際フォーラム「海外における継承日本語教育」
①「年少者継承日本語教育と日本語教育推進法」 (中島和子)
②「日本語教育推進関係者会議に継承語教育現場の声を届ける ー政府骨子素案に基づいてー」 (カルダー淑子)
③「言語形成期前半(0〜8歳前後)の大切さーバイリンガル・マルチリンガル教育の視点から」 (桶谷仁美)
④「継承日本語教育: 教員の養成と研修」 (ダグラス昌子)
⑤「日本語教育推進法制定を受けて 教師協会の今後の検討事案」 (渡辺素和子)
⑥「日本語教師会との接点を求めて」 (⻘木恵子)
なお、MHB海外継承日本語部会は協賛として参加しました。
「日本語教育推進法の実施に関する基本方針案」に対する要請文送付のお知らせ
及びパブリック・コメント募集の呼びかけ
メーリングリスト送信日:2020/04/14
この法律の実施をめぐる政府基本方針(案)が公開されたこと、そしてその基本方針には、私たちが関心を寄せる海外の継承語教育に対する支援の具体案が少ないことをお伝えしてきました。
この「支援の具体策が書かれていない」背景には、私たち在外教師の代表者が、日本語教育推進関係者会議などに、誰一人呼ばれていないこともあると考えられます。そうした中で、この法律成立の推進者である日本語教育推進議員連盟の会合がこの4月14日に開かれるという情報が入ったため、3月にボストンでフォーラムを開いた北米の有志が発起人になって「基本方針案」に対する要請事項をまとめ、日本語議連の主要議員に送りました。本来なら世界各地の先生方にお送りし、1人でも多くの賛同者のお名前を頂きたかったのですが、時間の制約が大きかったために、国や地域単位で教師会をリードしておられる先生方に声をかけ、お名前をお寄せ頂きました。その上で要請文を日本語議連の中川正春副会長、馳浩事務局長宛てにこの週末にメール送信しました。
この要請文は、日本語教育情報サイトの「日本語ぷらっと」にも掲載されています。
http://www.nihongoplat.org/2020/04/13/海外の日本語教師の有志が日本語教育推進の基本/
<パブコメに投稿を!>
これから夏にかけては、この法律の具体的な実施をめぐる政府案が確定し、予算の折衝に入ると言われます。そういう中で、私たちに残されていることは、海外の声が少しでも多く政府案に反映されるよう、文化庁が公募しているパブリックコメントに意見を寄せることだと思います。このパブコメの送り先は次の通りです。
電子政府の総合窓口(e-Gov)
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185001098&Mode=0
文化庁のサイト
https://www.bunka.go.jp/shinsei_boshu/public_comment/92141301.html
【日本語教育推進法施行後の動き】
日本語教育推進法の施行から5年:各地の実態調査実施
メーリングリスト送信日:2025/06/13
2019年に「日本語教育の推進に関する法律」が公布、施行されて、早いもので5年が過ぎていきました。世界各地にお住まいの皆様はこの法律が施行されてから、継承日本語教育において、あるいは日本語によるサークル活動などにおいてどのような変化を感じられていらっしゃるでしょうか。
今年は、この法律の実施内容の見直しが行われる年となりました。これを機に、部会政策班では海外における継承日本語教育の実情を改めて取り上げ、子育てに携わる皆様のご意見を伺い、それをもとに政策担当の組織及び官庁にさらなる支援拡大の要望を行っていきたいと考えています。昨今の世界情勢もあり、海外における継承日本語教育への支援は、その縮小が懸念されています。このような現状を踏まえ、在外のご家庭や小さいサークルなどで奮闘されている皆様を含め、日本語教室や日本語学校、補習校などで日本語の継承に携わる多くの方々の回答を期待いたしております。
また、アンケート回答数が支援要望の成功の大きな要となります。どうぞ、このアンケートをお知り合いの皆さまにご周知いただけますようお願いいたします。
アンケートフォームのリンク:https://forms.gle/dxDQLe7nK96uDTMv6
アンケート回答期限:2025年7月8日正午まで(日本時間)
MHB学会海外継承日本語部会政策班