民法改正が成った事、最高裁向けに引用しますが、気掛かり点が散見され、これが「親が子を養育監護する」についてキチンと保障出来るものなのかについてアセスメントしてみたいと思います
離婚後も「親が子を養育監護する」とは、共同養育でないとで、当然連れ去りなどによる断絶(期間)もないことです
⑴監護者指定
まず監護者指定が残るのが気掛かりで、そもそも改正法では共同親権(共同で問題無し)とした上での"単独権"指定となるのだが、それは無用に感じ、またその要件が不明である点。不明な規律ほど怖いものはなく、自由裁量で成される点
817条の12-2(相互人格尊重)もあるが、そもそもそれならば片方指定自体不要で、日常の行為は夫々で可能なのに残った。よって、ここは日常行為ではなく、「居所指定権」が目的。養育の基幹であり、これを単独としては共同養育(監護)が崩れてしまうのに、これが解釈どころか法文化された
要件不明のまま仮に申立てとなった場合は、おそらくそれ迄の状況だけで判断され(それ以外の判断材料無し)、同居親側(元々割合が高い)になるのは確実
指定後、居所遠方へとなれば共同養育(日常)は無理で、出来ても親子交流(イベント)にシフトとなる(⇒日常の行為が残っても、意味無し)
これでは、今々要件が明らかでなく、別居親となる(住民票を別にする)側は戦々恐々といったものになっている
⑵監護の分掌
この点、共同養育の肝となる点と考えるが、今々内容が不明瞭
ここは諸説あるが、進路等の決定は共同決定事項とされているので、ここでは何かの重要事項決定権を分けることではなく、監護割合についてのことを前提とする
つまり、そもそも重要事項決定は監護事項ではなく分掌決めの対象外と考えられ、また監護事項である食事・衣服等の決定については単独OKともされている為、元から決める必要が無い
とすると、監護(割合)ということなので、それは、
『宿ではなく家⇒宿泊ではなく住む(=イベントではなく日常)』
というのが、監護であり(これが交流との差)、実際に子がそう(日常と)感じるには、例えば担当日の親が急遽家を空ける場合、スムーズに対応できること等であり、近くにいるというのは重要である
こう考えると共同養育において居所というのは重要で、子の生活を中心に考え、不備とならないよう、子も交えて一緒に決めるのが最も望ましい
繰返すが、居所につていは共同養育の在り方の基幹を成すもので、その決定は重要で、先に述べたがそれを単独で可能とする「監護者指定」には大きな懸念がある
⑶監護の定義(再整理)
①婚姻中や離婚後共同親権なら共同で行う
②「日常の監護教育」は親権者は単独でOK
③監護者が指定されると「監護教育/居所指定/営業許可」は単独OKで、非監護・親権者は妨げてはならない
改正法では上記の通りで、まず「監護教育」が②と③では違うことに気付く。③は「非日常の監護教育」となるであろうから、進路等は共同親権者であっても監護者の決め事を妨げてはならないとなる
「非日常の監護教育」、つまり重要事項決定について単独権となる
それに加えて「居所指定権」もであるから、「監護者」という名前ながら、その権限は監護の範疇を超えており、ほぼ単独の親権を持つといっても過言ではない規定になっている
監護者指定とは居所指定者指定とほぼ同義と見ていたが、精査すると、それ以上で「重要事項決定」をほぼ握れることになるようだ
現行でも、離婚前共同親権下で「監護者指定」がされると、先取単独親権状態になるが、今後、離婚後共同親権が導入されても「監護者の概念は改正後も変わらず」といった感じで驚くが(そこは維持)、それが概念どころか法文化されている
⑷居所指定権と連れ去り①
まず、連れ去りは婚姻中共同親権下で起きるが、今回の改正で「急迫の事情」であれば、避難ということで居所変更は独断で可となる
DV等が想定されるが、それも無くという場合、違法性を問いたいところだが、それはかなり大変であり、817条の12-2(相互人格尊重)があっても、それに反するとするのは大変
つまり虚偽DV等、作為的に嫌がることをしたという相手の"悪意"を明らかにしないと難しく、仮にその後DVが認められなくても、
連れ去り側が「私は危険と感じたので」とすれば、その正当防衛的な主観は否定しようもなく、緊急時の事情としてそれ以上問うのは難しい(悪意でしたと言う筈が無く)
更にそれでも正当性を得ようとする者は、今度、「居所指定権」を独占しようとしてくる動きをとるかも
⑷居所指定権と連れ去り②
単独での居所指定権等が認められると、連れ去りが正当化され兼ねなくなるが、よって以後は、連れ去り側が単独居所指定権となる「監護者指定」を求めるかもしれない
従前からある監護者指定は、共同親権改正後では、より離婚後が前提と見えるが、従前通り類推適用が成されるのかは注視したく、離婚前でも認められると、それで合法とされ兼ねない
裁判所が類推適用を認めるか否かだが、家事手続法等も併せて見る限り、従前通りかもしれない
更に今回改めて見てみると気になる建付法文もあり、結論として連れ去り側が、自身の行為の正当性を得るために申立てることは出来そう
いずれにしても、連れ去り側の主観(DVされた等)で申立てられたとして、悪意の存在は分からないので、一旦処分は認めら、監護実績を積まれてしまうおそれがあるが、これが後々DVは認められないとなっても、司法が連れ去りによって成った実態を無効として振り出しと見たり、更にはそれがマイナスと判断されるかは、今後注視であり、気になるところ
悪意の存在が認められれば、817条の12-2(相互人格尊重)で、状況を一変させられることも出来るのかもしれないが、そもそも立証するのは困難。この後策定されるであろうガイドラインにおいて、その辺りの基準がどうなるのかも注視したい
さすがに親子断絶目的が透けていれば、それは"悪意"となるのでそれは続けられないと考える
⑸親子交流
今回の法改正で、おそらくそれにより「理由なき親子断絶」は減少が見込まれるものになっている
試行面会に関する法文も入り、817条の12-2(相互人格尊重)も、かなり効いてくるところと思われる
この辺り、養育費に関するところも含め、法務省のテコ入れ狙いは、その相関性も勘案の上、この2点が大きなところだったと思われ、ある意味、思惑通りといったところかもしれない
(但し、その他関連する社会問題として、「連れ去り問題」は、どちらかというと入っていないかのようで、巧妙に練り上げられた感すら否めないのだが)
いずれにしても親子交流(=親子断絶防止)という点では前進と考えられるものであり、あとは、「子の気持ち」を利用したような、「制限」に注意したい
その辺りも改正法であれば、"同居親"は、むしろ子と"別居親"との「交流を後押しするべき」と、本質的にはなるので、その辺りでの好循環が生まれるかもしれず、期待したい
⑹同居親と別居親①(双方親権前提)
そもそも同居親と別居親はどう決まるのか?協議で決まれば良いが、双方主張した場合は裁判所でとなり兼ねず申立てとしては「監護者指定」等になるであろうか
但し、その監護者指定であるが、驚くことに折角の共同親権理念に反し、ほぼ単独親権の権限が付されるようになっており、わざわざ現行(単独親権ありき)においてすら、単なる解釈運用でしかなかったのに根拠を与える改正となっていて、単に「子と同居する方」では済まない凄いものになっており、正直、同居/別居親が生じるのは止む得ないと考えるが、建付上それでは済まないものになっている
そこは「同居親権者決め」くらいで居所自体については「重要事項決定」であるので、場所については独断ではなく、相談の上で決めるべきではないか
つまり、仮に裁判所で片方に定められても、それは「居所を自分の好きに決めて良い」という権限を付すのではなく、その先に「別居親とも良好な関係は子の利益」の趣旨に基づき居所決めの際は相談して、それを損なわないよう慎重に決めるべきと考える
この辺りであるが、法制審・中間試案では、監護者が指定されても「居所指定については双方関与する」線も示されていただけに残念であった(双方関与を良しとしない側のが通ったという形になった)
https://www.moj.go.jp/content/001385187.pdf
⑹同居親と別居親②(共同監護前提)
仮に同居親と別居親が定まったとして、その状態が共同監護状態の時、その養育費について考えてみる
現行では養育費は、親権者=権利者、非親権者=義務者とし、それを前提に裁判所では算定表を用いられるが、離婚後共同親権・監護においては、この算定表は果たしてどうなのか疑問である
例えば、監護割合が限りなく共同に近い場合、今ある算定表は適切でないように思える(権利/義務の前提が単純ではなくなる)
この辺り、そもそも現・算定表は裁判所の研究による基準であるが、今回の改正で共同親権・監護の想定、つまり今迄していなかった想定について、きちんと勘案されて、既に検討が進んでいるのであろうか?
その辺りも鑑みず、単に「同居親=親権者」という既成概念のままということになっているようでは全く改正趣旨を理解していないとなるが、果たしてどうか
つまり、今後は必ずしも「同居親だけが親権者」ではないので、それも勘案した形での見直しがされて然るべきなのだが、その辺り、見直しがされないようでは"共同監護"は裁判所としては想定に入っていないと言わざるを得なくなる。今よりも要素が増えそうということもあり、策定には、より時間を要するはずなので、既に見直しが始まってなければ、施行に間に合わない気もするが、そうした動きの情報は得られておらず、懸念される
いずれにしても裁判所の今後の動きの中で注目したい(ある意味、その見直し有無によって、裁判所が共同親権・監護の社会をキチンと視野に入れてるかが分かるかもしれない)
⑺離婚後共同親権について
既知の通り、新法でも従来通りの単独親権も残されている。
離婚後共同親権とするには、反目していては中々難しいという意見もあり、それも分かる。
そこは元夫婦感情ではなく、817条の12-2(相互人格尊重)の通り、たとえ「婚姻関係の有無にかかわらず」が肝となる。
例えば仕事関係で結婚→離婚となったとしても、そこはビジネスライクに最低限の共有は出来る訳であって、そういう割り切った関係が望まれる。そこも卵鶏の話になるかもだが「親権争い」が無くなれば、そうしたカルチャー(単独のみにつき争う一択が、そうでなければ不毛な争いと考えること)になっていくかも知れず、そうなっていけば、改正の最大効果と言えよう
親権を争うには理由が要るようになり、817条の12-2(相互人格尊重)の理念に基づけば、"原則"と考えられなくもないが、気掛かりなのは、819条中の「有害な影響を及ぼす言動の"おそれ"」との部分で、有害が「気分を害した」といった主観のみでは判断されないと思われるが、明確でもない
それはDV防止法と関連させ、その判断基準(司法)でとすべきだが、そのDV防止法のそれも本年4月施行と、どう判断されるのかもまだこれから
そして、817条の12-2(相互人格尊重)の人格であるが、本国賠で得た「子を養育監護等をする自由」というのは憲法上保障されるべき人格的利益、つまり人権となるので、余程の理由が無い限り尊重されければならず、それを左右する理由基準は決して杜撰であってはならないのである
⑻単独親権要件「有害な影響を及ぼす言動」について
国は、この曖昧とも思える単独親権要件(更には「そのおそれ」、つまり可能性があればというもの)を新法(819条)で定めたからには、きちんとした「有害性判断基準」を定めるよう集中して取り組み定めるべきである
⑼新法819条の見え方
本条は1~8項から成り、まず共同親権が可能になってるのは重要で、それを協議で決めるか、裁判で決めるかが入り組んでる
協議離婚が9割とされてるので、大半は協議で決めるのかもだが、改正によりその割合がどうなるのかは不明だが裁判所の運用がどうなるのかも影響してくるものと考えられる。そこで、7項(裁判)に注目すると、先の「有害な影響を及ぼす言動の"おそれ"」という単独親権要件が2号として入っている(1号は虐待の有無)。逆に言えば、こうした規定は「非該当であれば適用しない」という建付けなので、端的に捉えれば単独親権が例外のように見える。しかしながら、これも先にポストしたが、その「有害な影響を及ぼす言動」というのが曖昧過ぎで、更には「おそれ=可能性」で該当というのであれば、そもそも曖昧なところ「その可能性」で該当となるのであれば、「なんでも有り(適用)」となり、法文建付け云々どころではなく、原則と例外は実質逆転と成り兼ねない。よって、ここの「有害性判断(重み)」と「おそれ(可能性)」の基準がどうなるのか次第とも言えよう。こういう曖昧法文から基準が出来てくるのは、通常は判例を重ねて形成されてくるもので、つまり「裁判所の裁量」に依ってしまう(面会交流がその例)
要は本来であれば立法において曖昧さを残さない(=裁判所の裁量を狭める)よう芯を入れたかったところ、それどころか「おそれ」などと曖昧さの極みのようなものが規定されては「なんでも主張有り」が可能となってしまう。こうなるとガイドラインによる補完、それは弱いかもだが、どう示されるのか注視したい("監護者指定の要否,要件""監護の分掌の本質"も併せて)。ただ正直、それも期待薄の気もするので、その時は、新設817条の12-2(相互人格尊重)に国賠で得た「養育監護等をする(受ける)」権利(子の権利も)を関連付けて前面に出すなどし、少しでも良い結果を引出すなど夫々頑張り積上げてくしかない
まとめ①共同親権
こちらについては、グレー感もあるが、一律単独から共同となったというのは確かにある。それは権利を持つという点もあるが、それよりも「葛藤」を高めないという点でも
但し、内容が曖昧・不明瞭なのと、②で述べる「共同養育」についてが、有名無実化する可能性があり、ベースとしての共同親権が脆弱であると、本来の目的である共同養育もままならなくなり、結局そうしたカルチャーが芽生えなければ、従前とあまり変わらないと成り兼ねない(現場丸投げ→従前概念のまま)
まとめ②共同養育
こちらについてもグレーだが、まず「監護者指定」が無用。共同親権、つまり双方親権者として適格と認められるとされる中、それをする必要性や、適用要件も全く不明
つまり双方親として、子の利益に資する権利行使者として居るはずのところ、その本質的な権利義務を別途に定め、更に排他的にする趣旨迄あるのは異様。共同親権を無効化するようなおそれもあり、共同養育とは相容れない規定(従前で解釈に過ぎなかったものを明確規定したとする国会答弁にも少し驚いた。R6.4.10)
ここについては「監護の分掌」に期待したいが、こちらも具体的なところについて全く何も無く立法された。この後何か示されるものなのか注視したい
まとめ③親子断絶問題
こちららは試行面会に関する法文や、817条の12-2(相互人格尊重)も入ったことより、親子断絶の問題ついては、ある程度解消が期待出来るものと思われる
まとめ④連れ去り問題
こちらについては、ゼロ又は後退しているかもで、”急迫の事情””有害な影響を及ぼす言動のおそれ”が頗る曖昧な上、”親権行使者の指定””監護者指定”と「居所指定」が独断で可能な条文が散りばめられており、今々懸念の方が強い
その辺りの濫用は出来ない、そもそも監護者指定というのは有名無実化するという意見もあると聞いたが、つまり好き勝手はNGで他方親の意向もという事になるが、しからば、そもそも監護者の(単独)権利に入れなければ、そこは共同権になるので、それで良かった筈である
中間試案ではあった、そうとする線は無くなり、最終的に単独権利として法文規定されたのは、プロセスからしても有効化させたい為としか言いようが無い。改正に当たり、有名無実化が見込まれるものを、あえて新規定する訳もなくで、狙ってのことでしかない
この様に、新法では権限が明確にされてたりするので、権利侵害/違法性を問う難易度が、本改正により上がった感は否定できない