R3.7.21期日後報告勉強会

第4回期日後に報告勉強会をオンラインで実施しました。

実施概要は以下の通り。

<日時>令和3年7月21日(水) 16時~18時

<登壇者(スピーカー)>

・本件訴訟弁護団

 平岡 雄一 先生 (弁護士:髙津・平岡法律事務所)

 佐田 理恵 先生 (弁護士:アストレア法律事務所)

 小嶋 勇 先生 (弁護士:勇法律事務所・中央大学法学部講師)

・ゲスト①親権関係国賠訴訟代理人

 古賀 礼子 先生 (弁護士:稲坂将成法律事務所)

・ゲスト②親権関係国賠訴訟代理人

 松野 絵里子 先生 (弁護士:東京ジェイ法律事務所)

~勉強会レポート~

<本件訴訟弁護団(平岡先生,佐田先生,小嶋先生)>

①まず、平岡先生より、「裁判期日の状況説明」ということで、当日の法廷でのやり取りについて説明して頂きました。

 法廷で原告弁護団としては、原告側主張である離婚後単独親権により侵害された権利や利益について国側から認否すらなかったことを指摘すると、国側からは、「積極的な主張は現時点ではしない」との回答がされたが、ここで、それでは承服しかねるとして、更に国側からの回答を重ねて求めたところ、国側から8月末までに追加反論を出すという運びになりましたと説明を頂きました。

 次回期日は10月20日(水) 午前11時 東京地裁103号法廷


②次に、佐田先生より、「国側反論書面(第2準備書面)の説明」ということで、国側反論書面の内容に沿って、以下のようなご説明頂きました。

・原告らが主張する「自然的親子権」を「親権」と同じと歪曲してきており、論点をズラす意図が透けていること

・離婚後の父母では「適時適切な合意形成が難しく、子の利益に反する」と繰り返し主張され、現行の単独親権制度は「我が国における婚姻制度の意義」に沿うものと強引に決めつけてること

・教育権についての争点のところで、原告の文科省HPにある「自然権として親の教育権」に基づきした主張には、また反論せず、スルーされたこと

・被告が証拠出しされた水野氏の論文(水野論文)は、「共同親権制度の導入を提案するもの」と原告側から指摘したところ、同氏の別の論文を用いて、取り繕うような反論をしてきたこと

 等について、説明を頂きました。

③そして、期日報告の最後として、小嶋先生より、「原告側の反論ポイント説明」として、以下のようなご説明頂きました。

・国側は議論を、意図的に噛み合わないようにしてきたこと

・原告らの「侵害された権利や利益(損害論)」についても言及されることなく、スルーされたこと(この点は裁判所より求められた重要な点であったにもかかわらず)

【原告側の反論ポイント】

・原点に立ち戻り、訴状に基づき、再反論の文書を作成する(構成から、論点をズラされないように)。

・また「侵害された権利や利益(損害論)」について、より訴えていくことがポイント。

・更に、立法義務がいつ発生していたのかを整理・特定して、主張していくこともポイント。

 等について、説明を頂きました。

 そして、裁判長から「主張は出尽くしたでしょうか」と、終結をほのめかす発言があったことから、これは、次回は重要な局面となる可能性があるため、しっかり準備をし、決意を新たに臨むとされました。



<古賀先生>

 「訴訟の進捗状況と、主張の骨子について」ということで、ご担当されている国賠(『養育権』集団訴訟)について、スライドショーを使って解説をして頂きました。


⇒(外部動画サイトリンク) https://www.youtube.com/watch?v=sYKAiOGLV98


 そこで、国側が主張される、そもそもの「我が国における婚姻制度の意義」とは何かについてから、はじまり、現行の民法規定の立法趣旨について、根本的なところが議論において大事、曖昧であってはならないこととして、この辺りについて、約半年にも渡って被告国側に対して求釈明をし、裁判所からも明確にするようとの連絡も加わり、国側においてきちんと説明させることに注力している旨の解説を行って頂きました。

 次回期日は9月14日(火) 午後13時30分 東京地裁708号法廷

<松野先生>

 まず「訴訟の概要」ということで、担当弁護士として今年5月に提訴されました新たな国賠(『婚姻中共同親権の制度欠陥』訴訟)について、資料を基に解説をして頂きました。

 こちらの訴訟では、そもそも「婚姻別居中」という、親権は双方あるにもかかわらず、それを調整する法的手当てが何もない。つまり国側は「親権の共同行使は父母の関係が良好な場合」「父母の関係が良好かは婚姻関係に有るか無いかのみの判断」としておきながらなので、そうすると逆にここの法的手当てがないのは、その前提において無法地帯であると言っているようなものなので、明らかに相反することになる(本件訴訟等で、そう定義主張した以上、今度はこの点において説明がつかなくなる)。現状は離婚後の規定である766条を、婚姻中にも強引に適用させているが(類推適用)、不当な運用で深刻な問題を引き起こしているという解説を行って頂きました。

 次回期日は8月2日(月) 午後13時30分 東京地裁610号法廷

 また、以下の752条キャンペーン活動についてもご説明頂き、新たなアクションについて賛同を呼び掛けて頂きました。

https://www.change.org/p/家庭裁判所で別居しても子どもを父母で子育てするルールを作りたい-子どもから父母を奪わないために


<パネルトーク>

 小嶋先生,平岡先生,佐田先生,古賀先生,松野先生をパネラーとして、そのまま引き続きご参加頂き、パネルトークを行いました。

 一つ目のテーマ(パネル)としては、『婚姻関係にない父母には共同親権を認めない』『親権者を一人にすることよって適時・適切な親権行使が可能となり、子の利益となる』『親権とは「社会的責務」である』についてディスカッションがなされました。

 こちらは、

・そもそも現行の国は「我が国における婚姻制度の意義」というが、表層だけで中身のない、深く考えてのことでない制度として立法しただけであり、今更ながらその「意義」について議論している段階なのではないか。

・「適時適切」というが、その辺りも明確ではなく、定義をしっかしと見極めていくべき。

・「親権=社会的責務」だからといって、非親権者の子に対する社会的責務が殆ど無くなるわけではないと考えるが、責務だけ残るというのもおかしく、その辺りも、むしろ国に対して説明を求めていくべき。

 などの意見が出され、各パネラーの間でまとめて頂きました。

 二つ目のテーマは、『面会交流は憲法上保障されるものではない』『離婚後共同親権にしたとしても、監護者をめぐる争いは残る』ついてディスカッションがなされました。

 こちらは、離婚後における、面会交流を含む監護の在り方について、まとめて議論がなされ、面会交流権というのも、そもそも権利というよりは調整制度の中に入るような性質のもので、離婚後における全体の監護の在り方について整理していく中で、あるべき形というのを見出していければいいのではとなり、その全体においては、離婚後共同親権に制度が変われば、そもそも親権争いがなくなるというのは大きく、監護争いに発展するという国の主張は、飛躍しすぎではないかということになった。つまり、オールオアナッシングの「ナッシング」とされてしまうからこそ起こる監護争いであり、「オール」でも「ナッシング」でもなくなる制度の中では、むしろ、「相手にも監護を」という、調整原理が働くであろうということで、各パネラーの間でも意見はまとまりました。ただ、ゼロになるということではなく、遠距離など事情によっては、監護争いも起こり得ることも共有されました。

 そして最後に、小嶋先生より総括で、「多様性のある社会に変わっていくべき」と締めて頂き、閉会となりました。

 ご参加頂いた先生方の熱いトークにより、今回も盛会とすることができました。ご参加いただいたすべての皆様に、スタッフ一同より改めてお礼申し上げます。誠にありがとうございました。


※本件報告勉強会の動画(当日録画分)の配信を希望される場合は、以下メールアドレスまでご連絡願います。

E-mail:kazokunokizunawomamoru@gmail.com


※説明会で使用されたスライドは以下になります。↓