科研費・基盤研究(S)課題(代表:朴進午)「令和6年能登半島地震(M7.6)で津波を引き起こした海底活断層の実態解明」(2025年度~2029年度)が始まりました。
学生・ポスドク研究者の皆様へ
●当研究室では、学内・学外を問わず大学院生・ポスドク研究者との共同研究を歓迎します。当研究室を志望する学生さんは、理学系研究科地球惑星科学専攻に進学する必要があります。
●海溝型巨大地震・津波発生メカニズムを規定する地殻構造と物性を解明するため、私たちはマルチチャンネル反射法地震探査データと深海掘削データ(ODP, IODP)を用いた高精度地殻構造イメージングと流体挙動推定の研究を行っています。
●研究対象域として、約100~150年間隔で巨大地震と津波が発生し、今後、東海・東南海・南海の連動型巨大地震(M9クラス)の発生が懸念されている西南日本の南海トラフに注目しています。私たちの研究は、今後の海溝型巨大地震・津波発生の予測や防災に資するものです。
熊野沖巨大地震断層の3次元詳細構造とP波速度構造(Park et al., Geology, 2010)
紀伊半島の熊野沖南海トラフで取得した3次元マルチチャンネル反射法地震探査(Multi-Channel Seismic reflection:以下、MCS)データを用い、巨大地震断層の3次元地殻構造イメージングに成功した。また、3次元重合前深度マイグレーション処理(3D Prestack Depth Migration:以下、3D PSDM))の結果、巨大地震断層付近のP波速度構造が得られ、変形フロントから外縁隆起帯までの付加体内部において最大層厚約2 km、幅約15 km、長さ約120 kmに及ぶ低速度層を発見した。低速度層は高間隙水圧の状態を示唆し、付加体の剛性率を低下させ、巨大地震発生時に津波の発生を促進することが考えられる。また、流体に富む低速度層がより深部の巨大分岐断層に流体を供給する場合、巨大分岐断層の固着すべりに影響を与える流体の供給源としての役割も考えられる。巨大分岐断層付近の3次元詳細構造や流体の供給源を明らかにしたことは本研究が初めてのことであり、今後の巨大地震・津波発生メカニズムを解明する上で、重要な進展となる。