全天空写真からの光環境計測 (とくに森林の林床における光環境)
解析ソフトウェア ; Winphoto 5.0 を使用。提供元, Dr.Hans ter Steege, Univ. Utrecht (提供元へ)
調査携行道具(Utility)
・ (魚眼レンズの取り付け可能な)デジタルカメラ ; Nikon,coolpix
・ 魚眼レンズ ; Nikon,フィッシュアイコンバータFC-E8
・ 三脚 ; 撮影は短時間に複数点をやる(はず)なので、なるべく軽いものを。
・ 水平器 ; カメラが真上を向いているかを確かめるため、水平器の固定をひと工夫する。 ベストは水平器を端に取付けた円盤(CD使用)を、カメラと三脚の間に据え付けるのがベスト
・ 方位磁針 ; 南北を確かめるため。フィールドコンパスを用い、三脚-コンパス-水平器(CD)が一体の状態に。
・ (ハンディスイッチ ; 斜面,高い/低い位置での撮影など、直接シャッターボタンを押せないときの遠隔操作用)
全天空写真の撮影
ベストは曇天。なるべく直射日光のないように(絞りを調節することでなんとか撮れるが、望ましくはない)。
林床の光環境を撮る場合は、なるべく林床近くにカメラがセットできると良い。ただし、写真に人が写り込まないように。 魚眼レンズを用いるので、撮影時にレンズより垂直下方向に自分がいるようにしゃがむ。(ハンディスイッチを用いても)
方位磁針でカメラ上下面を南北方向に合わせた後、水平を合わせる。(解析の都合上、カメラ下部が南を向くのがいいが、斜面に合わせて変更可能)
カメラは、魚眼レンズ仕様の設定にする(ズームができなくなる)。撮影モードはマニュアルで、シャッタースピードの変更用モード(S)にする。
シャッタースピードを調整する。天気・時間で変わるが、 ほとんど白黒に近くして撮ることで、林冠の葉がとぶ(画像から消える)のを防ぎ、後の編集がいらない。晴れていれば1/2000, 1000, 500 くらいか
露出の調整。 これは複数地点で撮るときの、各地点の環境で若干変更。
シャッタースピードを変えて2~3枚撮ると良い(らしい)。 撮影写真からは地点の判別が容易ではないので、撮影時に対応を取っておく。
データセットを作成
解析用のデータ(生データはバックアップしておく)を、解析ソフト上での作業をスムースにするため、画像をダウンサイズ(1000×750 pixel に)。
画面に向かって上が“真北”となるよう調整 (撮影時にこの操作が必用な方角で撮影していた場合)
<画像の処理 ; フリーソフトGIMPを使用>
画像の白黒化(二値化)を行い、画像をチェック → もしも修正必要な場合(地面や幹が白になっている場合、林冠の葉がとぶ場合)、元データを編集し、もう一度白黒化する。
・ ペン > エアーブラシ > settings ; Galaxy(AP), scale;0.6, 割合;25, 圧力;90
・ 二値化の方法 ; 画像 > モード > インデックス > 白黒パレット で二値化(閾値は自動設定)
(応用) 色 > しきい値 で白黒の閾値設定を自分で行う。ただし、作成画像はグレースケールなので、保存時に画像モードを二値化へ変更(←そうしないと解析時にWINPHOTO上で開けない)
保存時に白黒のまま、解像度変更なし(100%)のまま、JPG形式のまま、で保存
⇒(二値化)⇒ (サンプル写真@秩父実生育成試験区。ここは南側斜面の林冠が開けており、林床の光条件が非常に良い。 撮影は曇天、かつもっとシャッタースピードを速いほうが望ましい。)
<解析データ形式に変換 ; フリーソフトIrfan Viewを使用(もしくは他のファイル形式変換ソフト)>
一括変換を用い、全データ(JPG形式)をWinphotoの解析データ(PCX形式)へ変換する。
※ 変換したファイルが新規作成されるように設定しておく
データ分析
PC上でWinphotoの起動と初期設定
・ 調査地情報を入力 ; Option > LocationOption > Latitude, Longitude, Altitude の入力(過去に作ったデータがあれば .INF 形式で保存でき、それを再利用できる)
・ かつ、散乱光も計算するようにチェック
・ 年間PPFD計算のため "Number of Days" > 365days にチェック
データの読み込み
・ 作成した PCX 形式ファイルを読み込む
・ 解析ツールの(XYR)アイコンから、解析範囲を入力してセット (1度入力したらあとは自動で入っているので、最初だけ調べておく)
<開空度の計算>
解析範囲がセットされたら、(雲)アイコンをクリック → 自動で開空度が計算される。
全て解析終了後、データファイルを全て閉じる。このときセーブを聞かれるがどちらでもいい。
ソフトの終了後、『WINPHOTO.LOG』 のテキストファイルがワーキングディレクトリに作成される。
このテキストファイルに解析した順番に開空度が記録されている。これをコピーして使う。
<年間PPFDの計算 と 分析>
解析範囲がセットされたら、(太陽)アイコンで、計算を走らせる。一年分の計算をしてくれる。 ← calculate RRFD
※ ここで、太陽の軌跡を架空の天空上に描き、白・黒のピクセル情報から計算する。参考図は下のよう。日本の中部山岳域。冬至から夏至にかけて幾通りかの太陽の軌跡をプロット。太陽高度の変化が見れる。
(Winphoto のソフト上での解析例.写真は上記のサンプルを用いている)
計算後、(赤・黒点グラフ)アイコンで年間PPFDを表示させる ← show graph with total PPFD
表示後、閉じると、保存を聞かれるので "yes" を選択
任意の場所に [ファイル名.txt] 形式で 1地点の 1年分のデータを保存
→ 以降、上記の作業の繰り返し
保存したテキストデータを表計算ソフトで開く
出力ファイルは5列。左より、1/1からの積算日,全天条件の直達光,散乱光,撮影地点の直達光,散乱光。
光環境を示す相対照度の指標はrelativePPFD (rPPFD)。これは
(撮影地点の直達光+散乱光合計) ÷ (全天条件の直達光+散乱光合計)
を割合(%)表示したもの。表計算ソフト上で容易に計算可能。
(できれば、この作業を Excel マクロ を用いて自動化して一度にやるとラク)
by. 石塚航 Ishizuka Wataru