GPSを活用したフィールド調査
フィールドに出ての調査では、位置情報の取得が肝心なのは言わずもがな。
地図上での位置確認、隣のサンプリング地点との距離、目的地の距離・方角、、、その場で見たいことは何かとあります。調査から帰ってきた後でも、調査地図の作成、同じ場所の再訪、それから、環境情報を取得して環境などとの解析をする(例えばGISを使用するとか)ためには、やっぱり正確な位置情報が必要となるわけです。
個人研究レベル、かつ、調査片手間でできる手軽な位置情報取得についてのメモです。
調査携行道具(Utility)
スマートフォン & アプリを利用 (以下、2015年現在の設定)
スマートフォン(docomo, MEDIAS・・・古いですが)
アプリケーション
位置情報収集
スマートフォン側でGPSをオン。
(電池を気にする時は“機内モード”で通信回線を切る。ただし、ウェブを利用した地図ダウンロードができないので、あらかじめアプリ内に表示したい場所の地図をストリーミングさせておく必要がある。)
「GPS Status」を起動し、しばらくその場で静止し、測定精度確認。天球上の衛星を捕捉できれば、衛星の数が増えるにつれて測定精度が上がっていくのがわかります。
※ 5m精度以下の表示はないので、そこまで捕捉できればよしとして次へ(森の中では、林冠が遮蔽物となり精度が悪いので、天空の開けたところで行うとよい)。
● ルートの記録の場合
「山旅ロガー」を起動、測定間隔を決めた後、測定を開始する。最初、十分な位置情報が得られるまで測定は始まらない。位置が落ちれば継続的にトラックを記録し続けてくれる。目的とするトラックを移動し終えたら、再度「山旅ロガー」を起動し、測定を終了させる。アプリが自動で外れ点(測定エラー)を除いてくれ、データの整形をしてくれる。トラックは後で編集も可能。
● 地点の記録の場合
「GPSメモ」と「Spot Marker」どちらかを利用する。 もしくは、「地図ロイド」(3.表示 に記述)のブックマーク機能を利用する(ブックマーク機能も実は手軽!)。
両アプリの比較
○ 「GPSメモ」 メリット;測定精度表示&出力ができる(★重要), タイトル挿入・測定・地点登録が一作業で完了するので簡便
デメリット;地図が別表示(メニュー内の▽マークで地図とリンク), 測定に時間がかかったあげく精度が悪い(誤差>100m)ことがある【※GPSstatusアプリの同時起動で少しは改善する(気がする)が、とにかく時間がかかることは確か】, データをグループ分けして保存できない【※ただし、#タグによるグループ化→グループ表示をすることは可能。#タグはタイトルに入れる必要がある(ex. "s1 #Biw", "s2 #Biw"...)】
○ 「Spot Marker」 メリット;マップ上での作業が可能, 現在地測定が速く、よく続く(ただし途中振れる), プロジェクト別でファイルをまとめられる【※「表示」>「保存済み地図一覧」で切り替え】, 登録地点をタップで編集できる(位置の細かい修正がかけられる),編集状態,閲覧状態(編集不可能)に分けられて安全
デメリット;測定精度が出ない, 地点登録/タイトル挿入が別作業で手間, 「現在地登録」を実行すると、登録後に位置情報が振れて地図が飛ぶ(GPSがOFFになるの?), 電池食い
結局のところ一長一短あります。
表示
「SpotMarker」のアプリ画面
ウェイポイントの表示場合はアプリ上で行います。試料サンプリングなど、前の登録地点を考慮する場合などは「Spot Marker」が楽ですね。ただ、電池を食うので長時間は使えません。
→(拡大)→ →(拡大)→ 「GPSメモ」のアプリ画面
測定画面と地図表示画面が別々なのでラクです(使い道にもよりますが)。
→(拡大)→ (左端)この画面で、タイトル挿入+GPS測定アイコンタップ、これだけで作業はおしまい
(左2枚目)アプリの地図表示画面にしたところ。▼アイコンが記録された地点を示す。海岸の調査地点。
(左3枚目)山の調査地点。GoogleMapで見ているので、拡大・縮小、移動の操作はスムーズだった。この登録地点をさらに拡大したのが右端図。沢沿いにサンプリングポイントが並ぶ。
● トラックの表示の場合
「山旅ロガー」のアプリ画面内に出る「地図ロイド」アイコンをタップ → 「地図ロイド」が開き、現在地を終点としたトラックが、ウェブからストリーミングしたマップにオーバーレイされる(機内モード中の場合、あらかじめストリーミングしておかないとマップは表示されない)。 複数地図と切り替えることが可能(地形図もあるのはさすが)。
さらに、表示画面中で以下の作業が可能です
○ 距離測定: マップ左上のコンパスマークをタップ → 地図上の任意の2地点間の直線距離を測定できるようになる。 歩行速度を決めておけば、何分かかるか所要時間を知ることも可能。
○ 現在地追尾: マップ左上の青マークをタップ → 現在地を自動的に追いかけ、歩いたコースをたどる。(マップのドラッグで現在地表示から外れてしまった場合に有効)
○ ブックマーク: つまりウェイポイント表示と同じ機能をもつ。 地図表示画面からメニュー表示 → ブックマーク → 「この位置をブックマーク」を選択で地点を記録できる。「山旅ロガー」にて現在地追尾をさせ、正確に現在地にアイコンが落ちている状態でこの機能を利用すれば、ウェイポイント記録ができる、という使い方。記録時にタイトル入力画面へ移るので、登録作業に時間と手間はかからない。タイトルに何も入力しない場合、登録時の日時刻(Mon Day h min sec)が自動的に付与される。 ※逆に、タイトルを入力した場合には、日時刻は入らない(出力データにも出てこない)ので注意!
ポイント記録後はブックマーク画面右下に現れるアイコンをタップするとエクスポート作業を行うことができる。CSV,GPX形式で出力可能。
「地図ロイド」の画面上では、登録地点と地点名が現れるので、トラック計測時には前地点を参考にしながら歩くことが可能
○ 電子コンパス機能: マップ右下2番目の丸いマークをタップ
○ CSV取り込み: 地点情報付きCSVデータをインポートできる(大きな特徴!)ここに、他アプリで獲得した地点、webで調査した地点をインポートできそう。要確認
○ 地名検索: 地名や施設名などで位置を検索。音声検索もできる。要確認
【※閲覧のために一度ストリーミングした地図をキャッシュとして蓄積し、オフラインでもそれを表示できるのは非常に強力なツールです。キャッシュがいつまで残るかは要確認。】
なお、「山旅ロガー」で記録したトラックを編集することが可能。直接外れ値の削除や、開始・終了点のトリミング、データ平滑化、スリム化をかけることができる。
さらに、連続するトラックは重ねたデータとして合成することも可能。
エクスポート
(データはスマートフォンのSDカード内に保存され、ディレクトリ操作アプリやPCとの接続によって取り出せます)
● 「山旅ロガー」 (SD > cao.kamoland > ylog のディレクトリに保存されているので若干見つけにくい)
トラックごとに、GPXとKMLの2形式で出力できる。KMLはライン、点データがある。
●「GPSメモ」「SpotMarker」
ともにCSV形式で出力される。データはUTF-8形式で書かれているため、エクセルにて作業する際には文字コードに注意(そのままでは文字化けする)。一度、テキストエディタで「S (Shift) JIS」形式に変更する、もしくは、エクセル>「データ」>「外部データの取り込み」>テキストファイル の手順でデータを開くことで解決。
○「GPSメモ」データ ; 列順に 『メモ内容,Lat,Lon,精度(誤差m),測定年月日時間』 がコンマ区切りで出力される。4列目に測定精度があることが重要!
○「SpotMarker」データ ; 7~10列目に『Lat,Lon,メモ内容,捕捉メモの内容』がコンマ区切りで出力される。14列目は『測定年月日時間』となるはずだが、最終点の時間で全て上書きされるので使えない('13年7月時点)。
編集&地図表示 (ここからはフィールドから帰ってきた後の内業)
GoogleMapとの連携で地図を作成します。これはアプリで生成したKMLファイルをインポートすることでできます。
● トラック
マイマップ>編集>KMLインポート → 「山旅ロガー」のエクスポートしたKMLファイルを選択。このとき『~(date)_full.kml』のファイルは、点として出力されているので、 full とついていないファイルを選ぶ(点データを編集したい場合の作業は後述)。
すると、トラックとして地図上に表示されます。線の色、プロジェクト名を編集可能です。
ただし、トラック中のポイントが多い場合、見かけ上、トラックが分割されてしまうのが難点。
(図)登山時のトラックをGoogleMapに表示させたもの。このデータでは、ちょうど折返し地点(山頂)にてデータが分割されていたので、折よく往路と復路を色を変えて表示することができた。さすが「山旅ロガー」だけあって、精度が良い。
●ウェイポイント
マイマップ>編集>KMLインポート → 「GPSメモ」「Spot Marker」でエクスポートしたKMLファイルを選択。
もしくは、あとで編集したCSVファイルをインポートする。
地点ごとに表示マーク、名前を編集することが可能です。
(図)自作の調査野帳替わりの地図。このように複数地点がある場合でも、アイコンを工夫すれば重ねて見ることができます(矢印アイコンはアーカイブしています)。 現地でも、この地図をもとにしてわずか100m内に集まる20地点強を効率良く判別して調査を行うことができた。・・・と言いつつ、地点名の表示(GISでいうラべリング)をマイマップ上から行うことができなかったので、印刷後の地図に1点ずつ書き込んだんでした(><)。この部分はまだ改善する必要がありますね。
その他の位置情報活用
●GPSつき写真・・・SpotMarkerにはアプリ上で写真を撮影&記録&地図との関連づけの機能がある。アプリ上で撮影した写真は通常の保存先と異なるので、データを取り出す際には注意が必要。
MEDIASの場合、保存先は「SD > SpotMarker > picture」ディレクトリ内にある。
(追記)
5m精度のほぼ正確なGPS情報は重宝し、研究データとしても十分な価値があります。ただし、捕捉される衛星との兼ね合いで測定精度は時々刻々と変化することに注意。データ取得の際には、常に測定精度を確認することが大事(その点では精度が表示&出力されるGPSメモは非常に強力なツールです)。
また、アプリケーションは日進月歩です。どんどん欲しい機能が追加されていくので、上述のよりも使い勝手の良いツールは探せばきっとあると思います。