はじめに
ドイツのビザ取得のための手続きについて書いてあるブログ等はインターネット上で調べれば数多く存在する.一方,それらの多くはベルリンやミュンヘン等の大都市での手続きについて書いてあるものが多く,自分が滞在していたテュービンゲンのような小さな町でどのような手続きを行うのか記載された文章はそう多くない.誰が読むのか想像もつかないが,自分自身他の方のブログを参考にしながら必要な書類を集めたので,少しでも参考になれば(少なくともないよりはマシ)と思いここに手続きの流れ等を書き連ねていく.但しこれは2016年6月現在(2017年1月更新)の情報であり,情報の正確さは保証しない.
幸運なことに,2016年3月1日から2017年1月31日までドイツのテュービンゲン大学に訪問研究者として11ヶ月間滞在する機会を得ることになり,日本で予め準備できる書類は揃えてドイツに向かった.
まず日本人(日本国籍を有するもの)は事前の手続きを行うことなくドイツに入国することができ,180日間の間で最大90日間ドイツ国内に滞在することが出来る(ビザ申請の手続きはこの期間中に行わなければならない).ただし,ドイツはシェンゲン圏内なので,入国日も含めて180日前まで遡り,シェンゲン圏内に入国したことがある場合は,その滞在日数を90日から差し引かなければならない.詳細はこちら(外務省).最大で何日間滞在できるかは,こちら(short-stay calculator)で計算することができる.注意すべきことは,トランジットも滞在日数に含むという点である(か?).
具体的に必要な書類はこちら(ドイツ大使館・総領事館)にある通り.自分の場合は以下の通り.
・住民登録証明書
・滞在許可申請書
・パスポート
・写真
・ドイツ滞在期間中に現地で有効な医療保険に加入していることが確認できる書類
・ドイツの受け入れ先の研究機関からの招聘状・日本の学術機関(大学・研究所等)が発行した、滞在費用を保証する証明書
手続きの流れ
(1) 到着~住民登録まで
「長期滞在のご案内」には「入国後1~2週間以内に、滞在地を管轄する住民登録局(Einwohnermeldeamt)に住民登録の届出(Anmeldung)をおこない、住民登録を証明する書類の発給を受けてください。」とあるが,テュービンゲンの場合,日本人は市民局(Bürgeramt)の外国人局(Ausländeramt)で全ての手続きを行う.つまり何か所も移動しなくても全ての手続きを外国人局で行うことができる.ただし受付時間があまり長くない.2016年6月時点(2017年1月更新)での受付時間を記載しておくと,
月・木・金 7:30~12:00 火 7:30~12:00, 14:00~18:00
なので注意.ただしこれはあくまでもテュービンゲンでの話なので,他の地域でどうなっているかは知らない.時間によって混み具合は異なるが,朝早くだと割と人は少ない.ただし10時ごろに行くとかなり混雑している.昨今の事情(主に難民の受け入れ)もあり,テュービンゲンのような小規模の町でも人の出入りは多い.自分の場合,初めの1か月間と残りの10ヶ月間とで住む場所が異なるため,初めの1か月間は住民登録の届出を行わず,2つ目の住居に引っ越してからすぐに行った.地域ごとに厳密さが異なるようであるが,テュービンゲンの場合はこれで特に問題はなかった.
(2) 電子滞在許可証(eAT)申請
住民登録を行ったときに,滞在許可申請書を渡され,その場で必要事項を記載した.滞在許可申請書はこちら(ドイツ大使館・総領事館)からもダウンロードできるが,事前に作成していたものを持っていくのを忘れていた(というよりもeATの申請を同時に行うと思っていなかった)のでその場で必要事項のみを記載し,不足している書類を後日持ってくるように言われた.足りなかったものは以下の通り.
・写真
・ドイツ滞在期間中に現地で有効な医療保険に加入していることが確認できる書類
・ドイツの受け入れ先の研究機関からの招聘状
聞き間違えてなければ,2週間後に自分(担当してくれた方)がいるから,そのときにまた来て必要書類を提出するように言われた.ブログ等を読んで事前に調べた情報では,何かしらの面接(のようなもの)が行われるということが分かっていたので,同じ方が2週間後に面接をしてくれるのだろうと思っていた.
(3) 必要な書類収集~eAT申請終了まで
日本を出発するときに写真を撮っていったが,写真に関しては割と厳密な取り決めがあるらしく,結局現地で写真を撮り直すこととなった.ドイツ人は英語を話せる方が多いので(外国人局の近くに店がある,という事情もあるだろうが),ドイツ語を話せなくてもビクビクする必要は全くない(少なくとも自分はした).
保険はMawistaに加入した.おそらくeAT申請で認められる保険のうち一番安いものだと思う.日本のように保険証が郵送で来るわけではなくメールで届くので,手続きに時間はほとんどかからなかった.
受け入れ先の招聘状については,受け入れ先の教授に作成をお願いした.作成までにさほど時間はかからなかったが,(当たり前だが)早めに作成を依頼しておいた方がよい.
これらの書類を集め,2週間後に再び外国人局に向かった.すると確かに2週間前に担当してくれた方はいらっしゃったが,このときに担当してくれたのは別の方だった.結局前回の指示は何だったのか分からなかったが,あまり突っ込まない方がいいのだろう.必要書類を提出し,その後面接(と思っていたもの)が始まった.新たに聞かれたことは以下の2つ.
・身長
・眼の色
これら2つの情報はeATに記載される.これ以外は住所の確認等を行い,指紋のスキャンを行っただけで(だと思う),面接でも何でもなかった.これで手続きは終了で,4週間くらいで発行できたという旨の通知が来るのでその後また外国人局にくるように言われた.
(4) 最終的にeATを取得するまで
4月22日に手続きを終了して,5月10日くらいにeAT用のPINコードが届いた.しかし全てドイツ語で書かれていて意味が分からず,これが前に言われていた通知だと勝手に思い込んで外国人局に行ったところ違うと言われ,その後しばらく待つことにした.ところが5月30日になっても通知が届かなかったので,確認のために外国人局へと向かった.6月上旬にブルガリア(注:2016年6月現在ブルガリアはシェンゲン協定に加入していない)で行われる研究集会に参加するためにどうしてもeATが必要だった(でないとドイツに再入国できない.そもそも出国できない).すると5月19日付で既に通知を送付したけど届いていないか?と言われ目が点となった.郵便受けに自分の名前がなかったので,配達員が郵便受けに入れていかなかったのだろう,と部屋の貸主さんに言われた.こういったところはかなり杜撰なので,おかしいと思ったら外国人局に聞きに行く方がよい.
ともかくeATを受け取ることができ,その後PINコードの登録等を行うかどうか聞かれるとインターネット上であったのでてっきりそう思い込んでいたが,それもなく終了した. 地域差があるのだろうか?
(5) 出国手続き
出国手続きは驚くほど簡単である.やることはBürgeramtにて何月何日にドイツを出るという旨を伝え,署名するだけである.自分は署名する箇所を間違えたが,特に問題はなかったようである.
あまりに簡単すぎて,eAT取得の際の手続きと釣り合わないと言ったら職員さんに笑われてしまった.他国では思ったことをとりあえず言ってみるのがコミュニケーションを円滑に取るためのコツなのだと,11か月の滞在で分かった気がする.
最後に
必要書類さえちゃんと揃っていれば,テュービンゲンでeATの手続きを行うのはさほど難しいことではない.オーストリアでは2016年から急に長期滞在ビザを取得するのが難しくなったそうだが,2016年6月現在ドイツでは比較的楽に取得できる.またドイツ語が話せなくても,英語さえ話すことができればうまくいくと思う.ただドイツ語が話せる方に一緒に来てもらう方が手続きはより円滑に行うことができるのは間違いない.自分の場合は,部屋の貸主さんにお願いして最初の手続きを手伝っていただいた.テュービンゲン大学には日本学科があるようなので,そちらに相談するのも一つの手かもしれない.ただし謝礼を忘れずに.
注意しておきたいのは,時間厳守だと言われているドイツでさえ日本と比べるとややルーズであるということである(他の国ではどうなんだろうか?想像したくもないが…).手続きは時間にかなりの余裕を持って行った方がよい.