宇宙天気とSDGs

「宇宙天気」研究とSDGs ~ 目標 9, 11, 13との関わり


地球上の生命にとって, そのエネルギーの源を供給してくれる太陽は, なくてはならない存在です。太陽からは, 可視光線の他に, X線や紫外線, 太陽風(プラズマ)も放出されています. 太陽の活動は日々変動しており, 時折発生する大規模な太陽フレアに伴って, 高速太陽風が発生したり, 大量のX線, 紫外線が放出されることがあります. その影響は, 地球近傍の宇宙空間だけでなく, 地球の上層大気(電離圏や熱圏)や, 時には中間圏や成層圏にまで及ぶことが知られています. 例えば, 大規模な太陽フレアによる電離圏変動により, 人工衛星-地上, 人工衛星-航空機・船舶の通信が不能となることもあります. また, 人工衛星に搭載されている電子機器の誤作動や回路の破壊といったトラブルが起きる可能性があるほか, 近年では, 地上のネットワーク機器への影響も指摘されています. 現代社会に必要不可欠な社会基盤(社会インフラ)に影響を与える太陽活動や, 宇宙環境変動等を「宇宙天気」と言い, 「宇宙天気」の理解と予報のための研究が世界的に進められています。

通信に関する強固な社会インフラを構築し, それを維持・運営していくことは, SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」の達成に関わります. また, 「宇宙天気」研究は, 地球温暖化に伴う 上層大気の「寒冷化」を明らかにしました. 上層大気の寒冷化は, 100年で1~5℃程度の気温変化となる地球温暖化よりも激しい変化となり, 熱圏で100年で数10℃以上の気温減少になることが予測されています. 「宇宙天気」としての上層大気研究に加え, 地球温暖化の一側面としての上層大気変動を理解することにより, 地球温暖化や気候変動についての理解を深めることにつながります. さらに, 人工衛星や地上の大型レーダー等による地球環境モニタリングは, 気候変動を定量的に理解する上で不可欠のものであり, SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」に対し, 様々な基礎情報をもたらすものと思われます.

「宇宙天気」研究は, 人工衛星の安全な運用にも関係しており, 人類の宇宙利用にとって必要不可欠と考えられます. 様々な宇宙技術の進展に寄与するといった観点から, SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」にも関わっていると言うことが出来ます. また, 「宇宙天気予報」のためには, スーパーコンピュータによる数値シミュレーションが不可欠です. このスーパーコンピューティングのハードウェア, ソフトウェア技術の進展は, 「産業と技術革新の基盤をつくる」上で大きな貢献になるものと思われます.


宇宙とSDGs、宇宙と私たちの生活に関する解説・記事など

NICT:太陽フレアなど宇宙天気による社会への影響を評価

https://www.nict.go.jp/press/2020/10/07-1.html

JAXA

https://www.jaxa.jp/about/iso/sdgs/index_j.html

国際連合広報センター

https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/22782/

宙畑

https://sorabatake.jp/tag/sdgs/