熱圏 (thermosphere)

大気領域は、気温の高度分布に基づいて4つの領域(対流圏、成層圏、中間圏、熱圏)に区分されることが一般的です。それらのうち、大気上端の領域である熱圏(thermosphere)は、約90~300-800 kmの高度範囲を占めます.。ここで、上端高度を300-800 kmと書いているのは、上層大気は、太陽からの紫外線やX線に晒され、またオーロラの影響による加熱が生じるため気温の高度分布が常に大きく変動していて、太陽活動やオーロラ活動によって熱圏上端が変動するためです。太陽紫外線・X線の吸収や、オーロラ降下粒子との衝突のため、上層大気の一部は電離し、イオンや電子が存在する領域が形成されます。これらの電離大気に着目した領域の分類から、中間圏(mesosphere)の一部と熱圏、さらにその上層を電離圏(ionosphere)と呼んでいます。地上から出た電波がこの電離圏で反射され、遠方との電波通信が可能になることから、古くから電離圏は地球物理学(超高層物理学)と電波工学の分野で研究されてきました

近年、国際宇宙ステーション(約 400 km高度)の建設が進められ、多くの人工衛星が飛翔するなど、熱圏・電離圏領域は人類による直接の活動の場となっています。また、電離圏変動が、例えばGPS (Global Positioning System)を用いた航空機や船舶の測位に重大な影響を及ぼすこともあるため、高度な宇宙利用が進むにつれて、遥か上空の世界が我々の生活とも深く関わるようになっています。