03 当麻石灰岩体群

当麻町の石灰岩体群

当麻石灰岩体群(1/5万分の1地質図幅「愛別」および「当麻」より)

当麻町の山奥には,いくつかの石灰岩体が見つかっています.

一番有名なのは,鍾乳洞のある“三丿沢”岩体です(すでに地名が失われているようですが,この沢は昔「三丿沢」と呼ばれていました).

三丿沢岩体では,昔,石灰が掘られていました.石材や肥料として貴重な資源だった時期があったのです.その時に偶然に「鍾乳洞」が発見され,いまの蝦夷蟠龍洞*として観光資源になっています.でも,ここは観光地なので,石灰岩の観察には不向きです.

当麻石灰岩体(02:蟠龍洞入り口とその裏の石灰岩採掘場跡;グーグルアースより)

この地の石灰岩を見たい方は,少し下流の駐車場から,裏側の採掘場跡地に行けば見ることができます.ただし,採掘場跡はほとんど放置状態ですので,ひどく危険です.地質調査などに慣れた人が同行する場合を除いて,近寄らないでください.

なおどうしてもみたい場合には,下の平地の道路上にいくつも落ちていますので,それで我慢するように.

なお,「駅裏ジオロジー」で紹介した「白い銘板」の当麻の大理石は,ここから採掘したようですが,量が少なかったのか探しても見つかりませんでした.

(蛇足:(^^;)

アニメ「櫻子さんの足下には…」の第三話に登場した白骨遺体の発見場所へと続く入り口は,実はここです.ここから奥へと入ってゆくわけですが,残念ながら奥地へと分け入っても“朝日が見える崖”には行き着きません(そもそも地形的に無理がある)のでいかないように.あれは…記憶にある限りでは,このあたりではなく,突哨山から村上山公園へと続く散策路(現在クマ出没中です(^^;)の途中からの比布の田園風景ではないかと….その「朝日の絵」をここに載せて検証したいところですが,許可が得られないでしょうし,そもそも許可がもらえたとして使用料を払えませんので((^^;).

当麻石灰岩体(03:蟠龍洞から椴山付近の地形;グーグルアースより)

上記地質図に載せたように,この付近ではいくつかの石灰岩体が見つかっています.石灰岩といえば化石がよく見つかるので積極的に探しますが,古いものは再結晶していて化石が見つかりにくいのもよくあることです.

椴山付近では,小さな石灰岩体(地質図に示されたような巨大なものではありません)がいくつか見つかっていて,なかには化石が発見されるものもあります.

これらの一部はすでに報告されていて,椴山石灰岩からは約二億五千万年前のフズリナ化石やコノドントが見つかっています.

わたしが見に行ったときには残念なことに,この路頭は完全に破壊し尽くされたようで見つかりませんでした.しかし,ありがたいことに,この路頭の破片と思われる石灰岩の巨礫がいくつか見つかり,なかには化石が入っているものもありました.

椴山サンゴ(ボレアロ=プー original)

ちょっと分かりにくいので「赤丸」で囲んでみました.クモの巣のような模様が見えるかと思います.それが理解できたなら,周りを見渡してください.全体にぎっしりと詰まっている様子がわかるかと思います.いわゆる群体サンゴですね.

たぶん,ワーゲノフィラムと呼ばれる属ではないかと想像しているんですが,正確なところは薄片をつくって模様の形態を調べなくてはなりません.たぶん,これは報告されていないはずです.まったく残念なことに現状では,研究を進行させる環境にありませんし(切ったり,削ったり,磨いたりする),研究を頼める相手もいません(もうサンゴ化石研究者なんて絶滅種かも(^^;).

目下のところ,我が手元で保留中.わたしが死ぬまでに,だれか助けてくれればいいんですけどね.

椴山紡錘虫(ボレアロ=プー original)

別な岩片からは,紡錘虫(フズリナ)**らしきものも見つかりました.写真では「赤丸」でかこってあります.なんとなく同心円状の模様が見えると思います.ほかにペレットらしきものも見えますので,ウーリスの可能性がないわけではありません.どちらにしろ,上記“椴山サンゴ”とおなじで,薄片一枚つくれない状況では,どうにもなりません.

さて,そうすると,ここいら辺りにある石灰岩を含んだ地層(「当麻層」と呼ばれています)は「古生代・ペルム紀***」ということになるのでしょうか.どうもそう簡単ではないようです.じつは「当麻層」と呼ばれている泥岩からも微化石が発見されていて,それが「中生代・白亜紀古世****」(約1.1億〜1.3億年前)を示しているというのです.

それはどういうことなのか.この話は,ちょっと難しくなりますので,別にページ(未工事)を設けようと考えています.

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* 蝦夷蟠龍洞:以前は「蝦夷蟠龍洞」もしくは「えぞ蟠龍洞」と呼ばれていたはずですが,最近はこの名称が使われず単に「当麻鍾乳洞」とされる場合が多いようです.「蝦夷」という漢字を読めない人が多いというのは情けないことですし,むかしから使われていた名称が観光業者の都合で変えられてしまったのだとしたら,もっと情けないことです.

** 紡錘虫(フズリナ):古生代後半に生息していた単細胞生物.おもに紡錘形をしてるので紡錘虫と名付けられた.原語のフズリナも「紡錘形の小さなもの」という意味のラテン語.

*** 古生代・ペルム紀:地球上に生命があふれるようになった時代を三分して,古生代,中生代,新生代としています.ペルム紀は古生代を六つにわけたうちの最後の時代.数値年代でいえば299Ma~252Ma(2億9900万年前〜2億5200万年前)と計算されています.

**** 中生代・白亜紀古世:地球上に生命があふれるようになった時代を三分して,古生代,中生代,新生代としています.白亜紀(正確には「白堊紀」ですが,文部省の横やりでこう書かせる)は145Ma~66Ma(1億4500万年前〜6600万年前)と計算されています.白亜紀古世はこの前半部です.