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【巻頭コラム】「こども庁」名称変更に見る岸田「聞く耳」の怪異
今年4月3日、昨年の6月に国会で可決・成立した設置関連法にもとづいて「こども家庭庁」が開設された。
そもそも「こども家庭庁」は、1989年に国連総会で採択され、翌90年に発効した「子どもの権利条約」を日本が批准したことに伴い、国内法を整備(こども基本法の制定など)し、諸施策を推進する政府機関として構想された。しかし採択から5年も過ぎた94年に158番目の批准国となったことが示すとおり、歴代自民党政権は「こどもの権利」増進への意欲に乏しく、とくに安倍晋三政権時代は棚ざらし状態がつづいた。短命に終わった菅義偉政権の後継をめぐる自民党総裁選で、野田聖子が「こども庁」設置推進を表明したことで、改めて争点のひとつとして浮上した経緯がある。岸田文雄、河野洋平は「こども庁」推進を表明したが、安倍の子飼い高市早苗は、「反対」の本音を隠して態度を表明しなかった。
だが岸田は昨年12月、自民党内から突然出てきた「こども家庭庁」への名称変更の要求を受け入れ、これまでの議論を無視して名称変更を閣議決定したのである。
《そもそも、子供と家庭の関係は一様ではない。家庭ではなく施設などで育つ子供もいるし、家庭で虐待される子供や、宗教2世のケースでは「子供」と「家庭」が両立しない。/家庭が楽園である子供も、家庭が地獄である子供も、家庭がない子供もいる》と自らのメルマガで「こどもと家庭の対立と矛盾」を論じたのは、日本会議の論客から反米論者に転じた小林よしのり(2023.04.11 by「小林よしのりライジング」)である。
小林は「こども庁」の名称問題について、《……シンプルに「子供のことを考える」という理念だけを掲げる「こども庁」にすべきというのが第一の理由》であり、《さらには、子供は家庭だけではなく、社会で守り育てるべき存在だという理由があった。/家庭だけで子育てを背負おうとすればするほど、かえって親が追い詰められ、その皺寄せが子供に行ってしまうというケースは、枚挙にいとまがない》からだ、とも言う。
その上で小林は、《名称ひとつにしてもこれだけの慎重な議論があって、「こども庁」の名が採用されていた。(中略)ところがそれまでの経緯を全部すっ飛ばして、いきなり「こども家庭庁」の名称がゴリ押しされ、岸田はそれをあっさり受け入れた。/そのとき共同通信は、岸田政権が「伝統的家族観を重視する自民党内保守派に配慮」して、名称変更の調整に入ったと報じた》と指摘、岸田を批判している。
岸田が就任に際して自画自賛した自らの「聞く耳」は、自己の保身と権力とを支持する勢力の声だけを聞き取り、他の多数の声は馬耳東風と聞き流す。佐々木希一(運営委員)