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【巻頭コラム】強制送還が狙いの入管法改正案

 岸田政権は3月7日、2年前に廃案となった入管難民法改正案(入管法改正)を一部修正した改正案を閣議決定、今通常国会への提出を決めた。出入国在留管理庁(入管庁)のホームページによると、「今回の入管法改正案の基本的な考え方は次の3つ」とし、①保護すべき者を確実に保護②在留が認められない外国人は、速やかに退去③退去までの間も、不必要な収容はせず、収容する場合には適正な処遇を実施する、としている。

 しかし、メディアの報道によると、「難民認定の申請中は送還が一律に停止される規定を見直すなど、廃案となった2年前の旧法案の骨格を維持した。難民支援者らは『「本来保護されるべき人が送還されてしまう』と批判しており、激しい対決法案となる」(朝日新聞)と解説している。

 特に問題視されているのは、難民申請3回目以降の申請者や3年以上の実刑判決を受けた人には送還停止の規定を認めない例外規定を新設。新たに、暴れて送還を妨害した場合などを対象に罰則付きの退去命令制度を創設するなど、難民保護よりも「不法在留者」、「送還忌避者」などの非正規滞在外国人を強制送還できる権限を強化した点だ。

 2021年の国会に提出された旧改正案は名古屋入管に収容中だったスリランカ人女性が同年3月に死亡した問題を受けて成立を断念、衆院解散で廃案となった経緯がある。今回、ウクライナからの避難者らを念頭に、紛争から逃れた人らを難民に準じて保護する「補完的保護対象者」制度の導入や長期収容の解消策として、入管施設の外でも暮らすことができる「監理措置」の導入などを盛り込んでいるが、収容手続きの透明化、適正化にはほど遠く、第三者のチェックも排除している。あくまでも今回の改正案の狙いは難民申請を求めて日本に留まり続ける外国人の強制国外送還にあることは明らかだ。

 そもそも日本の入管行政は内外から「難民鎖国」と称されるほど保護に消極的で、難民を管理の対象としてしか見ていない。その結果、難民認定率は極端に低く、申請者1万5000人に対し、難民認定はたったの44人で認定率は0.3%(19年)。イギリス39%、カナダ51%、アメリカ22%、ドイツ16%との落差は大きい。

 日本も加盟する国連難民条約では「難民」の定義を「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること、また政治的意見を理由に、迫害を受けている者、あるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃げた者」と規定している。しかし日本政府は地域紛争や内戦からの避難者を難民とは認めず、申請者に迫害や身の危険を証明する具体的証拠の提示を求めるなど難民認定に後ろ向きだ。紛争で親類が母国を脱出、カナダや米国を選んだ人は難民認定されるが、日本では難民認定されないという歪んだ現象も起きる。

 政府がいますべきことは難民条約の規定を遵守するとともに、「世界人権宣言」や国際法に合わせて入管法の抜本改正に取り組み、「難民鎖国」と呼ばれる汚点を払拭することではないか。平田芳年(運営委員)