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歴史探偵と歴史を学ぶ

 新年になりました。今年もよろしくお願い申し上げます。干支は寅ですが、十二干支の由来を探ると寅は動物の虎ではなく植物の勢いよく成長する様を表すことばのようです。今年が世界的にも 日本社会的にも問題解決のよい方向に成長する1年であるように期待したいと思います。「市民社会に公共の言論空間づくり」を目標とする当NPOとしては世界と社会の勢いを冷静にウオッチしながらメッセージを発信し続けたいと考えます。会員皆さまのご支援・ご協力をお願い申し上げます。

 私は事情があり自宅療養に努めていますが、入院中に読むことがかなわなかった本を読むことができ、とくに「昭和史の語り部」ともいわれる「歴史探偵」半藤一利氏(2021年1月12日逝去、享年90歳)の昭和史ものを単著・対談書を含め相当多数読んだ。亡くなるまでに約80冊を刊行されたというからまだ一部に過ぎないし、逝去後も新著書の刊行が続いているのでまだ終わる先は読めない。最近著の半藤一利・[解説]保阪正康『日本人の宿題 歴史探偵、平和を謳う』(2022.1.10、NHK出版新書)はNHKラジオ第1「ラジオ深夜便」2005.1.1~2018.8.11放送のインタビュー5本の放送テープから起こしたもの。テープで不足しているところを保阪氏が「解説」を加えて編集部とともに「半藤史観」を後世に伝える役割を担ったというもの)が「歴史探偵」半藤氏の『半藤史観』を保阪氏の「解説」が明解にまとめているのでそれを紹介しながら「歴史を学ぶ」ことにしたいと思います。

 半藤氏が「歴史探偵」を称するようになったヒントは半藤氏が文芸春秋社編集部員として入社、新人見習い期間のころに坂口安吾の原稿取りに坂口宅を訪問した時に歴史の見方を教わったときであると言います。保阪氏は昭和史に関して半藤氏からこの「歴史探偵」を引き継ぎたいと述べます。また半藤氏は「いまの日本の人たち、あんまり歴史を知らない」と嘆じ、「歴史に学ぶ」ではなく「歴史を学ぶ」必要を強調された。保阪氏は「解説 『半藤昭和史を見る(2)』」で半藤史観を「三本の柱と梁から成る『歴史館』」と興味深くまとめられています。その「歴史館」の三本の柱は、①庶民、市民の側に立つ姿勢を崩さない、②わかりやすい表現、文体にこだわる、③実証主義的手法に徹し、史実を守る。この三本を柱にした場合、これらの柱をつなぐ梁があるわけですが、保阪氏の考える梁は以下の3つ。①二度と繰り返してはならない戦争、②心理は細部に宿っている、③「絶対に」という言葉は使わない。歴史観を「歴史館」という建物にたとえて3本の柱・3つの梁から成る、と巧みにまとめた保阪氏の「解説」は感銘する見事さです。「歴史探偵」としての深い理解と二人の長い交流を強く感じます!

 最後に、放送テープを本書に収録した5つの章の表題を紹介して終わります。①勝ったという経験は人間を反省させないし、利口にもしません、②教育によって国というのは立つんです、経済によっては立たない、③大きく変革するときに、人間というものは正体を現すんですよ、④残しておけば、あとの人が、真実に近づくことができます、⑤歴史を自分で学んでいくことを積極的にやってください。

(古川 純/NPO理事長・運営委員)