投稿日: 2019/07/21 4:25:55
参院選に向けてようやく32の一人区で市民・野党連合が成立し、安倍批判勢力の受け皿の体制ができた。自・公勢力の3分の2の壁を突破することが次の政治局面を大きく切り拓く条件である。
3年前の参院選から考えてみると、一人区勝利を実現した市民・野党連合の「3年間の政治」は失敗ではないかと私は思う。なぜなら、参院選では一人区での市民・野党連合、複数区・比例区での野党間競争という複合的な選挙戦になるので、市民勢力・市民連合は一人区での候補の一本化を早く実現するように求めてきた。しかし、現実は既成野党の利害が優先され、候補一本化は遅々として進まなかった。考えてみれば、この期間一人区で当選した国会議員は何をしたのか? 当選を支え支援した市民・野党連合の活動をどのように政治表現してきたのか? せいぜい請われたら、集会での挨拶や講演をする程度であった。
はっきりしていることは、市民・野党連合の大半の当選議員はあっという間に所属政党に復帰し、既成野党政党に回収された。当選議員は所属政党の決定を優先し、その範囲で活動したことは明らかだ。当選した議員が率先して一人区の統一候補擁立のために奮闘したという話は寡聞にして知らない。つまり、この参院選の重要性から判断して、前回参院選での思いを基準にすれば、政治としては失敗であり「失われた3年」であった。
残念ながら、市民連合・市民勢力サイドにとっても、市民連合と政党の境界線がはっきりしていないために、要請活動をするほかに手段はなく、忸怩たる思いが蓄積され続けてきた。結局のところ候補擁立は既成野党の専権事項ということになった。しかし、ここには「野党という政党」と「政党を持たない市民勢力」にとっての現実的利害のズレがあることを改めて掘り起こし、どうすることが主権者市民の期待に沿う道かを明確化する必要がある。
この枠組みを今回も続けるとすれば、市民・野党連合の受け皿機能は既成野党政党の国政選挙に付随した従属物となり、市民の自主的な活動は最終的には既成野党政党に吸収されることになる。前回総選挙では希望分裂、立憲民主党登場という緊急事態の中で、市民勢力は主として立憲民主党支援に回り、総選挙後、各地で立憲民主党との対話と協力を求める活動が展開された(市民ステージ論)。残念ながら十分な成果を生んでいるとは言えない。
私は、今回の参院選では市民・野党連合の支援を受け、少なくとも「無所属」で選挙戦を勝ちぬいた議員はたとえ所属政党があっても、無所属の会派あるいは政党をつくり、市民・野党連合の国会議員集団として、向こう(少なくとも)3年間は活動する体制を作るべきだ、こう提言したい。次の総選挙では恐らく各政党は政権交代を射程にした選挙戦やマニフェスト構想に重点は移行する。つまり、「9条加憲阻止、違憲の安保法制廃案へ」「参院で改憲勢力3分の2を許さないよう、一人区での候補一本化」という、この間の市民・野党連合を生み出した思いは、相対的に後退する。政権交代論が前面に出ること自体は賛成であるが、その闘いは9条明文改憲(自衛隊加憲)を阻止する勢力の安定した存在の上での闘いになるだろう。
戦後憲法体制を持続させるうえでも、参議院の独自の存在意義を市民勢力・市民連合の思いを確保するうえでも、市民・野党連合が生み出す「無所属議員の会派ないし独自の政党」の結成は重要な意味があるのではないかと思う。参院選の成果を立憲連合として国政で表現する無所属議員集団の新たな誕生を期待したい。(運営委員 山田勝)