投稿日: 2019/02/27 11:05:33
1月末、「五輪チケット 春から抽選」というニュースが入ってきた。「あっ そうか。来年東京オリンピック・パラリンピックが開かれるんだ」。その時々の感想だ。私のなかでは、2020年東京五輪は、ほとんどリアリティがない。なぜ……
そして、さらに驚いたことはチケットの価格。一般チケットは今年の春から大会組織委員会の公式サイトで受け付けが始まり、6月中旬以降に結果が発表され、秋以降先着順による販売、来年春には窓口販売も始まる。問題の価格は5種類に分かれ、開閉会式が一番高く1万2000円から30万円。陸上競技や競泳は最高で10万円を超す。陸上競技の100㍍決勝の日は13万円席もある。競技によっては最高で5000円を超えないものもある。それでも「高いなぁ」が実感だろう。
東京五輪については、各競技の予選の話題や、候補選手の話がマスコミを賑わし、竹田恒和JOC会長の刑事訴追の話を聞けば、そこそこ関心を持つが、そこまで。先日、東京五輪への関心度の調査結果を見た。70歳以上が最も関心をもっていて6割。そして年齢が下がるにしたがって関心度が下がり、40歳以下は「関心がある」が50%を下回り、30歳代が最低だ(「関心がない」を上回ってはいる)。私は前回の東京五輪開催時は10代、テレビで何種目か見た記憶はあるがナマでは見ていない。70歳代が関心が高いのは「前回はナマでは見ていない」「実感がなかった」、もう一度見てみたいといったノスタルジアで、関心が高いのだろう(これは大阪万博も同じだと思う)。
思い起こすのは、東京五輪はさまざまな疑惑で始まったこと。今回の竹田会長聴取も、東京五輪開催が決まった2013年9月の直前の裏金疑惑。日本ではウヤムヤに終わったが、フランス当局は問題にしたわけだ。そしてIOC総会の五輪最終プレゼンで、安倍首相の放ったウソ。福島原発事故の汚染水について「アンダーコントロール」と言ってのけたが、今も「アウト・オブ・コントロール」が続いている。「この時期の天候は晴れる日が多く、温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる」とも述べた。新国立競技場の「ザハ案」白紙撤回、旧エンブレムの盗作疑惑……
オリンピック憲章には〈選手間の競争であり、国家間の競争ではない〉〈IOCとOCOG(オリンピック組織委員会)は国ごとの世界ランキングを作成してはならない〉とある。海外ではメダル数を競う発想は薄いようだが、日本は逆。
本来、スポーツはアスリートの闘いで、勝利至上主義でないはず。いかにして勝つかに腐心するのではなく、共により高みに至ることを目指しているのではないか。精神修養や身体訓練、名声や金を得るための手段ではなく、自立性、そしてある種「創造性」「アート」の部分を含んでいる。アンケートで70歳代に関心が高く、若い人に関心が薄れるのは納得がいく。昨年、たびたび発生したスポーツ(団体)の不祥事なども、その悪しき事例ではないか。オリンピックには「個人的な憧れ」があっても、別世界と考え、スポーツに親しんでいる若者が多いと思う。私たちはその若者たちの「創造性」を育んでいくのが本筋ではないか。
それよりも東京五輪、今からでも遅くはないから10月にやればいい。これこそ「レガシー」ではないか。(運営委員 寺島紘)