投稿日: 2018/11/19 9:53:02
安倍政権を背後から支える神社勢力の中で有力な2団体、神社本庁と靖國神社で主導権を巡る角逐が表面化している。
9月中旬、朝日新聞デジタル版が「『神社本庁』事務方トップの田中恒清総長が11日の理事会で総長を辞任する意向を表明したことが同庁関係者の話でわかった」とのニュースを配信した。神社本庁の機関誌『神社新報』などによると、現在、東京地裁で係争中の神社本庁元幹部の懲戒処分について同理事会で理事の一人が和解を提案、それに怒った田中総長が「これ以上、皆さんがたからいろんな意味で暗に批判されるようなことは耐えられません。私は今日で総長を引かせていただきます」と発言、神社本庁もこの辞意発言を認めた(その後、周囲の引き留めで居座り)。
全国7万9000神社を傘下に置く神社本庁の実務を牛耳っているのは田中総長と神道政治連盟の打田文博会長のコンビといわれており、安倍首相との親密な関係をテコに神社勢力内で強権的支配を続けてきた。しかし昨年8月、神社本庁所有の不動産売却を巡って幹部2名が不正取引疑惑を内部告発、この流れが変化する。田中総長サイドは告発した幹部を懲戒免職にし、口封じを図ったが、元幹部は東京地裁に提訴、裁判が進行中。そんな中での辞意表明だ。
田中総長への批判はこればかりではない。昨年12月、富岡八幡宮の女性宮司殺害事件で表面化した女性宮司棚上げと神社本庁離脱、今年1月、全国八幡神社の総本宮・宇佐神宮で神社本庁が任命した天下り宮司罷免を要求する署名運動が勃発、各地で総長子飼い人物の地方宮司任命などに対する反発が広がりを見せている。それ以前にも大国主命を祀る石川県の氣多大社が神社本庁から離脱(最高裁で勝利命令)、神社本庁の伊勢神宮系列に反旗を翻している。
各神社の宮司は伝統的に世襲が通例で、しかも、地方ほどその傾向が強い。神社は地域社会と共に歩んできており、神社本庁の意向で動くわけではない。ところが田中-打田コンビは2016年から全国の神社に「憲法改正一千万人署名簿」を配布、署名活動を号令、人事介入で、意に沿わない宮司の解任を頻繁に行ってきた。こうした強権的運営が綻びをきたし、批判と反発を生んでいる。
もう一つ、靖國神社宮司の「皇室批判」と退任。すでに朝日、毎日など大手紙で報道されているので詳細は省くが、6月20日の靖國神社「教学研究委員会定例会議」で小堀邦夫宮司が「陛下が一生懸命、慰霊の旅をすればするほど靖國神社は遠ざかっていく」「今上陛下は靖國神社を潰そうとしてるんだよ」「新しく皇后になる彼女は神社神道大嫌いだよ。来るか?」などの発言が判明。小堀宮司は宮内庁に謝罪、10月10日に辞職。小堀宮司は賊軍や西郷隆盛合祀を唱えて解任された徳川元宮司の後任として3月に就任したばかり。後任宮司には徳川宮司時代のナンバー2が就任、天皇親拝を巡る神道勢力内の綱引きがその背景にあるのは明らかだ。(運営委員 平田芳年)