投稿日: 2018/06/16 10:42:56
「最近のテレビ番組は面白くない。どのチャンネルを回してもバラエティ。ワイドショーも多い」。そんなことを言う中高年が多いというが、ついに私はBSアンテナを立てた。
2011年の地上デジタル放送への切り替えも、7月のギリギリまでバカな抵抗をしていた私は、そこそこ保守的な人間だ。映画好きだった私はシネマスコープや総天然色映画に抵抗感があって、ある時代までは白黒の映画を好み、1950年代、60年代のヨーロッパ映画が好きだった。そんな人だから、今のテレビ番組のうるささは、若い頃のワクワク感とほど遠いものと感じてしまう。
そんな人間が、BSアンテナを立て、以前と比べればテレビをつけている時間が長くなってきた。BSといえばテレビショッピングと思っていた偏見もはずれ、地上波には少ないドキュメントやトーク番組、スポーツもあるが、旅番組が結構面白い(地上波でも推薦番組はあるが)。もちろん、編集されていることが前提だけれど、そこに出てくる旅人でなく、地元の人たちがいいのだ。
昔、小沢昭一の「小沢昭一的こころ」とか、永六輔の「無名人語録」に惹きつけられた。相次いでお二人が亡くなったときは淋しかったものだが、旅番組ではそれを時々拾ってくれる。ワイドショーが拾う「都会人」の声でない普通に生きてきた人々だ。
先日、ある番組をつけていたら、「親父がラクな仕事をしていると、子どもは後を継ぎたがるものです」と言っていた人がいた。漁師だった。子どもは継いでいない。この人は何と言いたかったのか…。私は「日本の政治家は半分近くが二世、三世。政治は血筋じゃないんです。家業じゃないんです」と言いたかったのだ、と勝手に想像した。
「昔は官僚に忖度されたら、政治家は『私の不徳のいたすところ』といって、やめるという論理があった。でも、今は『犯罪じゃないし』となる。弁明がしらじらしい」と作家の橋本治が言っていた。安倍首相は、もりかけ疑惑で「妻や私が関係あれば首相も国会議員も辞める」と明言していたが、最近になって「関連があったとしても金品の授受はない」と開き直り。麻生財務相は「セクハラという罪はあるんですか」と言い、財務相の不始末に見かけ倒しの反省心で、給料を1年分返納するとし、それは閣僚給の170万円ほど。働かないで暮らす「守銭奴」といったところだ。
前述した漁師は、ラクな仕事をしてきた人ではないだろう。しかし普通に働いて、そんなに困っていない人だ。自分は社会を作ると思っていない。何かが問題だと思っても意見が反映されないから。でもポロッとホンネが出てくる。そんな人たちの声を、日本の民主主義は、すくい上げない。
そして、普通の人は、さほど苦労はしていない。だから大震災など、当事者でないとさっさと忘れてしまう。「恥」を感じない政治家のことも忘れてしまう。でも、そんな政治家を「誰が選んだ」ということもつきつけられていることも知っている。
明治時代にこんな歌があった。「……国は政府の国ならず 君の国為り民の国 国威を四方に敷島の 花咲く春に浮かされな 心して見よ国のさま」(横江鉄石)。
(運営委員 寺嶋紘)