投稿日: 2018/05/16 8:04:53
「われわれは闘うべき異民族ではなく、仲良く生きるべき一つの民族だ。私は板門店の軍事境界線を越えてきた」(金正恩)。想像を超える一連の流れの中で、私が一番印象深く読んだ言葉だ。
4月27日金正恩朝鮮労働党委員長(国務委員長)と文在寅韓国大統領の首脳会談が行われ、「板門店宣言」が公表された。①完全な非核化を通じて核のない朝鮮半島を実現する共同の目標を確認、②今年、終戦を宣言して休戦協定を平和協定に転換し、平和体制を構築するため南北米の3者または南北米中の4者会談の開催を推進、③8月15日を契機に離散家族、親戚の対面を進める、④軍事的緊張と衝突の根源となる一切の敵対行為を全面中止。
この板門店宣言が実行に移されるとこの秋は南北分断国家の終焉と朝鮮半島の民族統一への画期的な時になる。米朝会談の成否にかかわりなく実行に移されるとすれば、この「板門店宣言」は朝鮮半島だけでなく、東アジアの時代転機を象徴する。私は板門店会談を通じて、東アジアに政治ブロックとして朝鮮「南北同盟」が成立したと考える。
北朝鮮の核武装国家化を契機にした核を口実とした米朝の綱渡り外交の危うさが激しくなり、米朝の偶発的核戦争へのリスクの高まりを世界中が憂慮した。今回の南北首脳会談と「板門店宣言」は、とりあえず、南北協議が開催され継続している限りは米朝戦争の発生リスクは極めて低くなる。私は何よりもこの点の評価から出発したい。
そのうえで、大半のメディアでも流布されているように、南北首脳会談は米朝首脳会談への一里塚という(非核化)観点で評価されている。そういう主側面があることは明らかだ。北朝鮮の核廃棄あるいは非核化のメドが明確でない限り米朝会談には応じないとしてきた米国の対応の変化があり、それはトランプ政権がどこまでの許容度で会談に応じたかがいずれはっきりするであろう。新聞報道ではトランプ政権は依然としてリビア方式に固執している。普通に考えれば、核兵器を所有した北朝鮮(共和国国家)が核兵器を廃棄し、朝鮮半島の非核化の実現を短期間で急速に実現するとは考えにくい。在韓米軍の撤退問題にも関連する。米朝首脳会談が注目される所以だ。
朝鮮半島は今も38度線を挟んで南北分断国家として存在し続け、グローバルにはすでに終焉した冷戦体制がこの東アジアの一角だけは残存し構造的に再生産され、いわば塩漬けされたまま今日に至っている。南北分断国家の固定化と北朝鮮核武装国家化とは新時代の米中の対立と共存の枠組みの中で今も再生産されている複合的多層的構造を持っている。私は米朝会談の実現を重視する非核化の視点とともに、南北分断国家の存在を超え、民族統一への方向に両国首脳の意思が合致し、独立した自立的構成要素として南北和解へ踏み出されたことが今回の一連の動きの中では最も重要な点ではないかと思う。
朝鮮半島では民族統一・南北和解への機運は繰り返し噴出してきた歴史を振り返れば、今回もその機運は一時的なものだとの意見もある。しかし、私は、韓国の保守派=分断固定化勢力と闘いながら太陽政策実現を掲げ、「キャンドル革命」を背景に誕生した文在寅大統領と組んで「先軍政治」を超えようとする金正恩政権の意思を強く感じた。朝鮮半島と東アジアで朝鮮「南北同盟」は冷戦体制の解体と平和へのイニシャティブをとったことで特に金正恩体制は後戻りできない道に踏み出したように思う。この道を進めば、核兵器の比重が低くなることが重要だ。
(運営委員 山田勝)