投稿日: 2018/01/18 9:52:16
2018年の新年=戌(いぬ)年が明けました。昨年はアメリカ・トランプ大統領の予測困難・横暴極まる政策決定(というよりも随時のツイッター発信)によって政治も経済も振り回されました。トランプ就任から間もなく1年、トランプ政権の内幕暴露の1月5日新刊“ FIRE and FURY ”
( by Michael Wolff )(『炎と怒り』)は大統領選挙中の「ロシア・ゲイト」疑惑、トランプの知性と大統領資質への疑問など、側近インタビューをもとに大統領職へのダメージを与えています。今後の推移は不透明ですが私たちは情勢をウオッチし多様な言論を発信し続けます。NPOは昨年「認定NPO」(寄付者の税額控除を可とする)を取得し、また季刊『現代の理論』の書店販売を復活しました(同時代社発売)。今年も皆さまの一層のご支援とご協力をお願いいたします。
私がいま最も注目しているのは、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転を差し止めた広島高裁決定(17.12.13、野々上知之裁判長、高裁段階では初めての差し止め判断)である。本訴訟が提起されているので今年9月30日までの仮処分決定であるが、伊方3号機は16年8月に再稼働・17年10月から定期検査・停止中のところ今後の司法審査で決定が覆るまで運転はできない。伊方原発100キロ圏内の広島市民・60キロ圏内の松山市民計4名の住民勝訴決定であり、初の高裁決定であるから日本全国の他の電力会社の類似の運転差し止め訴訟に極めて強い影響があるだろう。
判決の要点は、①申し立て住民に具体的な被害が及ばないことを立証する責任は四国電力にある、②火山の影響による危険性に関して原子力規制委策定の「火山影響評価ガイド」を適用し判断すると、「伊方原発から約130キロ離れ、活動可能性のある火山である熊本・阿蘇カルデラは、現在の火山学の知見では伊方原発の運用期間中に活動可能性が十分に小さいと判断できず、噴火規模を推定することもできない。約9万年前に発生した過去最大の噴火規模を想定すると、四国電力が行った伊方原発周辺の地質調査や火砕流シミュレーションでは、火砕流が伊方原発の敷地に到達した可能性が十分小さいと評価できない。立地は不適で、敷地内に原発を立地することは認められない」、③結論:規制委の伊方原発の新基準適合判断は不合理であり、申し立て住民らの生命・身体に具体的な危険があることが事実上推定されるので差し止め申し立ては立証された(また稼働中なので差し止めの必要性も認められる)。
伊方町は熊本地震で大分~佐田岬半島~松山~徳島~紀伊半島……とその動きが論議された中央構造線の上にある。地図に明らかなように、原発破壊のときに伊方町民の避難ルートは極小であり、瀬戸内海の放射能汚染は決定的になる。そもそも「原発立地は不適」なのである。広島高裁決定は阿蘇カルデラの豊後水道・豊予海峡を越える火砕流の破壊的な影響を重視した。この際はっきり言いたい、火山国・地震列島の日本はどこでも、いったん破壊があると放射能流出・飛散で原状回復不可能な原発は「立地不適」なのであると。福島原発過酷事故以降いまや自明となったこの命題を後回しにして原発再稼働を申請する電力会社は、もはや「原発立地」100キロ圏内地域住民に対する「生命・身体」侵害の具体的危険を故意に行う“犯罪”企業といわざるを得ない。Nuclear powerplantもNuclear weaponも「核エネルギー」利用では共犯である。
(理事長・運営委員 古川純)